高病原性鳥インフルエンザ

ツバメの営巣・えさ台の小鳥は心配いりません

2006~7年の冬は、国内の数カ所の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの発生が見られたほか、1月には熊本県内で死体が発見された野鳥のクマタカからの高病原性鳥インフルエンザの検出が報じられました。

軒先のツバメや、庭の給餌台に来た野鳥からの感染を心配される向きもあるようですが、野鳥から高病原性鳥インフルエンザに感染する確率は限りなくゼロに近いものです。以下に簡単にご説明します。

野鳥から高病原性鳥インフルエンザが見つかった例はほとんどない

日本でも山階鳥類研究所だけで全国各地の累計1000羽以上の野鳥を調査していますが、高病原性鳥インフルエンザは発見されていません。国内での今年1月のクマタカの事例、また過去に1回あったカラスの事例は、病気で死んだニワトリを食べたなど、何らかの非常に特殊な事例であったと推測されています。

高病原性鳥インフルエンザウイルスは基本的に人間には感染しない

高病原性鳥インフルエンザウイルスは通常は人間には感染しないものです。養鶏場での発生を懸命に押さえ込もうとしているのは、大発生によってウイルス数が爆発的に増加するうちに、極めて低い確率で起こる突然変異によってウイルスが変異し、人間に感染するようになるのを防ぐためです。また、産業的な視点から、他の養鶏場への拡大を防いで経済的な被害を食い止めることも大きな目的です。このように野鳥が高病原性鳥インフルエンザを保有している可能性は低く、さらに鳥インフルエンザが野鳥から人間に感染する可能性は天文学的に低いのです。

以上のようなわけで、通常のバードウォッチングやえさ台での給餌、ツバメの営巣については特に心配する必要はありません。

ただし、野鳥は鳥インフルエンザ以外の病原体を持っている可能性があり、その中には人に感染するものもありますから、鳥や鳥の糞をさわったら手を洗ってうがいをする、野鳥のえさ台や飼い鳥の鳥かごは常に清潔にしておく、飼い鳥と添い寝したり口移しで餌を与えたりしない、といった常識的な衛生対策とけじめあるふれ合いを心掛けることは必要です。

(2007年5月)