はじめに

都市化に伴い都市地域から自然環境が失われると、多くの鳥類はその生息分布域が狭められ減少していく傾向がある。そのため自然環境の回復の必要性が指摘されている。一方においては、都市化現象に適応し、逆にその個体数を増加させている鳥類もいる。ドバト、スズメなどはその最たるものである。そしてその害が指摘されるまでになった。

 従来、鳥獣による被害に対しては駆除による捕獲によって処理されることが多く、被害防除の総合的検討、被害発生原因の究明、実験や野外観察に基づく具体的な被害対策の実施等がほとんど行われていない。当研究所は各方面からの要請に従ってドバトの被害防除について調査研究を続けて来たが、その結果が鳥類の保護活動推進の上からも鳥害対策に対して重要な示唆を与える事を知った。

 ドバトは古くは神社仏閣等に局所的に分布していた。近年に至り全国各地にその分布域を拡大するようになり、それに伴ってその被害が増大しその対策が強く望まれるようになった。特にドバトの被害は他の鳥類と異なり、全国的に周年発生しており、被害の広域性や被害防除の緊急性からみても、他の鳥類の被害問題と異なる側面を備えている。当研究所にも、鳥類の被害問題に対する質問が数多く寄せられているが、なかでもドバトに関するものは多い。
 この報告書は、ドバトの被害防除のために過去3カ年にわたり実施してきた基礎調査の報告である。実際にドバトの被害に直面している人々と共に他の種の鳥害に直面している人々にとっても役立つところがあれば幸いである。

 この報告書作成に当たっては、別表に記した人々の御協力を得た。また調査は、平塚市博物館、日本配合飼料株式会社中央研究所、東京農業大学、東京農工大学、東京都多摩動物公園(ABC順)との共同調査の成果であり、調査費の一部については3カ年にわたり日本自転車振興会からの公益資金の補助を得た。報告書の制作・印刷は株式会社創文新社が行った。これらの方々や機関に対して心からお礼申し上げたい。なお、調査は、松山資郎前資料室長が中心となり計画を立案し、松山及び柴田敏隆資料室長の指導のもとに杉森文夫所員が担当した。

昭和54年6月
財団法人 山階鳥類研究所
理事長 山階芳麿


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