(1)ドバト害対策の基本的な指針は、次の2項目が指摘できる。
1)ドバト個体数増加要因の除去、即ち食物の供給源を絶つ、就塒・営巣場所を
与えない。
2)個体数の抑制
(2)ドバト個体数増加要因の除去については、
1)都市部では、生産・流通並びに消費の過程で生じる飼料・食糧等の荷こぼれ、野積残飯等の管理を徹底し、ドバトが利用できる食糧源を絶つことが重要である。これらの実施に当っては、各企業や個人の自主性にまかせるだけでなく、強力な行政上の運用が必要である。
2)農村部では、冬期の水田利用(作付面積の増進)と大面積一斉栽培により、個体数の減少及び被害の分散・低減をはかる。
3)公園・神社・仏閣・公道・各家庭における無秩序な餌づけは、個体数増加の一因となるので制限すべきである。
4)就塒及び営巣場所を与えないために、建造物・構築物の設計段階での留意、空隙の閉鎖・改装などを行い、ドバトが利用できないようにする。
(3)個体数抑制については、
- 1)伝書鳩(レース鳩)の管理及び安易な放鳩の制限により、その野生化を防止する。
- 2)被害発生地域のドバトの個体群を特設の鳩舎内に誘致し(鳩舎方式)、ここで個体数の管理を行い、被害の低減をはかる。
- 3)個体数増加を抑制するために、有効な避妊薬等の開発研究が望まれる。
(4)これらの対策に並行して、忌避法・捕獲法等を適宜組合せて防除対策を実施し、被害の低減をはかる。
(5)ドバトの被害低減に関する法体系の整備・確立が望まれる。
1)捕獲に関しては、現行の「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」のなかで野良猫、野良犬と同様の扱いを受けるように改正する。
2)餌に関しては、食品衛生法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律等に生産・流通過程で生じる穀物等がドバトの餌とならないように管理規則を含ませる。
3)建築物に関しては、ドバトが営巣できるような空隙の形成に関する設計の制限(建設基準法)や建築物の維持・管理(建築物における衛生的環境の確保に関する法律等)に関する法的な整備が必要である。
4)動物の保護及び管理に関する法律に関しては、伝書鳩(レース鳩)のレースに関する管理規制を含ませる。
(6)以上の対策を実施する上で、具体的な防除管理に必要な調査研究体制の確立と技術研修・情報の収集及び提供の専門機関の設立が望まれる。
(7)人類とドバトの良好かつ平和的共存のためには、鳩舎による管理方式の実施により、戦前のレベルにまで個体数を低減させることと、ドバトに対する人々の意識構造の改革が必要である。
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