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●東日本大震災 三陸沿岸の海鳥繁殖地の状況を緊急調査 山階鳥研では、公益信託サントリー世界愛鳥基金から震災対応の追加助成を受けて、2011年6月22日から7月3日まで宮城・岩手両県の三陸沿岸にある海鳥生息地の島嶼4島で調査を実施しました。 |
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調査を行った三陸沿岸の4島 |
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三陸沿岸の無人島には絶滅危惧種を含む海鳥類の繁殖地があり、山階鳥研では、5月19日に文部科学省と環境省に提出した「東日本大震災に関する鳥類の保全に向けての提言」において、地震と津波によってこれらの島の生息環境と海鳥類に影響が出ていないかの現状把握の必要性を訴えていました。 保全研究室の佐藤文男研究員をリーダーとする今回の調査では、江島列島足島(宮城県女川町)、日出島(岩手県宮古市)、大島(タブの大島、岩手県山田町)、三貫島(岩手県釜石市)を対象に、船上からの外周調査と、上陸しての繁殖状況の目視調査およびウミツバメ類の捕獲調査を行いました。 4島では平均して海抜15〜20メートルの高さまで津波が達し、日出島の東側では40メートル程度まで達したと推測されました。地震による崩落や、津波による浸食、植生の洗い流し、枯死、倒木などが観察されましたが、オオミズナギドリ、絶滅危惧IA類のクロコシジロウミツバメなどのウミツバメ類、ウトウ、ウミネコ等の繁殖はおおむね例年どおりに行われていることが観察されました。しかし、絶滅危惧II類のヒメクロウミツバメは、三貫島の、唯一知られている数十メートル四方の営巣地が、崩落した岩で半分程度埋まっており、ひきつづき観察が必要です。 また、津波によって土壌が現れた場所では塩害により植物の枯損が認められる箇所があり、地中に営巣する大型のオオミズナギドリの活動によって裸地化と土壌の流出が進む可能性があるなど、希少種を含む海鳥類の生息環境について今後も継続した観察が必要と考えられました。 |
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日出島(宮古市)の外周調査。 絶滅危惧種クロコシジロウミツバメほかの海鳥が繁殖する。 上陸調査の結果、津波は標高約40メートルの頂上まで達したと考えられる。 |
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●鳥インフルエンザ対策 モンゴルで野鳥の捕獲調査 山階鳥研では、国際獣疫事務局の委託を受け、2008年度から5年計画でアジア各国で野鳥の調査を行っています。アジアにおける鳥インフルエンザの防疫体制強化のために、
渡り鳥の飛来ルートの調査・分析を行い、 かつそのルートに沿って野鳥からサンプルを採取するものです。2011年7月にはモンゴルで繁殖後のオオハクチョウ12羽を捕獲し、人工衛星追跡のための 発信器を装着したほか、これらのオオハクチョウを含め鳥類15種58羽を捕獲し、鳥インフルエンザへの感染検査のためのサンプル110検体を採取しました。 |
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発信器を装着後、放鳥前のオオハクチョウ (2011年7月19日 モンゴル西部ブーン・ツァガーン湖) |
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●カラーフラッグ付きのタゲリ モンゴルとの渡りが判明 モンゴルで野外識別用のカラーフラッグを装着されたタゲリが、石川県で一般の方により観察撮影されました。タゲリで海外の生息地との間の移動が確認されたのは初めてです。 |
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撮影されたタゲリ(2011年3月27日 石川県加賀市干拓町) 左下は金属足環の拡大。下3桁の「002」が見える (2コマとも撮影:寺谷泰彦氏) |
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この個体は、2011年3月27日に石川県加賀市干拓町(柴山潟干拓地)の耕地で同種の群中にいるところを、加賀市在住の寺谷泰彦さんにより観察撮影されました。右脚のカラーフラッグと左脚に装着された金属製の足環の番号が確認でき、問い合わせの結果、ニューヨークに本部のある自然保護団体「野生生物保護協会」(Wildlife Conservation Society)が2008年7月にモンゴル中部のオギイ湖畔で標識を装着したものであることがわかりました。 |
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今回判明したタゲリの移動 |
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今回撮影されたタゲリがモンゴルで標識を付けられた時期から、この付近で繁殖したことが推測され、日本に渡来するタゲリの繁殖地に関する情報が初めて得られました。
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●被災地の児童が来所 東日本大震災で被災し、仮設住宅で暮らす宮城県東松島市の小学5年生4名が、7月28日、山階鳥研を訪問しました。小学生は、法人賛助会員の妙行寺(大宮孝舒住職、茨城県稲敷郡河内町)に1週間ホームステイしていたもので、山階鳥研ではスライドで解説を聞いたあと、所員の案内で所内を見学しました。 |
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鳥の本を見る子供たち。 右奥は大宮住職。左奥は鶴見みや古自然誌研究室長。 |
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●関西地区賛助会員の集いを開催 2011年7月4日、リーガロイヤルホテル(大阪市北区)で、「関西地区賛助会員の集い」を開催しました。総裁秋篠宮殿下のご臨席をあおぎ、なごやかに歓談のひとときを過ごしました。 |
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大阪大学元総長、兵庫県立大学名誉学長 熊谷信昭様のご発声で乾杯 |
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今回の集いで島津理事長から山階鳥研が関係官庁に提出した「東日本大震災に関する鳥類の保全に向けての提言」や公益財団法人への移行の進捗状況につての説明がありました。また、出口研究員が「特別天然記念物・絶滅危惧種 アホウドリの復活」と題した講演を行いました。
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120名余りの参加者を前に講演する出口研究員 |
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