ナベコウ






 今日でも日本での記録が少ない鶴に似た大型のコウノトリの仲間、ナベコウ。黒と白のツートーンに、紅赤色の嘴と脚が鮮やか。フィールドでは目立つ鳥のように思われるが、野鳥を見る人も稀な下村時代にはその記録が極々限られていたのではないか。下村は、鹿児島県荒崎の鶴の渡来地で1927年に1羽を発見して以来、何度か撮影の機会を得た。


 孤独な鳥で鶴の群れに入ることもなく、また鶴よりも警戒心が強くてシャッターの音にもすぐに飛び立ってしまう用心深さ。ブラインドの中で鶴やヘラサギを待っている時にナベコウに会うと、“写さないわけにはいかない気持ち”でその都度シャッターを切った(「鳥類生態写真集」第1輯 Pl.11-12より)。思えば贅沢な話である。


 今日の大規模な圃場整備が行われた“人工的”な荒崎の田んぼ景観とは違って、往時のより自然な湿地環境がナベコウと共に写されている。今日では想像もつかない荒崎の姿が見て取れる。





AVSK_DM_0039(階調を反転)
劣化の進んだ乾板



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