エトピリカは北太平洋で繁殖する海鳥で、その名前がアイヌ語「エト(嘴)ピリカ(美しい)」に由来していることからもわかるように、美しい嘴が特徴です。
この嘴の装飾が繁殖期だけにあることは知られていても、繁殖期の終わりに外れることはあまり知られていないでしょう。画像のエトピリカは、拾得死体を標本材料としてご寄贈いただいたものですが、たまたま繁殖期のおわりの個体で、嘴の装飾(象牙色の部分)が外れるタイミングだったようです。
多くの鳥では、上嘴、下嘴それぞれが1枚の角質の鞘に覆われていますが、エトピリカ、ツノメドリなどのウミスズメ科の鳥のいくつかや、ペリカン類、ペンギン類の一部などで、角質の鞘の一部が繁殖期の間だけ大きくなり、繁殖期が終わると落ちてしまうことが鳥類学の教科書に書かれています。これは求愛のための装飾と考えられています。
繁殖期の終わりに生息地の海に行くとこういう装飾が外れて浮かんでいるのでしょうか?興味深いです。
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