山岸 アホウドリについて私たちは何をこれまでやってきて、いまどこへ向かおうとしているのかということが、ここまでのお話でおわかりになったかと思います。
会場 アホウドリの回復に関する資金は、国民や政府から必要十分にあるのでしょうか。
長谷川 潤沢とは言えませんが、僕自身の調査研究は、東邦大学、「アホウドリ基金」という個人的な方からの寄付、それと僕自身のお金でやっています。
ベイロー アメリカ側の予算ですが、アホウドリをレッドリストから外すことができれば産業活動がよりスムーズに行えるということで、比較的潤沢な資金、具体的には年間2億円程度の額を得ることができました。
会場 衛星追跡でアホウドリが北へ移動することがわかったのに、鳥島より南側の小笠原諸島に誘致するのは不適当ではないのでしょうか。
長谷川 先ほどの衛星追跡は、繁殖前の若い鳥の追跡ではないことがひとつと、かつて繁殖していた場所であることが重要なことがあります。現在小笠原では不定期にアホウドリが観察されていますが、鳥島の北側の島ではそういうことはないのです。
会場 テレビで紹介された、デコイに恋したアホウドリはその後どうなったのでしょうか。それから、アホウドリという名前を、この機会に変えていただけないでしょうか。
佐藤 この5月にデコイをすべて撤去したときに、公にはあまり検討しませんでしたが、1個忘れていましたと言ってそのデコイだけ残せばいいのかと思ったりしました。デコイがなくても絶対うまくやってくれると私は信じています。
長谷川 名前の変更は僕が決めることではないので、提案しています。すぐに変えるのは無理だと思いますけれども、アホウドリが5000羽を超えるころには変わるのではないかと思います。
山岸 最後に環境省野生生物課長の星野さん、シンポジウムを聞かれていかがでしょうか。
星野一昭 今日のシンポジウムは、アホウドリのこれまでと、これから進む方向について、科学的な観点も踏まえてわかりやすくお示しいただいて、時宜を得た素晴らしい企画だと思っております。環境省としても、今後も精いっぱい努力していきたいと思っております。
山岸 私の感想ですが、いまやアホウドリの保全は国際的な協力によって考えていかなければならない時が来ているということ、それから、カップ麺の容器の話がありましたが、離れ小島で生活しているアホウドリに、私たちの出すゴミが川と海を経由して問題を起こしているわけです。意外と私たちと身近なところで繋がっているので、一人ひとりがやればできることがきっとあるんだと思います。そういうことを今日、お持ち帰りいただければ非常にありがたいと思います。
(文中敬称略 まとめ・平岡) 山階鳥研NEWS 2006年11月1日号より
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