4.4.3 伝書鳩の帰還率


 現在の伝書鳩の飼育目的は、レース参加にある。ここでは伝書鳩のレース参加による帰還率について調べてみた。資料は、雑誌「愛鳩の友」の「レースの成績」 12) の欄からレースの距離、参加鳩数、記録鳩数の明示されているレース結果(表4.10)を5年ごとに選び出し使用した。資料の一部は、年によって記載事項の一部が省略されているため、データが少ない年もあったが4,063回のレース結果を集計できた。なお、ここでいう記録鳩とは、一定の距離に対し、ある規定以内に鳩舎に帰還し、その時間が正確に記録できたレース参加鳩をさしている。従って、ある規定日数以後に鳩舎に帰還した伝書鳩は含まれない。

 図4.5は、レースの距離ごとにその帰還率を示してある。この帰還率は年によって変動しているが、短・中距離のレース(700km以内)は比較的その率が高い傾向を示している。全レースの平均でみると、この率は100〜700kmのレースの場合、40%台であり、その割合は長距離(800km以上)に比べて高い。

 ここで問題となる未帰還鳩(レース参加鳩数−帰還鳩数=未帰還鳩数)は、すべてが野外に定着したわけではなく、規定日数以内に帰還したが記録をとらなかったもの(本来このようなケースはおかしいが実際にはあるという)、規定日数以後に帰還したもの、レース途中の事故、他の鳩舎や放鳥地等へ迷行(一部は回収しているという)したものが含まれると思われる。

表4.10 伝書鳩(レース鳩)のレース結果
(上段:記録鳩数、中段:参加鳩数、下段:レース数)
調査年
100km
200km
300km
400km
500km
600km
700km
800km
900km
1,000km
1,100
km以上
1956 3,165
6,706
80
2,529
5,432
55
2,623
5,499
35
983
3,255
22
559
1,414
24
430
1,340
29
141
268
5
23
59
1
     
1960
-61
259
354
3
1,021
1,762
7
556
990
7
63
281
5
542
1,761
37
1,658
3,854
62
511
1,525
42
42
186
8
  69
1,186
13
3
48
1
1966 2,084
3,844
15
2,830
6,750
35
17,701
50,829
245
7,460
17,670
142
5,092
14,697
87
3,594
9,214
108
1,430
4,782
101
351
2,222
34
2
8
2
260
1,836
28
 
1971 44,277
95,809
259
62,855
130,507
296
50,273
101,111
257
18,981
35,784
154
35,453
68,284
279
11,791
23,822
161
5,941
11,813
117
981
2,685
37
201
831
17
94
1,031
5
21
264
2
1976 20,342
63,180
159
53,693
124,633
234
44,028
97,213
221
18,488
35,163
98
25,063
47,986
189
18,086
34,670
118
4,747
9,782
87
1,800
3,416
33
401
1,597
18
1,533
6,854
74
212
728
15
70,127
169,893
516
122,928
269,084
627
115,181
255,642
765
45,975
92,153
421
66,709
134,142
616
35,559
72,900
478
12,770
28,170
352
3,197
8,568
113
604
2,436
37
1,956
10,907
120
236
1,040
18
注:この記録は「愛鳩の友」誌より各レースの結果を各年別に集計したものである。


図4.5 伝書鳩(レース鳩)の距離別帰還率
図4.5
注:「愛鳩の友」誌より計算


 伝書鳩の訓練は、短距離からはじまり、訓練を積んで長距離に参加していく。つまり、長距離レースに参加する個体は、訓練を経て育てられた優秀な個体であるといえる。しかし、レースの帰還率をみてきたように、長距離レース程その帰還率は低い。このことは長距離レースが伝書鳩にとって過酷なものであることを示している。
 一方、レース参加鳩数は一般に短距離程多く、長距離では少ない(図4.6)。短距離レースは帰還率が高いが、参加鳩数が長距離に比べて多いことから野外に定着する絶対数が長距離に比べて多くなる可能性がある。
 これらの未帰還鳩は、伝書鳩の年間生産羽数(1969年のブームのとき年間400万羽弱、1.3参照)やレース参加鳩数(表4.11)を考慮すると、伝書鳩の野外に定着する割合は少なくとも無視するわけにはいかない。今後の詳細な調査により、伝書鳩の野外への定着の数量的把握が必要であろう。

図4.6 伝書鳩の距離別レース参加羽数
図4.6
注:「愛鳩の友」誌より算出、1レース当りの平均参加羽数



表4.11 1977年レース参加の伝書鳩羽数 (単位:羽)
県 名
参加羽数
県 名
参加羽数
県 名
参加羽数
北海道
103,628
長 野
15,312
山 口
3,000
青 森
90,541
新 潟
54,136
島 根
6,523
秋 田
42,653
富 山
18,395
鳥 取
2,622
岩 手
181,200
石 川
19,932
香 川
0
宮 城
175,899
福 井
2,071
愛 媛
0
山 形
16,865
愛 知
3,569
徳 島
1,086
福 島
167,304
岐 阜
1,350
高 知
0
茨 城
36,584
三 重
10,283
福 岡
0
栃 木
6,649
和歌山
409
佐 賀
0
群 馬
745
京 都
3,064
大 分
46
埼 玉
12,354
滋 賀
10,697
長 崎
2,396
千 葉
1,692
大 阪
1,064
熊 本
0
神奈川
8,066
奈 良
0
宮 崎
0
東 京
6,609
兵 庫
11,607
鹿児島
411
山 梨
0
岡 山
0
沖 縄
0
静 岡
23,620
広 島
1,517
全 国
1,043,899
注:この数値は(社)日本鳩レース協会に所属している会員のレース参加羽数で、国内全体の値ではない。



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