小笠原群島聟島列島にアホウドリを再導入するプロジェクトで、昨年11月に初めて産卵が確認されたことをこのブログでもご報告していましたが、メスが巣を飛び立って以来、抱卵の交代に戻らず、年が変わってもオス一羽で抱卵している状態が続いていました。
これまでは親鳥の抱卵を妨害しないことを優先して距離をおいての観察を続けていましたが、本日(1月17日)が孵化予定日であることから、小笠原で観察中の出口研究員が卵の状態を確認しました。その結果、発生が見られず、未受精卵と考えられましたので、本日報道発表しました。この卵は回収し、もちかえって成分分析等を行う予定です。
報道発表資料(1月17日)はこちらです。
昨年末の産卵については多くの皆さんに喜んでいただき、お祝いの言葉をいただきましたが、アホウドリに限らず、野生鳥類では産卵すれば繁殖が必ずうまくゆくというわけではありません。さまざまな事故もありえますし、特に繁殖に不慣れな若い個体では、受精していない、受精はしても抱卵が不慣れで発生が進まないなどいろいろな障害がおこります。
「這えば立て、立てば歩めの親心」と言いますが、性急に結果を求めたり、そのときそのときで起こることに一喜一憂したりせずに、人が手伝わなくてもアホウドリが繁殖を続ける場所を聟島に作るという最終目標の達成に向けて、長い目で経過を観察し、必要に応じて対策を立ててゆくことが大切です。
聟島からは2008年から2012年に人工飼育したアホウドリが69羽巣立っていますので、今年、来年とこれからまだ繁殖予備軍の個体が次々と帰還することが期待されています。いろいろなできごとが起こりながらも、聟島にアホウドリの繁殖個体群が根づく日が必ず来ると思います。引き続きご注目いただき、応援いただけますようお願いいたします。
山階鳥類研究所のアホウドリのウェブページ「アホウドリ 復活への展望」はこちらをご覧ください。