2018年 新年のご挨拶

2018年1月1日掲載

奥野卓司写真山階鳥類研究所賛助会員の皆様、ご支援いただいている皆様、新年おめでとうございます。旧年中も当研究所をお支えいただき、本当にありがとうございました。

昨年の4月に林良博前所長から当研究所の所長を受け継ぎ、手探りのうちに、年を越しました。

秋篠宮文仁親王殿下を総裁にいただき、前身の山階家鳥類標本館から八六年の歴史をもつ、日本を代表する鳥類専門研究機関である本研究所を継承し、少しでも発展させるため、この間、壬生基博(みぶもとひろ)理事長とともに、私なりに努力してまいりましたが、歴代の所長のお力にははるかに及ばず、忸怩たるものがございます。

昨年、平岡広報コミュニケーションディレクター、鶴見コレクションディレクターを新たなポジションとしておき、山崎自然誌研究室長、出口保全研究室長を迎え、二室が今後相互に連携して研究、保全活動を行えるように、大きな組織改変を行いました。また副所長の尾崎清明が日本鳥学会会長に就任するなど、日本の鳥類学にとって本研究所に期待されているものがさらに大きくなっていると自覚しています。

この一年間にも、所員、職員の努力によって、数々の研究成果を上げることができました。アホウドリの新繁殖地形成事業を行っている小笠原諸島の聟島(むこじま)を巣立った人工飼育個体と野生個体のつがいの間で産卵・孵化が成功し、人工飼育したアホウドリから生まれた子の世代が小笠原に戻ったことが初めて確認されました。

また、我孫子市鳥の博物館との共催で、酉年にちなんで『鳥・酉・鶏・とり展』を開催し、多くの方々にご覧いただき、各SNSで好評を投稿していただけました。ここでも、これまでの生物学中心の研究展開から、人間と鳥との関係の歴史的変遷、鳥の文化誌研究にウイングを広げ、総合的な「とり学」をめざそうとする方向は示すことができたと思います。

これらは、文部科学省からの科学研究費補助金(特定奨励費)や、環境省などからの受託事業費によって進められてきており、両省から高い評価をいただくとともに、国際的な研究機関、大学、動物園、博物館などとの研究交流を更に進めて、社会への知的貢献、環境保護での存在感を示すように期待されています。

しかしながら、研究所の施設・設備の老朽化への対応、標本・歴史的資料の保存、また保護活動の展開には、皆さまからの寄付や会費を願う以外にありません。どうか今年も、旧年にましていっそうの物心両面でのご支援を切にお願い申し上げます。

本年の皆様方のご健康、ご多幸を心からお祈りしております。

山階鳥類研究所 所長 奥野卓司

(山階鳥研NEWS 2018年1月号より)

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