投稿者「山階鳥研広報」のアーカイブ

NHK「ダーウィンが来た!」今度の日曜日は、「小笠原で初産卵!若きアホウドリ夫婦の挑戦」です

nhk_albatross02山階鳥類研究所では、絶滅危惧種アホウドリの小笠原再導入のため、2008年から2012年まで5年間、伊豆諸島鳥島から小笠原諸島聟島(むこじま)に合計70羽のヒナを移送し、人工飼育によって69羽の巣立ちに成功しており、昨年11月には、2008年に人工飼育して巣立ったヒナが別の個体と番いになって、産卵したことが確認されました。

産卵は山階鳥類研究所とNHKが共同で設置している監視カメラによって確認されたものですが、今週末、日曜夜の「ダーウィンが来た!」で、このアホウドリの産卵と、その後何が起こったかが紹介されます。予告動画によれば、「三ヶ月にわたる波瀾万丈のドキュメント」ですのでぜひご覧ください。
ダーウィンが来た!生きもの新伝説
「小笠原で初産卵!若きアホウドリ夫婦の挑戦」
(NHK総合テレビ)
【日時】2013年5月26日(日)19:30〜19:58
<再放送>    6月 1日 (土)17:30~17:58
NHK「ダーウィンが来た!」の番組ページ(予告動画あり)はこちらです。

山階鳥研ブログ「産卵確認!〜アホウドリ再導入を進めている小笠原群島の聟島で」(2012年12月5日)はこちらです。

山階鳥研のプレスリリース(今回の産卵関係は、2012年12月5日、2013年1月15日、1月17日)はこちらです。
山階鳥研のウェブページ「アホウドリ 復活への展望」はこちらです。

新緑の我孫子 エゾムシクイのさえずり

yio美しい新緑が目にまぶしい頃になりました。多くの野鳥にとっては、4月頃からちょうど今頃をまたいで7月頃までが、巣作りと子育てをする、いわゆる繁殖期です。
すでに多くの鳥が繁殖に入っていますが、日本でこれから繁殖するために南から渡って来る鳥も続々と到着しています。またもっと北で繁殖するために通過してゆく鳥もいます。
今日は、我孫子の山階鳥類研究所の裏山で、エゾムシクイが囀っていました。
【音声】エゾムシクイの囀り(途中自動車の音が入ります)(2013年5月10日 山階鳥研裏手、約1分)

エゾムシクイはスズメよりも小さくて外見はウグイスに似た、オリーブ色のとても地味な鳥ですが、「ヒーツーキー、ヒーツーキー」とやや金属的な響きのする美しい声で囀ります。この鳥は、サハリン、北海道の森林や、本州北部、四国などのやや標高の高い森林に渡来して繁殖するいわゆる夏鳥で、関東地方では、5〜7月ごろに、たとえば奥秩父や奥日光などでさえずりが聞けます。
今日、裏山で鳴いていたエゾムシクイもこれからもっと北であったり、もっと標高の高い場所にある森林の繁殖地を目指して移動の途中に立ち寄ったものでしょう。このエゾムシクイに限らず、ゴールデンウィーク前後の渡りの時期には、普段その地域では観察できない鳥の種が通過してゆき、また今回のように美しい囀りを聞かせてくれることもあるので、思いがけず得をした気持ちになるものです。

(注) 外国から渡り鳥が飛んでくると聞いて、鳥インフルエンザを運んでくるのではと心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、特にエゾムシクイを含む陸棲の小鳥類については、鳥インフルエンザウィルスに対する感受性がきわめて低く、鳥インフルエンザとは基本的に無関係なものと考えられています。
「高病原性鳥インフルエンザ ツバメの営巣・えさ台の小鳥は心配いりません」もご覧ください。
山階鳥類研究所の「鳥インフルエンザ」トップページはこちらです。

バードウィーク手賀沼探鳥会が5/12(日)に開催されます

bw01b5月10日〜16日はバードウィークです。恒例の手賀沼探鳥会が開催されます。少人数のグループに分かれて指導者が解説しますので、初心者の方も安心してご参加ください。
このイベントは「Enjoy手賀沼!」(Enjoy手賀沼実行委員会主催)の一環として開催されます。山階鳥類研究所はこのイベントを後援しています。

バードウィーク手賀沼探鳥会 in Enjoy!手賀沼2013
【日付】2012年5月12日(日)
【集合】手賀沼親水広場「水の館」前
午前8時30分受付開始 午前9時出発 正午ごろ解散(雨天の場合は鳥の博物館見学)
【コース】手賀沼遊歩道沿いの約3キロを鳥を観察しながら歩きます。
【定員】先着120人(小学生以下の方は保護者同伴)
【持ち物】筆記用具、雨具、あれば双眼鏡や図鑑
【参加費】無料
【主催・問合せ先】我孫子市鳥の博物館(04-7185-2212)、我孫子野鳥を守る会
【後援】山階鳥類研究所
山階鳥類研究所のイベント情報はこちらをご覧ください。
Enjoy!手賀沼についてはこちらをご覧ください。

5月のテーマトークは「画像で見る山階鳥類研究所の昔とゆかりの人たち」(5月11日(土))です

yio_nampeidai山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館で出前トークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」、5月は下記の要領で今週末です。
今回のトークでは、山階鳥類研究所の標本を集め、鳥の名前に名を残す「ヤマシナ」「クロダ」「オリイ」といった人たちはどんな人たちだったのか、写真で紹介します。また、大正から昭和初年に16ミリフィルムで撮影された、山階家の催しや東京渋谷にあった山階邸周辺の珍しい動画を紹介します。図書や標本を管理するセクションである、自然誌研究室の鶴見みや古室長がお話しします。
第25回「画像で見る山階鳥類研究所の昔とゆかりの人たち」
【講師】鶴見みや古 山階鳥研自然誌研究室長
【日付】5月11日(土)
【時間】13時15分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)
山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。
※ 写真は渋谷区南平台にあったころの山階鳥類研究所です。

戦前のトキの胃内容物写真、撮ったのは?/科学研究費(特定奨励費)補助金による研究/陸鳥の繁殖モニタリング調査 〜「山階鳥研NEWS」5月号

news_1305s山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」5月号が発行になりました。
この号では、塚本洋三特任研究員に、戦前のトキの胃内容物の写真の撮影者を探索したさいの苦労話を語ってもらいました。この写真はトキの野生での食性を記録した初期のものとしてしばしば引用されるもので、撮影者探索の結果は「山階鳥類学雑誌」最新号に発表になっています。また、この号では、昨年度から開始された、文部科学省科学研究費(特定奨励費)補助金による、全所的な研究プロジェクトの概略を紹介しています。さらに、これも昨年度スタートした陸鳥の繁殖モニタリング調査についての解説も掲載しました。これはカスミ網を用いて鳥類を捕獲する鳥類標識調査の手法によって、標準化されたやり方で、陸鳥類の繁殖状況や個体数の増減のトレンドを長期的に明らかにしようとするもので、昨年、福島県を含む6カ所の調査地でスタートしました。
「山階鳥研NEWS」2013年5月号 目次
表紙 バン 吉田正明(賛助会員)撮影
2面  トキの胃内容物の写真を撮ったのは、誰?
3面  文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)
「山階鳥類研究所データベースシステムの構築と公開
〜18世紀末から現在に至る鳥類相の変化をもとにその未来を予測する」
4面  平成25年度事業計画と収支予算/関西地区賛助会員の集いご案内
5面 野田市でコウノトリの飼育始まる/鳥獣類等の供養祭開催
6面 科研費補助金(特定奨励費)研究成果発表会
7面 陸鳥の繁殖モニタリング調査/山階鳥類学雑誌目次/テーマトークご案内
8面 事務局から/とりのことば
「山階鳥研NEWS」は、山階鳥研の活動や、鳥学研究や鳥の話題をやさしく紹介するニュースレターです。賛助会員に入会いただきますと、隔月でお送りいたします。
※賛助会員のご入会は「ご支援のお願い」をご覧ください。
山階鳥研NEWSのこれまでの号の目次はこちらです。

カラーフラッグつきのシギ・チドリ類の観察報告をお待ちしています〜 あなたの情報で鳥たちの渡り経路が解明されます 〜

dunlin_alaska_sゴールデンウィークも前半が終わり、今や、野鳥たちが繁殖地に向けて移動をする最盛期です。海辺の干潟では、シギやチドリの仲間たちが、南の越冬地から、極東ロシアやアラスカにむけての旅の途中、栄養補給のために羽を休めています。多くのバードウォッチャーの皆さんが観察のために干潟を訪れることと思います。
干潟を訪れるバードウォッチャーの皆さんにお願いですが、もし足に写真のようなカラーフラッグ等をつけたシギ・チドリ類をご覧になったら、ぜひ写真を撮影されるか、足のどの部位にどんな色彩と形状のフラッグ等をつけていたかを記録していただき、山階鳥類研究所までご報告をお願いいたします。
日本を含めた地域を通過するシギ・チドリ類の渡りルート、東アジア・オーストラリア・フライウェイは、アメリカ(アラスカ)、極東ロシア、中国、韓国、台湾、ニュージーランド等の国や地域が協力して、場所ごとにフラッグの色などの組み合わせを決めて調査されています。
山階鳥研には、この春の渡りのシーズンにもすでに日本各地から観察報告が寄せられており、海外でフラッグ等を装着された個体も見つかっています。
フラッグ等のついたシギ・チドリ類の報告の仕方についてはこちらをご覧ください。
皆様からお寄せいただいた、フラッグ等のシギ・チドリ類の観察データ(放鳥地別、2011年末まで。本年2月更新)はこちらをご覧ください。
「渡り鳥と足環」(足環によって移動や寿命等のデータを得る鳥類標識調査の紹介)ページトップはこちらです。
たくさんのご報告をお待ちしています。
※ 番号を刻んだ金属製の足環が、鳥をもう一度捕まえないと番号が読めないのに対して、こういったプラスチック製のカラーフラッグ(色つきの旗)やカラーリング(色足環)は、双眼鏡や望遠鏡の野外観察で、再度の捕獲なしに識別できます。このため、多くの個体が集まった場所で多くの方が観察する機会の多い水鳥などでは渡り経路の解明に適しており、鳥の体に負担にならない形状と重量に設計されたフラッグ等や足環を用いて調査が実施されています。
※ 画像は2013年4月19日に大阪府泉大津市で撮影されたハマシギです。アラスカのバロー付近でフラッグ等を装着された個体と考えられ、現在詳細を問い合わせ中です。この鳥は少なくとも一回は越冬地まで南下して、現在はふたたびアラスカに向けて北上中と考えられます(三谷一寿さん撮影)。

春恒例、標識調査講習会を行っています

koshukai_20134月17日から19日までの日程で、鳥類標識調査の従事者(バンダー)になるための講習会を実施しています。鳥類標識調査は、鳥類の移動や寿命などを番号つきの足環を使って調べる調査で、山階鳥研が環境省の委託を受けて実施しています。
今回参加したのは、北海道、関東、中部、近畿、中国、九州からの合計9名です。参加者は、資格のあるバンダーのもとで一定のトレーニングを積んだ上で、山階鳥研の職員の野外調査に同行して実技の講習を受けて今回の講習会に臨んだもので、標識調査の概要や鳥の分類、関連法規などの講義を受けています。
現在、全国で約450名が調査に従事しており、今回受講している9名も審査に合格すれば、8月からバンダーとして調査に参加する予定です。
標識調査のあらまし(「渡り鳥と足環」)はこちらをご覧ください。

4月のテーマトークは「ヤキトリの鳥類学」(4月13日(土))です

themetalk_yakitori山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館で出前トークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」、4月は下記の要領で今週末です。
老若男女に愛されているヤキトリは、ニワトリという鳥のパーツです。ご存知のようにニワトリはほとんど飛ぶことができませんが、祖先である東南アジアの野鳥セキショクヤケイは飛ぶことができ、子孫であるニワトリも飛ぶための体の基本構造をしっかりと引き継いでいます。砂肝はなぜコリコリしているかなど、ヤキトリについて学ぶことで、鳥はどのような体の仕組みで飛ぶことができるのかについての洞察を得たいと思います。自然誌研究室専門員の平岡考がお話しします。
第24回「ヤキトリの鳥類学」
【講師】平岡考 山階鳥研自然誌研究室専門員
【日付】4月13日(土)
【時間】13時15分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)
山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。

「山階鳥類学雑誌」(第44巻2号)が発行されました

jyio_442山階鳥類研究所の学術雑誌「山階鳥類学雑誌」は年に2冊の発行ですが、2012(平成24)年度の第2号が3月30日付けで発行されました。
「今回は蔭山麻里子さんから、『東日本放射能汚染地域より採集された動物標本・試料の取り扱いと保管についての技術的助言』と題して、投稿いただきました。山階鳥類研究所では、日頃から鳥類標本を取り扱っている関係から、研究所のほうから執筆を依頼したものです。特別寄稿として掲載させていただくことができましたこと、心からお礼申し上げます。また、今回は、白井さんのアオサギ、新田・早川さんのオシドリといった長年にわたる野外調査に基づいた貴重な研究についても掲載することができました。」(編集長の中村浩志信州大学名誉教授の編集後記から)
山階鳥類学雑誌 第44巻2号(No. 128)
● 特別寄稿
蔭山麻里子:東日本放射能汚染地域より採集された動物標本・試料の取り扱いと保管についての技術的助言 p.49
● 原著論文
三上 修,高橋雅雄:湿性草原の環境変化に対する鳥類の応答:仏沼干拓地における1998年と2010年の比較 p.67
白井 剛:個体識別したアオサギの繁殖コロニーへの執着性と長期的な繁殖履歴(英文) p.79
● 報告
福田道雄:飼育下のウミネコの年齢による尾羽模様の変化 p.93
岡 奈理子,渡辺ユキ,佐藤文男:伊豆諸島鳥島のクロアシアホウドリPhoebastria nigripes亜成鳥2羽の死因 p.97
新田啓子,早川いくこ:オシドリ雌の行動パターンから営巣木を発見する方法と巣立ち日予測に関して p.102
塚本洋三,鶴見みや古:トキの胃内容物(佐渡1933年採取)の写真撮影者の特定および関連する二・三の知見 p.107
● 書評 p.113
● 投稿論文校閲者一覧 p.115
● 投稿される方へ p.116
● 投稿される方へ(英文) p.121
「山階鳥類学雑誌」は、鳥類の研究論文を掲載する学術雑誌です。1952年に「山階鳥類研究所研究報告」のタイトルで創刊され、2003年に現在の誌名に改めました。山階鳥研の研究論文を掲載するとともに、所外の研究者の研究発表の場としても貢献しています。
賛助会員に入会され、「山階鳥類学雑誌」を購読するコースを希望された方にお送りしています(そのほかに広報紙「山階鳥研NEWS」を購読するコースもあります)。
※ 山階鳥類学雑誌の解説はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌の目次(1992年以降)はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌掲載論文(刊行後2年を経過したもの)のPDFはこちらです。
※ 賛助会員のご案内はこちらです。

桜咲きフクロウ鳴く春の我孫子

oshima_zakura_s2_3初夏のように暖かだったり、花冷えという言葉がぴったりの寒さだったり気温がまちまちで毎日何を着てでかけようか困りますね。
さて、先週金曜日の20時半すぎごろ、山階鳥類研究所の近所でフクロウが鳴いていました。
【音声】フクロウの声(風で木立がそよぐ音が入っています)(2013年3月29日 我孫子市内、1分15秒)

フクロウは日本全国で周年生息するいわゆる「留鳥」です。「ホウホウ、ゴロスケホウホウ」という声は、「五郎助ほうほう」だったり、「ぼろ着て奉公」「糊付け干せ」など、いろいろな「聞きなし」が全国にあり、農村地帯では昔からとても身近な存在だったのでしょう。
「ゴロスケホウホウ」と鳴くのは雄で、繁殖期が始まった1〜2月には鳴き始めます。フクロウがこうやって繁殖するのは餌のノネズミ類(人家のネズミとは別の種類です)や小鳥類が多く、営巣環境である大木のある、一言で言えば豊かな里山が保全されているしるしです。我孫子周辺でも、山階鳥研が移転してきてまもない20年ほど前には何カ所かフクロウの声の聞こえる場所がありましたが、近年だいぶ減ってしまいました。夜の木立から聞こえてくる威厳のある太い声を聞くと、日本人がいろいろな聞きなしをして親しんできたこの声を、次の世代のこどもたちも普通に聞いて育つことができる環境が守られることを願わずにはいられません。

関東南部でもう一種類声が聞かれるフクロウの仲間、アオバズクの話題はこちらです。