2020年10月1日更新
日本最初の野鳥生態写真家
ー下村兼史生誕115周年ー
100年前にカワセミを撮った男・写真展
2018年9月21-26日 有楽町朝日ギャラリーで開催しました。
1,657名の皆様にご来場いただきました。多数のご来場たいへんありがとうございました。
カメラそのものが珍しかった100年も昔に
自由に飛び回る野鳥を日本で初めて撮影し
今では失われてしまった自然環境をも記録して
生涯、自然の中で写真と映像を撮り続けた男
下村兼史(1903-1967)
カメラセンスはもとより、著述、イラスト、音楽の才に恵まれた
野鳥生態写真の先駆者下村兼史の作品と生きざまを
山階鳥類研究所所蔵の世界で唯一の下村資料を中心に
多角的に展示紹介する日本で初の企画です。
概要
- 【タイトル】ー下村兼史生誕115周年ー 100年前にカワセミを撮った男・写真展
- 【会期】
2018年9月21日(金)〜26日(水)11-19時(最終日16時まで) 終了しました
- 【会場】有楽町朝日ギャラリー(東京 JR有楽町駅前マリオン11F)
- 【入場料】無料
- 【主催】公益財団法人山階鳥類研究所
山階鳥類研究所所蔵の下村兼史写真資料を主とした日本初の総括的な写真展です。オリジナルのモノクロプリントで自然に息づく野鳥たちを撮った兼史特有の写真表現を紹介する一方、兼史の時代にはなかったデジタル技術により実現した大判プリントもご覧いただけます。また、兼史の生涯や業績がパネルにより展示紹介されます。
ルリカケス
1935年4月 奄美大島
山階鳥研所蔵 ID no. AVSK_NM_0033
開催趣旨
下村兼史(1903〜1967)は、日本における野鳥を主とした生物の写真の先駆者であり、日本最初の野鳥生態写真家と呼べる人物です。彼は、北は北千島から南は奄美大島、小笠原諸島を歴訪し、自然にあるがままの野生生物をレンズで記録することで野外鳥類学の研究発展に貢献し、日本の野鳥生態写真史の黎明期に多くの同輩、後進に影響を与えました。さらに、写真集の出版、鳥類図鑑や紀行エッセーの執筆、数々の受賞歴をほこる自然科学ドキュメンタリー映画の製作を通じて、野鳥や自然への関心を一般に広めました。
下村兼史の作品群は、記録する者の少なかった1920年代、30年代の里山、離島、原野など今日では変貌がいちじるしい自然環境や、そこに生息する野生生物を視覚的な記録に残しており、この半世紀ほど日本の自然環境が激変している中にあって、私たちに多くのものを語りかけてくれる、きわめて高い現代的意義を持つものと信じます。
さらに、劣悪な撮影条件のもとで扱いづらい機材を使って生み出された下村兼史の生態写真の数々は、時に詩情にあふれ、時に科学者の目を感じさせます。それらを目の当たりにすることは、利便性にすぐれた機材が選択に困るほどにあふれる現代にあって、写真表現とは何なのかをもういちど原点に立ち戻って考えさせてくれるきっかけになることでしょう。
山階鳥類研究所は、鳥類の標本約7万点、鳥類学を主とする文献約4万冊と共に、日本の野鳥生態写真の先駆者下村兼史の野鳥を主とした1万点を超える生態写真資料などを所蔵しています。戦禍や震災をまぬがれて散逸もせずに、下村兼史が撮影した生涯のほとんどの写真資料が残されたことは、奇跡に近いことです。
近年、日本写真芸術学会や日本写真学会では、銀塩とデジタルのそれぞれに特徴を活かした写真表現や、作品をプリントにして残す意義と重要性が議論されています。こうした今日的な課題の一端として、下村兼史の古典的なモノクロ銀塩写真を再検証、評価してそれを写真展という形で可視化することは、意義深いことであると考えます。
当公益財団の公益事業の一環として下村兼史の写真資料を一般に公開し、幅広く皆さまに鑑賞していただくとともに、温故知新による鳥類生態写真のさらなるレベルアップと今後の鳥類の保護研究の促進に一石を投じるべく、下村兼史の写真展を企画いたしました。
この写真展で展示される資料のうち、山階鳥類研究所が所蔵するものについての整理保存作業は、文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)を受け実施されました。