山階鳥研のすぐ目の前に広がる手賀沼沿いにある遊歩道の桜並木に、ふだんは見慣れない鳥がとまっています。
この鳥はツツドリといって、日本には夏鳥として、つまり初夏に繁殖のために渡ってくる鳥です。日本の山地の森林での繁殖を終えて、東南アジアなどの越冬地への旅立ち前に、平野部を通過してゆくのです。
山登りをする方は、5月から6月のころ、緑の深い森のなかから、ポポ、ポポ、・・・というこの鳥の声がするのを聞かれたことがあるでしょう。この鳥はカッコウ科という、カッコウやホトトギスの仲間で、カッコウやホトトギスと同様、自分では巣を作らず、他の種の鳥の巣に卵を産みこんで育てさせる「托卵」という習性を持っています。
カッコウの仲間の鳥たちはガの幼虫(毛虫)が好物です。このツツドリがとまっているサクラの木も、毛虫のせいで、丸坊主になってしまっているのが写真でおわかりと思います。
毛虫がたくさんいて、彼らにはご馳走なのでしょう、遊歩道にはあちらこちらと何羽もツツドリがいるようです。地元の熱心な鳥好きの方たちによるとホトトギスも観察されたとのこと。この仲間は姿が互いにそっくりで、識別に役立つ声も今は出すことがなく、見分けが非常に難しいのですが、そこがまたたまらない、という鳥好きもいそうです。
これから南の越冬地へ旅立つカッコウ類たちの毛虫パーティはひとときのこととは思いますが、いつごろまで見られるでしょうか。個体が入れ替わっているのか、同じ個体が長くいるのかなども興味深いところです。
※ 「トケン(杜鵑)」とはホトトギスのことで、杜鵑類とは、現在はカッコウ科と言われているこの仲間の古い呼び方です。