客席 グアムクイナの人工増殖は、誰がイニシアチブを取ってどのように組織作りをしたのでしょうか。
ウェニンガー 非常に横断的な組織間の協力が必要でした。アメリカ内務省の水生野生動物局、農務局、アメリカの動物園協会といったいろいろなところが緊密に協力してプロジェクトを組みました。
上原康作(国頭村長) 地元ではネコの適正な飼育に関する条例をこの9月に可決しました。ヤンバルクイナの人工増殖を早急に行うときであると思います。また生息地域に傷病鳥の治療施設を作るべきだと考えています。
樋口広芳(東京大学農学生命科学研究科教授) 私は人工増殖に反対ではありませんが、人工増殖してヤンバルクイナだけを守れば良いということではなく、ヤンバルクイナが棲む山原の生態系そのものを全体として保全するという視点が失われてはいけないと思います。
上原 野外でマングースを防ぐためにフェンスを張るというようなことは、実際的、経費的に、また産業や生活の観点からなかなか難しいと思います。
名執芳博(環境省野生生物課長) ヤンバルクイナの保護増殖事業計画を、来週の中央環境審議会で諮問させていただく予定です。その中で、生息環境の保全、改善と、人工増殖技術の確立を、両方バランスよく進めてゆきたいと思っています。外来種については、外来種法が来年の春から動き出すことになっています。マングースについてはすでに環境省と沖縄県とで協力しながら駆除対策を進めております。
山岸 どうか皆様もホームページなどを使って、環境省の方がここでおっしゃったことをちゃんと果たしているかどうか暖かく見守っていただきたいと思います。
長嶺隆(ヤンバルクイナたちを守る獣医師の会代表) 私にはヤンバルクイナは溺れかけた人に見えます。いろいろの議論より前にとりあえず引き上げなければいけない、という時期だと思います。しかし最終的な目標は緊急避難的な対策ではなく、山原の森を元の森にかえすことだと思います。
伊東員義(上野動物園飼育調整係長) 日本動物園水族館協会は種保存委員会を作っていますが、クイナの仲間はまだ飼育実績がありませんので、手始めに例えばグアムクイナを日本の動物園で飼育してみるというのもひとつの手がかりかと考えています。
山岸 今日の話の中心はおそらく、人工増殖と野生の自然環境の保全は車の両輪であり、両方へ力を入れてこれから進めて欲しいということだったと私は理解しています。本日はどうもありがとうございました。
(文中敬称略 まとめ・平岡) 山階鳥研NEWS 2004年11月1日号より
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