本紙2002年4月1日号に、所長就任のご挨拶と決意を述べてから、早や2年が経過しようとしている。その中で、21世紀の山階鳥類研究所が「どの方向へ」「どのように」歩んでいくべきかは、内部で十分話し合った上で、外部評価も参考にして早急に方針を出したい、と私は書いた。そして、大学や国立の研究機関にない特質、すなわち6万9千点の標本、42年間にわたる420種360万羽の標識データ、3万7千点の鳥類関係図書を生かすことが、基本方針を出す際の「重要な鍵」になるだろうと書き添えておいた。以降、秋篠宮総裁にもご出席いただいて毎月1回ずつの所員会議と室長会議で十分検討し、昨年2月の外部評価委員会(座長=川那部浩哉・琵琶湖博物館館長)でのご意見も反映させていただいた結論を、遅ればせながらここにまとめておきたい。
昨年は、日本産最後のトキの1羽、キンが死んだ。これでまた、わが国の絶滅種リストに1種が加えられた。こうした状況の中で、希少鳥類保全のために本研究所が果たさなくてはならない社会的責務は大きい。ここしばらくの間は、総力を挙げて「希少鳥類の生存と回復に関する研究」に取り組んでいきたい。そのために、文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)が得られるよう、最大の努力を払う必要があろう。
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具体的には「標本整理」「標識データのデーベース化と個体数動向の将来の予測」「遺伝子ライブラリーの立ち上げ」「希少鳥類の基礎的生態の解明」などの問題に取り組んでいくのが良かろう。鳥ウイルスの問題は、今や大きな社会不安をもたらしている。ウイルス学の研究者との共同研究も望まれるところである。この分野だけに限らず、外部の研究者と積極的に共同研究を進めることが好ましいだろう。そのために客員研究員制度を確立し、現在9名の方々がこれに就任されている。
また、先のご挨拶の中で私は「開かれた研究所にする」ことを目標のひとつに掲げた。客員研究員制度の新設や山階鳥類学雑誌の改革もこの中に入るが、ホームページを開設し、外から研究所が見えやすくしてきた。ホームページへのアクセス数は開設以来9万件に達し、その目的の一旦は果たされ始めているような気がする。最後に、所員の研究能力の向上は、何をおいても果たさねばならない課題である。所員の学位の取得と研修時間の確保に何とか心を砕いていきたいと考えているところである。 |