4.6 天敵の減少とドバトの適応性
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都市化の進行に伴って、自然環境は単純化され、半乾燥化された地域が拡がってきている。こうした環境に生息しているドバトは、本来天敵として生息していた猛禽類や哺乳類等の捕食者の減少が、その分布域を拡大させる要因にもなったと考えられる。三浦半島の城ケ島周辺では、ハヤブサに追われたり、捕食されたドバトが観察されている。また、フクロウのヒナの餌にドバトが与えられた報告 7) もある。 多くの鳥類は都市化により、その分布域の退行現象が指摘されているが、ドバトは半乾燥化した都市部・農村部にむしろ好んで生息し、その分布域を拡大し、個体数を増加させている。 ドバトの就塒・営巣場所は、カワラバトにみられる岩棚等に類似した人工の種々の建造物を積極的に利用している。一部では、樹洞での繁殖例もある(3.1参照)。なかには、東京・新宿の三井ビルの地上200mの所で営巣した例 13) もある。ドバトの巣材は、枯枝やワラ等を利用している例が多いが、一部では針金・銅線を用いたり、あるいは巣材を用いず直接コンクリート等の上に産卵する例も観察されている。このようにドバトは人工の種々の建造物を使用して営巣しており、都市化された環境に適応して生活している。 ドバトの餌は餌づけによる食物、各種産業の生産・流通過程で生じる穀物・飼料、冬期の水田の落籾等である。一方では、ムク・ナンキンハゼの実、コナラの冬芽を樹上で採餌している(3.4参照)。ドバトは、人間の生活領域内の餌と自然的な餌を利用して生活している。今後、この種の採餌観察例は増えるものと思われる。 多摩動物公園のドバトは、年間を通して採餌に費やす時間が少なく、その行動はほとんど休息であった(3.2.2参照)。しかし、佐渡や平塚市の農耕地のドバトは、多摩動物公園に比べて採餌の時間が長く、休息の時間が短い。これは餌の質や量によって行動が異なるためと考えられる。また、ドバトの活動時間も地域によって異なる場合も観察されている。佐渡の外海府や三重県神島の海岸の洞窟に就塒しているドバトは、その理由は不明だが冬期就塒する時間が都市部に比べて早く、佐渡での12月・3月の観察では13時30分に就塒していた。一方、東京・渋谷の11月の観察では日没後の19時30分頃に採餌している個体もみられている。また、ドバトの移動に関して先の神島では、島から三河湾、鳥羽、伊良湖方面へ飛去した例も観察され、ドバトが長距離の移動を行っているとも考えられる。このようにドバトは、地域や環境の条件により様々な行動を示し、生活している。 ドバトの生理生態的な特性として、第1にはピジョンミルクでヒナを育てることが言える。このためドバトは、昆虫の多少と無関係に年間に渡って繁殖することが可能である。第2には、ドバトの飢えに対する適応性があげられる。これは野外で生活する上では有利な点と考えられる。第3には、ドバトは寒さに対する適応性が高く、北海道や青森等の積雪地方でも冬期ドバトは飼料倉庫等で餌確保ができれば生活が可能である。 |
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