原文
拝啓時下春暖之候に御座●●
●貴殿益々●健壮之?敬
賀の至りに奉存候其後を
意外の御無沙汰に打過ぎ
候段平に御免被下度候
掴て先般南洋出発の際を
種々御厚意に領り難有
奉深謝候尚小笠原島
にて三月四日出御書面難
有●続仕候今回の事業を
都合上本意を果さずして
米領グワーム島迄も巡航
仕候得共事業至さずして
一時小笠原に歸航と云う事に
●成二月二十七日グワーム島出
航三月十九日小笠原港着仕●
是より他方面に向ふ豫定
をりしも見込立兼ね私を定
期船にて八丈を經横浜港に
着少時滞在漸く四五月
前歸宅仕候何を土産をと
心掛け候得共目的地の上
陸致さず只無人島を見物
致したる次第にて実に残念の
至り●御座候見掛けたる

鳥類●
バカトリ（本名不明）　　　目方一貫五六友月位ニテ雁ニ似テ
捕ルニ易意故バカトリト云ヒシナラン
オサトリ　　　中カモメ位　ハラ白ク　セ黒シ
ボーシン　　　赤白　前年大谷村ヨリ買ヒマシタ
亜科ボーシンハ沢山白イスクナシ
白ピン　　　アイサシニ似テ真白ナリ
アナトリ　　　コレハ見カケマセンガタイワンノ
トリト似テイルハナシデス　
ベニスズメ　　　内地ノスズメ位ニテ全身ベニ色
口ハナガイ　羽●鳥ダト云ヒマシタ
キバシリノ口バシニ似テ大ナリ
カツオトリ　　　
カラス　　　　　ナドイルト云ヒマシタガ見掛ケマセン
以上の鳥類を小笠原島より南の島
何れとも住居致し居る様子に御座●
クロアイサシ　　　是ハフハラロン島ニテ沢山見受マシタ
焼山ニシテ白ケムリヲ出シテオ
リマシタ　此山中段ヨリ下ニ草少シ
アリマシタ　木ハ一本モアリマセン
小笠原●●　ウグイス、ヒヨトリ、ハト
カモメ、マグソダカ、オサトリ、バカトリ
母島●●　目白、目黒等居る
様子に●●は此外山中入りを見た
されど未だ居る哉もしれませんが里近まで
見受けたるものを右之七種に御座●
何れ詳しき事を●●●
の上萬々を豫め御報
知旁歸宅御通知する
早々●●

四月十七日
安倍郡大里村中村
杉山兼太郎

小川三紀殿

※●は判読できない文字