このページでは、ヤンバルクイナがどんな姿形で、どんな生活をしているか、を見てゆきましょう。
ヤンバルクイナの翼は体重に比べて面積が小さく、翼を動かす筋肉も発達していないため、ほとんど飛ぶことができません。
胸から腹にかけての白と黒のしま模様と、真っ赤なくちばし,目,足が特徴です。
土のなかの小動物をほじくり返して食べます。カタツムリなどの固い殻も割って中身を食べます。
特に夕方に鳴きます。つがいで長く鳴き交わすこともあります。茂みの中に潜んで暮らすヤンバルクイナにとって、鳴き声は情報伝達の重要な手段です。
夕方になると木に登り,横に伸びた太い枝にとまって休みます。
ヤンバルクイナは胸の筋肉より足の筋肉の方が発達しています。この丈夫な足で茂みの中を縦横無尽に走ることができます。
シイなどの森林や草地の地面に枯れ葉を集めた簡単な巣を造ります。
5月頃,白地に茶の斑点模様の入った卵を4~5個産みます。卵の大きさは長径4.9cm、短径3.7cmです。
卵からかえったヒナはすぐに巣を出て歩きます。ヒナも太くて立派な足をしています。
沖縄島北部の国頭村,大宜味村,東村を合わせた「やんばる」と呼ばれる地域にはヤンバルクイナをはじめ、ノグチゲラ、ヤンバルテナガコガネなどのここにしか棲んでいない「固有種」が生息しています。これらの固有種は、やんばるの森が失われてしまえば、地球上から姿を消してしまいます。
ヤンバルクイナが棲むやんばるの森は、シイやカシなどの常緑広葉樹林が広がっています。
空を飛ぶために鳥類は胸筋が発達しています.この胸筋を支えている骨が「竜骨突起」です.左の写真を見ると,近縁で飛ぶことのできるナンヨウクイナ(写真右)よりヤンバルクイナの方が体は大きいのに,竜骨突起はむしろ小さく,胸筋が発達していないことを示しています.一方,足の骨は立派で,骨格からも地上の生活に適応していることが分かります。
「やんばる(山原)」という地名は沖縄島北部を指す言葉で,ヤンバルクイナももちろんこのやんばる地方に棲むクイナという意味です。新種の確認に至った捕獲調査の最中から,現地のチームのメンバーの間では,和名として「ヤンバルクイナ」か「ヤンバルフミル(フミルはバンの地方名)」にしようという話し合いがされていました。しかし「やんばる」という言葉が当時は一般的でない地方的な呼称であったため,山階鳥研の内部では「オキナワクイナ」のほうが良いという意見もあったのです。結局,「鳥の保護には地元の理解と協力が不可欠なので,それにはより具体的なヤンバルを名前に入れるのがよい」という判断から,最終的に「ヤンバルクイナ」と命名されました。
「ヤンバル」という言葉は以前から植物名などに用いられてきましたが,全国的に広く知られるようになったのはヤンバルクイナの命名以来のことです。そのネーミングによって沖縄島北部の自然の貴重さを全国に知らせることになったヤンバルクイナの減少は,現在のやんばるの自然の危機を象徴しています。