4.4.4 ドバトの羽色とその地域差


 ドバトの羽色には、種々の色彩のものがあり、細かく分類すると150タイプ以上に分けられる 2)。ここでは大別して7種に分けて記録を集めた。その基準は次に示した。

  1. 二引:灰とも言われ、カワラバトに良く似た羽色をもち、翼に二本の黒い線のある個体。翼全体は灰色。
  2. 灰胡麻:二引タイプの羽色で、翼の灰色の部分に黒斑が含まれるが翼面積の50%以上が灰色のもの。
  3. 黒胡麻:灰胡麻の逆のタイプで、翼面積の50%以上が黒色で翼には灰色の斑がある。
  4. 黒:全体が黒色。ただし胸・腹部が灰色に近い羽色でも、翼面が黒色ならば含めた。
  5. 白:全身が白色。
  6. 栗系(栗二引・栗胡麻):赤褐色の色彩をもち、全体が赤茶のものや灰色味の強い赤褐色の斑のある個体。
  7. モザイク:雑斑とも言われ、種々の色彩のものがモザイク状に配色されているもの。

 ドバトの羽色は、地域によってその割合が異なる傾向が予想されたので、各地で観察したドバトの羽色の割合について比較してみた。図4.7は各地のドバトの羽色の割合をまとめたものである。古くからドバトが生息していた神社仏閣、都市部のものは黒胡麻が多く、二引、灰胡麻、有色系(栗系・白・モザイクを総称)の割合が低い。しかし、比較的新しくドバトが定着した地域や農村部では、二引、灰胡麻、有色系が多くみられ、黒胡麻の割合が低い。

 4.1でみたようにドバトは、戦前までは神社仏閣等を中心に生息していたが現在では都市部や農耕地で普通にみられている。ドバトが従来の生息地から分散し、分布地を拡大したと考えると、このドバトの羽色の地域差はどのように理解すべきであろうか。

 そこで野外で伝書鳩が観察されることが多いことから、伝書鳩の羽色について、雑誌「愛鳩の友」や(社)日本鳩レース協会の飼育個体を材料にして調査を行った。これらの結果は、表4.12に示したが、いずれも二引、灰胡麻、有色系が多い。このことから伝書鳩の羽色は飼育者の意識的な交配(配合)によって、特定の羽色の個体を作り出していると言えよう。定着の歴史が比較的新しいと考えられる地域のドバトの羽色は、伝書鳩の羽色の割合に近似していると言える。

 このことは戦前の多くのドバトの羽色が黒胡麻であったことや足環付のドバトが観察されることとを合わせて考えると、伝書鳩の野外定着が、ドバトの分布域拡大や個体数増加の要因となっていると考えられる。

図4.7 ドバトの羽色の地域的差異
図4.7
※伝書鳩(表4.12より)


表4.12 伝書鳩(レース鳩)の羽色

調査年
合計羽数
二引
灰胡麻
黒胡麻
有色系
備考
1956 200 20.0 45.5 16.0 0.5 18.0 「愛鳩の友」誌より算出。
1961 186  30.6  40.3  15.6  0.0  13.4 
1966 200  24.5  46.0  10.0  0.0  19.5 
1971 200  31.0  47.5  8.0  0.5  13.0 
1976 200  34.5  46.5  8.0  0.5  10.5 
986  28.1  45.2  11.5  0.3  14.9 
1978 69  40.6  18.8  15.9  1.5  17.4  日本鳩レース協会飼育
個体より算出。
注:有色系−モザイク、白、栗系の総称



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