1.4 ドバトと人の結びつき


 人類のカワラバトの家畜化の歴史は古く、「ドバト」の飼育は、世界各地で行われ、貴重な鳥類として扱われてきた。その飼育目的も、通信、運搬、競技、食用、観賞用として、地域によってはその糞を燃料や肥料(現在でも、福岡の箱崎神社では希望者に配布)として、また偶像崇拝の対象として大切にされてきた。最近では、主に愛玩のために「ドバト」が飼育されているという 6)

 国内でも「ハト」といえば、「八幡様とハト」、「平和のシンボル」、「愛と優しさ」等を連想する人は少なくはない。また、各種の競技大会や記念事業の折に伝書鳩を放鳥していることも知られている。

 この平和のシンボルは、「ノアの洪水物語」に由来しているといわれている 5)。この物語は、新世界の出発(神意にそむき、平和を失って争いと混乱に充満した世界の清算)が、ノアの方舟から飛びたったハトによってもたらされたオリーブの若葉の発見にはじまる。このハトが平和・正義・秩序の新世界の告知者であるからであろう。戦後、講和条約が締結されたのを記念して、タバコの「ピース」の図柄がハトに変ったり、自衛隊の記章にハトが用いられたりしている。

 一方、戦後愛鳥思想の普及に伴って、給餌活動がさかんに行われるようになったが、この給餌活動の原型ともいえる餌づけが戦前から神社仏閣のドバトに行われていた。現在でも、広場、公園、神社仏閣で、ドバトの餌づけが行われ、人との結びつきの一面を示している。

 その反面、ドバトの被害の増加にともなって“ドバト公害”なる言葉も使われ出している。「ドバト」に対する評価が時代とともに変り、現在そのマイナス面が強調されだしたが、この背景となった原因を明らかにすることが重要である。



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