全国の学校における鳥類標本保有状況
アンケートがまとまりました。 〜ご協力ありがとうございました〜 |
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山階鳥類研究所では平成15、16年度にわたり、教育機関を対象に標本保有状況のアンケート調査を実施しました。おかげさまで984校の情報をいただくことができました。ご協力いただきました皆さまに感謝申し上げます。 このたび調査報告がまとまりましたので,その概要を以下にご報告いたします。また,詳細は山階鳥類学雑誌第37巻1号(No.113)に掲載しました。掲載報告の抜き刷りをご希望の方は担当までお知らせください。郵送でお届けします。 引き続き、一部の標本については、追跡調査を行いたいと考えております。その折りには改めてご協力をいただけますようお願いいたします。 なお,この調査は、文部科学省科学研究費の補助を得て実施しています。 この調査は以下が担当しております。お問い合わせ等は下記にお願いします。 |
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全国が保有する鳥類標本の実態に関するアンケート調査(概要) 山階鳥研NEWS 2005年10月号(No.199)より転載 |
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標本は,様々な研究の基礎となる情報源です。しかし,我が国では鳥類標本を保有する学術研究機関も決して多くはなく,質,量ともに欧米などと比べれば十分なものとは言えません。特に第2次世界大戦を経験している我が国では,その際に多くの標本が焼失しています。一方で,小・中・高等学校などの教育機関では,教材として鳥類標本を保有しています。しかし,これまで教育機関を対象に全国規模での調査はなされたことがなく,実態はわかっていません。それに加え,学校の統廃合が進むなか,その際に標本が廃棄される懸念もあり,早急に保有状況を把握する必要があると考え,アンケート調査の実施に至りました。 |
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●○希少種の標本次々と見つかる○● アンケートは2003,2004年度に,主に高等学校を対象に郵送する方法と,山階鳥研のホームページに質問票を掲載し,高等学校以外の教育機関にも広く回答を呼びかける方法の二通りで実施しました。 その結果,984校の情報が集まり,うち約半数の495校が標本を保有していました。保有校の傾向としては,次のようです。(1)保有点数50点未満が多い,(2)ほとんどが展示用剥製標本,(3)種名が分かる標本を保有している,(4)標本に採集時期や採集場所などが記載されたラベルが伴っているものが少ない,(5)保存状態の良い学校が半数以上をしめたが,保存状態の良くない学校も少なくなかった。 また,今回,トキやコウノトリ,イヌワシ,クマタカなど希少性の高い種の保有状況について聞いたところ,今まで知られていなかった学校で保有していたことが分かるなどの成果が得られました。特にレットデータブックに掲載されている種については,標本保有校の約4割にあたる183校が保有していました。主だった種の保有状況については,表をご覧ください。 ●○今後の課題○● 今回のアンケートでは,課題も見えてきました。懸念していた標本廃棄の問題です。今後の取り扱いについて聞いた問いに,標本を保有する学校の約3割が処分を検討しており,うち半分は他機関への譲渡に応じる意志があること分かりました。標本は同じ種であってもそれぞれ異なる情報を持っています。この情報は,現在読みとることが難しい情報かもしれませんが,技術の発展とともに将来,読みとることができる情報もでてくるでしょう。このような観点から現在利用頻度が少ないからといって,処分してしまうことは学術的な財産を失うことにつながります。 現存する標本は残していくことが理想で,現在,処分を検討している標本はできるだけ長期保管できる機関などへ移管することが望まれます。しかし,どの機関も保存スペースは限りがあり(山階鳥研も同様です),全ての標本を保存していくことは困難です。ですから,やむを得ず処分する場合には,十分検討する必要があると思います。山階鳥研でも価値の高い標本が処分される可能性がある場合,移管先を紹介するなどの対応をしていきたいと考えています。なお,この調査報告は山階鳥学雑誌の最新号(37巻1号)に掲載しています。こちらもご覧ください。 (資料室標本担当 小林さやか) |
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