2.2.3 神奈川県のドバトの有害駆除

 神奈川県は、1970年にドバトの有害駆除がはじまり、最もドバトの駆除密度の高い地域である。県内のこの有害駆除は、1970年から1977年までに許可件数360件、許可羽数約11.4万羽、捕獲羽数約6.6万羽である(表2.7)。これらの資料は、1975年に最も多くの有害駆除が実施されていたことを示している。

 次に、ドバトの有害駆除による捕獲羽数並びに許可羽数を地区ごとにみた(表2.8)。県内では横浜市、川崎市の捕獲並びに許可羽数が高く、この地区を中心に実施されているといえる。この両市の実施状況は、区レベルで集計すると、鶴見・神奈川・中区と川崎区が高い。この4区で、県内のドバトの累積の捕獲・許可羽数のそれぞれ82%程で、これらの区はいずれも京浜工業地帯に位置し、東京湾に面している。

 この他の市や郡のドバトの有害駆除は、1974年頃より増加し、現在県内各地で実施されている。年々その傾向は、都市部から近郊都市・農村部へと、その実施地区が拡大している。このことは、県内のドバトの有害駆除が1975年頃までの横浜・川崎市の港湾部中心のものから広域的なものへ移行しているといえ、今後もその傾向が続くものと思われる。


図2.4 神奈川県の有害駆除によるドバトの捕獲羽数
図2.4



表2.7 神奈川県のドバトの有害駆除の実施状況

項 目
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
許可件数 3 3 12 26 79 113 78 46 360件
許可羽数 300 450 862 5,018 16,254 38,248 37,361 15,375 113,868羽
捕獲羽数 229 103 458 3,006 10,068 24,016 18,857 9,502 66,239羽



表2.8 神奈川県の有害駆除によるドバトの捕獲羽数(単位:羽)
地 区
捕獲羽数
1970
1971
1972
1973
1974
1975
1976
1977
備 考
(累積許可羽数)
横浜市 47,682 180 53 343 2,591 7,452 19,446 14,920 2,697 (75,805)
川崎市 9,180       130 1,289 3,078 2,156 2,527 (22,700)
平塚市 1,190 49 50 50 183 149 193 250 266 (1,989)
鎌倉市 460     2 9 252 114 81 2 (1,292)
伊勢原市 536     63   63 98 120 192 (631)
相模原市 837       3 48 215   571 (1,135)
横須賀・
三浦市
3,576       90 240 502 1,154 1,590 (6,590)
厚木市 1,027         347 40   640 (1,150)
津久井郡 86         67   19   (120)
高座郡 1,299         143 325 66 765 (1,910)
愛甲郡 27         18   9   (80)
秦野市 5           5     (30)
座間市 111             51 60 (111)
足柄上郡 18             18   (30)
足柄下郡 13             13   (15)
茅ヶ崎市 192               192 (280)
合 計 66,239 229 103 458 3,006 10,068 24,016 18,857 9,502 (113,868)

横浜市内訳表(単位:羽)
地 区 捕獲羽数 許可羽数
鶴見区 18,234 23,155
神奈川区 17,924 27,940
中 区 9,045 20,550
西 区 2,308 3,110
戸塚区 0 480
磯子区 97 220
緑 区 74 350
47,682 75,805
川崎市内訳表(単位:羽)
地 区 捕獲羽数 許可羽数
川崎区 8,914 21,360
幸 区 0 100
高津区 34 790
多摩区 31 200
中原区 20 250
9,180 22,700




 次に、駆除申請者による被害対象別の捕獲羽数についてみた(表2.9)。累積捕獲羽数に対し、工場関係が約55%、倉庫関係が約30%、農業・畜産関係が約12%をそれぞれ占め、工場・倉庫などでの捕獲羽数が高い。特に、工場関係では、生産・流通過程で穀物を使用する工場での捕獲が累積の47%程になる。同様のことは、倉庫関係でもいえるかと思われるが、分けて記録できなかった。

 なお、これらの工場・倉庫関係の企業は、先の横浜・川崎市の4区にそのほとんどが位置していた。つまり、県内の有害駆除の捕獲羽数は、これら4区内にある飼料工場、食品工場、穀物倉庫でそのほとんどが捕獲されたことになる。この点を確かめる意味でドバトの分布を調べたのが、横浜市神奈川区(3.1.1参照)であり、ドバトは港湾部の工場地帯中心に分布していた。また、神奈川区内のドバトの捕獲羽数も、これらの企業によるものであった(表2.10)。

 農業・畜産関係の有害駆除は、豆類・野菜類の畑作物中心に実施されているが、養鶏・養豚関係のものも少例ある。平塚市郊外の畑作地は、県内では1970年より有害駆除がおこなわれ、最も古くから実施された地区である。捕獲羽数の上からは、三浦・横須賀・平塚市と高座郡が比較的高い。しかし、この実施地区は、県内各地でみられている。

 その他のものは、その捕獲羽数が少ないが、各地の高層住宅・神社・病院・学校・自衛隊・駅・旅館等で実施されている。都市や都市近郊では、ドバトの苦情を聞くことが多いが駆除申請を出さず、駆除にいたらないことが多いようである。

 県内のドバトの捕獲方法は、捕獲箱(5.2.5参照)が主なもので、その他に銃器とアミ類が利用されている。一般に銃器の使用できない都市部で捕獲箱が、農耕地で銃器が使用されている。


表2.9 神奈川県の被害対象別ドバト捕獲羽数(単位:羽)

地 域
工場関係
倉庫関係
農業・畜産
その他
穀物使用
非穀物使用
農 作 物
養鶏・養豚
横 浜 市
30,621 2,106 14,601 171 0 183 47,682
川 崎 市
300 2,919 5,395 65 0 501 9,180
その他の市・郡
0 463 0 7,529 137 1,248 9,377
合 計
30,921
(46.7%)
5,488
(8.3%)
19,996
(30.2%)
7,765
(11.7%)
137
(0.2%)
1,932
(2.9%)
66,239
(100%)
注:1970年〜1977年の有害駆除による捕獲羽数


表2.10 横浜市神奈川区のドバトの捕獲羽数(単位:羽)

町 名
捕獲羽数
捕 獲 内 訳
備 考
穀物使用工場・倉庫 非穀物使用工場 高層住宅
守屋町 3,588 2,973 615   2工場
エビス町 5,134 5,021 113   2工場、2倉庫
新浦町 453 453     1工場
子安通 *   *   1工場
千若町 8,740 8,740     1工場
沢 渡 9     9 1住宅
合 計 17,924 17,187 728 9  
注:1970年より1977年まで神奈川区内で実施された有害駆除による捕獲羽数
  * 捕獲羽数の報告なし



表2.11 ドバトの駆除方法別捕獲率(神奈川県)

 
捕獲小屋
アミ類
その他
許可羽数(A) 13,877 99,311 200 480 113,866羽
捕獲羽数(B) 8,514 57,506 70 149 66,239羽
捕獲率(B/A) 61.4 57.9 35.0 31.0 58.2%
注:1970年〜1977年の有害駆除より算出
  その他は捕獲小屋等数種の方法を併用したもの



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