報道」カテゴリーアーカイブ

絶滅危惧種ヘラシギ 人工孵化個体の渡来確認2例に

絶滅危惧種ヘラシギのロシアの繁殖地で人工孵化された個体の渡来がカラーフラッグの観察により2例確認され、報道発表しました。これは鳥類標識調査の一環として、山階鳥研に寄せられた観察記録から明らかになったもので、国際的なチームによる保護活動の成果が、日本にも及んできた兆候と考えられます。

プレスリリースはこちらをご覧ください(2016年9月14日)

※ 「フラッグのついたシギ・チドリを見つけたら」はこちらです。
※ 足環で個体識別して野鳥の生態を調査する「鳥類標識調査」については「渡り鳥と足環」をご覧ください。

北海道のノビタキが大陸経由で南下して中国南部やインドシナ半島で越冬することを明らかにしました

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国立研究開発法人森林総合研究所、北海道大学、山階鳥類研究所ほかの国際共同研究チームは、北海道のノビタキが大陸経由で南下して中国南部やインドシナ半島で越冬することを明らかにしました。本日、森林総合研究所、北海道大学、山階鳥研が共同で報道発表を行いました。プレスリリースの資料は下記リンクからご覧ください。

山階鳥類研究所 プレスリリース(2016年8月22日)

また論文の要旨(英文)は下記リンクからご覧ください(論文の本文は有料です)。

Yamaura, Y. et al. 2016. Tracking the Stejneger’s stonechat Saxicola stejnegeri along the East Asian–Australian Flyway from Japan via China to southeast Asia. Journal of Avian Biology: DOI: 10.1111/jav.01054.

ノビタキは日本では北海道と本州の草原に春に渡来して初夏に繁殖する小鳥です。越冬地は中国南部から東南アジア周辺であることが知られていますが、日本産のノビタキがどんなルートで渡りを行い、越冬地のうちどのあたりで越冬するかの詳細は知られていませんでした。

この研究は、ジオロケータ−という、日の出と日の入りを記録することで地球上の位置を推定する、小型軽量の器機を装着しておこなったものです。ジオロケータ−の軽量化による小鳥類への応用はごく最近可能になったもので、体重15gという小型の小鳥の渡り経路を明らかにしたのは、東アジア地域としては初めての事例です。

繁殖期に北海道でジオロケーターを装着されたノビタキは、大陸に移動して中国を経由し、中国南部とインドシナ半島で越冬していました。従来日本の渡り鳥は本州づたいに南下して大陸に渡ると考えられていましたが、本研究により、異なる渡りルートの存在が初めて確かめられました。

日本経済新聞文化面にアート紹介コラム「鳥へのまなざし 十選」を連載中です

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日本経済新聞の朝刊文化面(最終ページ)のアート紹介コラム「十選」は、一人の人が特定のテーマで美術作品を1日1点、合計で10点紹介するものです。

5月20日(金)から自然誌研究室専門員の平岡が、「鳥へのまなざし 十選」というテーマで、この欄の記事を担当しています。

掲載は月火木金、つまり土日と水曜日はお休みで、10回です。

お楽しみいただければ幸いです。

【訂正】5月30日付けの「鳥へのまなざし 十選」第6回「ロジャー・ピーターソン『フィールド・ガイド』シリーズ」の図版「北アメリカ西部のフィールド・ガイド」の出版年が1934年とあるのは、校正ミスで、正しくは1961年です。訂正してお詫びいたします。なお、本文中の、北米東部のフィールド・ガイドの出版年が1934年という点には誤りはありません。

アホウドリの再導入プロジェクトを進めている小笠原の、聟島と嫁島でそれぞれ初めて繁殖が成功しました

聟島のヒナ(2)_山階鳥研提供_ブログ用アホウドリの再導入プロジェクトを進めている小笠原の、聟島で、この1月に孵化が確認されていたヒナの巣立ちがこの5月に確認されました。また嫁島でも巣立ち直前のヒナが観察されました。このことについて、本日、環境省・東京都と同時発表の形で報道発表を行いました。

小笠原諸島では2014年5月に媒島(なこうどじま)でヒナが確認されており、今回の確認で、戦後はアホウドリの繁殖がなかった小笠原諸島での、このプロジェクト開始後のアホウドリの繁殖成功は3例となりました。

プレスリリース(2016年5月23日付け)

このプロジェクトは(公財)山階鳥類研究所が、環境省、東京都、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金等の支援をえて実施しているものです。

※ 聟島でのアホウドリのつがい(ユキとイチロー)の卵の孵化のニュースはこちらをご覧ください。
※ 山階鳥類研究所「アホウドリ復活への展望」(アホウドリ最新ニュース)はこちらです

※ 画像は巣立ちして聟島の海上を泳ぐアホウドリのヒナです(2016年5月14日撮影)

アメリカコアジサシが日本で初めて「鳥類標識調査」で確認されました

アメリカコアジサシ2個体b_webアメリカコアジサシは日本で繁殖するコアジサシに極めてよく似た水鳥で、北アメリカと西インド諸島の砂浜海岸や干潟、内陸の河川で繁殖し、中南米の海岸部で越冬します。

2014年7月に、茂田良光研究員らは茨城県神栖(かみす)市の海岸で、コアジサシの標識調査を実施中、アメリカコアジサシ2羽を捕獲しました。1羽には、2012年7月にアメリカ合衆国ノース・ダコタ州でヒナの時に装着された足環がついていました。

アメリカコアジサシの記録は日本ばかりでなく東アジア全体で初めてで、3月1日に報道発表を行いました。

鳥類標識調査はカスミ網などを使って鳥類を捕獲し、個体識別用の足環を装着して放鳥するもので、鳥類の渡りや寿命などのさまざまな生態を明らかにする目的で実施されており、近年では、鳥類生息状況のモニタリングのためにも活用されています。日本では現在、環境省の委託事業として、山階鳥研が、多くのボランティアの協力を得て実施しています。

本種は近縁のコアジサシに極めてよく似ていることから、野外観察で本種の渡来に気づくことは難しいと考えられ、鳥類標識調査の有効性が示されました。

※ プレスリリースはこちらをご覧ください。
※ 鳥類標識調査については、環境省生物多様性センターのウェブページ「鳥類標識調査」、山階鳥研のウェブページ「渡り鳥と足環」「鳥類標識調査 仕事の実際と近年の成果」をご覧ください。

(写真は神栖市で捕獲されたアメリカコアジサシ。上は、アメリカ合衆国の足環を装着していた個体。下は新たに環境省の足環を装着して放鳥した個体です)

おめでとう!ユキ、イチロー!小笠原群島聟島のアホウドリのつがいにヒナが誕生しました

<写真>アホウドリのヒナ(小笠原諸島(聟島))撮影日:2016年1月9日 撮影:山階鳥類研究所(提供:東京都)

<写真>アホウドリのヒナ(小笠原諸島(聟島))撮影日:2016年1月9日 撮影:山階鳥類研究所(提供:東京都)

小笠原群島聟島(むこじま)におけるアホウドリ新繁殖地形成事業において、2008年に聟島を巣立った人工飼育個体と野生個体のつがいの間で産卵・孵化に成功してヒナが初確認され、本日環境省、東京都と同時で報道発表を行いました。

<写真>アホウドリのヒナをクローズアップ(小笠原諸島(聟島))撮影日:2016年1月9日 撮影:山階鳥類研究所(提供:東京都)

<写真>アホウドリのヒナをクローズアップ(小笠原諸島(聟島))撮影日:2016年1月9日 撮影:山階鳥類研究所(提供:東京都)

プレスリリース(2016年1月15日付)

このつがいは2008(平成20)年に巣立った個体(カラーリング番号赤色Y01、8歳、雄)いわゆる「イチローくん」と、野生個体(足環なし、雌)「ユキちゃん」です※。これまで3シーズン続けて巣作りし産卵が確認されていましたが、孵化するまでにはいたりませんでした。今回4度目の挑戦で初めてのヒナの誕生です。

ついに!やりましたね!おめでとう!!

このプロジェクトは、過去にアホウドリの繁殖地があった小笠原群島にふたたび繁殖地を作ることを目標にして行ってきたものです。山階鳥類研究所などが伊豆諸島鳥島から小笠原群島聟島に移送して人工飼育し巣立ったアホウドリが、繁殖年齢に達して小笠原に戻り、繁殖が成功した事例としては、2014年春に聟島の隣の媒島(なこうどじま)から巣立った1羽がありました。

今回飼育地の聟島でも繁殖が確認されたことで、アホウドリ完全復活という目標にまた一歩近づいたものと関係者一同、喜びもひとしおです。これまでご支援いただいた皆様に感謝申し上げます。引き続きこのプロジェクトにご関心をお寄せいただき、ご支援いただけますようお願いいたします。

※ このつがいはNHK「ダーウィンが来た!」「NHKスペシャル「小笠原の海にはばたけ~アホウドリ移住計画~」」などで、「ユキ」と「イチロー」と呼ばれています。
※ この事業は、(公財)山階鳥類研究所が、環境省、東京都、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金等の支援を得て、新しい繁殖地を形成する目的で、伊豆諸島鳥島のアホウドリのヒナを小笠原群島聟島に移送(2008~2012年)し、その後モニタリングを実施しているものです。

※ 山階鳥類研究所「アホウドリ復活への展望」(アホウドリ最新ニュース)はこちらです

鳥類標識調査のビッグデータから地球温暖化に対する鳥類の応答について検討した結果がまとまり、論文発表しました

oyoshikiri_web鳥類標識調査は、カスミ網などを使って鳥類を捕獲し、個体識別用の足環を装着して放鳥するもので、始まった当初は、鳥類の渡りや寿命などの生態を明らかにすることが主な目的でした。近年、人為的な要因による環境の変動が問題になってきたことにともない、鳥類の生息状況のモニタリングへの活用が世界的に探られています。

日本での鳥類標識調査はすでに戦前から開始されていましたが、山階鳥研では1961年に林野庁によって再開されたときから携わっており、現在は環境省の委託事業として、多くのボランティアの協力を得て実施しています。1961年以降、足環を装着して放鳥した500万羽以上のデータが蓄積されています。

このたび、この鳥類標識調査データなどを分析し、地球温暖化に対する鳥類の応答について検討した結果がまとまり、報道発表しましたのでご案内します。

プレスリリース
東南アジアから日本に渡ってくる夏鳥4種のうち、3種で渡来と繁殖時期が早期化している傾向が見いだされました。
リリースの資料はこちらのリンクから、5月13日の内容をご覧ください。

※ 鳥類標識調査についてはこちらの「渡り鳥と足環」をご覧ください。

昨年11月に産卵された聟島のアホウドリの卵は孵りませんでした

昨年11月9日に小笠原群島聟島でアホウドリの産卵が確認されましたが、孵化予定日の1月12日に山階鳥研の研究員が卵の状態を確認したところ、腐敗していることが判明しましたので、報道発表を行いました。
報道発表資料はこちらです(2014年1月21日)。
昨年11月の産卵についてはこちらをご覧ください。
山階鳥研のウェブページ「アホウドリ 復活への展望」はこちらです。

今年もアホウドリが産卵しました!〜小笠原群島聟島

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● 今年も聟島でアホウドリが産卵しました!
絶滅危惧種アホウドリの小笠原再導入のため、2008年から2012年まで5年間、伊豆諸島鳥島から合計70羽のヒナを移送し、人工飼育によって69羽の巣立ちに成功していた、小笠原群島聟島(むこじま)で、昨年に引き続き、1卵の産卵が確認されました。
産卵が確認されたのは、昨年とおなじ、2008年に巣立った個体(色足環番号Y01、5歳、雄)と野生個体(足環なし)のつがいです。
山階鳥類研究所とNHKが共同で設置している監視カメラの画像を精査したところ、11月9日の映像でこのつがいの巣内に卵が確認されたものです。
報道発表資料はこちらです(2013年12月13日)。

● これまでの成果が、保全生物学の学術雑誌Oryxに掲載されています
アホウドリの小笠原再導入のこれまでの成果を報告した論文です。こちらのリンクで、英文要旨を読むことができます
Deguchi et al. 2013. Translocation and hand-rearing of the short-tailed albatross Phoebastria albatrus: early indicators of success for species conservation and island restoration. Oryx The International Journal of Conservation.
● 「鳥類保護のモデルケースに – アホウドリ回復プロジェクト」もお読みください
このプロジェクトを進めてきた出口智広研究員による解説を、科学技術振興機構のウェブサイト「サイエンス・ポータル」で読むことができます。こちらから、「鳥類保護のモデルケースに – アホウドリ回復プロジェクト」(2013年1月8日)をぜひお読みください。
★    ☆    ★
山階鳥研のウェブページ「アホウドリ 復活への展望」はこちらです。

聟島でアホウドリの人工飼育個体とつがいになって産卵したメスは尖閣諸島生まれである可能性が高いことがわかりました

albatross_nhkすでにメディアで報道されており、ご存じの方も多いと思いますが、聟島で回収されたアホウドリの卵の分析結果についてご報告します。
山階鳥類研究所では、絶滅危惧種アホウドリのいっそう確実な復活のため、伊 豆諸島鳥島のアホウドリのヒナを小笠原諸島聟島に移送し、新しい繁殖地を形成 する事業に取り組んでおります。
人工飼育により巣立った個体(オス)と野生個体 (メス)との間に 2012 年 11 月 14 日に初めて産卵があったことや、抱卵されていた卵の発生が進んでいなかったことはすでにご報告していますが、その卵を回収して採取したミトコンドリアDNAを分析した結果、卵を産んだメスが尖閣諸島で生まれた個体の可能性が高いことが示唆されました。
報道発表資料はこちらです(9月12日)
この研究は、北海道大学理学部の泉洋江氏、同大学総合博物館の江田真毅氏との共同研究として、2013年9月14日に日本鳥学会2013年度大会で発表しました。この事業は、環境省、東京都、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金ほかの支援をえて山階鳥研が実施しています。
※画像は手前がオス親(Y01)、奥がメス親。オス親の足もとにあるのが1月に回収して今回分析結果が出た初産卵の卵です。
山階鳥類研究所のアホウドリのウェブページ「アホウドリ 復活への展望」はこちらをご覧ください。