月別アーカイブ: 2019年9月

鷹ひとつ見つけてうれしこうの山(2019)

台風15号で被災された皆様、停電が続いている地域の皆様にお見舞い申し上げます。「千葉が大変だそうだが、我孫子は大丈夫なのか」とのご連絡もいただいていますが、千葉県北西部は停電しておらず、山階鳥研も平常業務を行っています。9月13〜16日には比較的近い、東京の北千住にある帝京科学大学で日本鳥学会大会が行われ、所員が多数参加しました。

さて、今日9月18日には山階鳥研にちょっと珍しいお客様が来所しました。タカの仲間のサシバです。写真は山階鳥研の通用口のすぐ外側の道路の電柱にとまったようすです。

サシバは、ハシボソガラスほどの大きさで、世界的にはユーラシア大陸の東部で繁殖する種です。日本では東北から九州で繁殖します。日本のサシバは近年大幅に数を減らしていることが報告されていて、現状の把握や原因究明が必要なのですが、それでもまだ、日本で繁殖するタカの仲間ではもっとも身近な種のひとつと言ってよいでしょう。

サシバは渡りをするタカで、南西諸島、中国南部、東南アジアで越冬します。秋の渡りの時期には国内で、多数のサシバが越冬地に向けて飛ぶのを観察できる場所が何カ所か知られており、バードウォッチャーが多数集まります。

じつはサシバがとまっているのが山階鳥研の敷地から観察されたことは、2013年9月27日にもありました。この時もブログで、同じ「鷹ひとつ見つけてうれしこうの山」というタイトルでご紹介しました。これは、松尾芭蕉「笈の小文」所収の俳句「鷹一つ見付てうれしいらご崎」のもじりです。「高野山(こうのやま)」は山階鳥研のある場所の地名ですが、芭蕉の句にある「いらご崎」(愛知県・伊良湖崎)は現代のバードウォッチャーもタカの渡り観察に集まる名所のひとつです。

こうやって山階鳥研でも9月にサシバが観察できるのはやはり、秋の渡りのために移動しているのだと思います。折からの雨でこのサシバも今日は停滞を決め込んだのかもしれませんが、明日は天候が回復するようですので、越冬地にむけて旅を再開することでしょう。

日本で繁殖する海鳥類の長期的な個体数変化を調べたところ、ウミネコやオオセグロカモメのような広く分布して数が多いと思われていた種類も減少していました

山階鳥研の富田直樹 研究員と佐藤文男 研究員(現・フェロー)は、北海道大学大学院地球環境科学研究院の先崎理之 助教、同水産科学研究員の綿貫豊 教授らの研究グループに参加して、日本で繁殖する海鳥10種類の過去36年間の個体数変化を解析しました。その結果が論文として発表されましたので、この9月2日にこのことについて北海道大学と山階鳥研の共同でプレスリリースを行いました

海鳥の個体数は世界的に長期的に減少し続けており、日本で繁殖している海鳥40種についても半数以上の22種類が環境省レッドリストの絶滅危惧種に指定されています。ですが、日本産の海鳥類の個体数が長期的にどのように変化してきたかは詳しく分かっていませんでした。

今回の研究の結果、ウミガラスやエトピリカといった絶滅危惧種だけでなく、ウミネコやオオセグロカモメといった分布が広く個体数が多いと思われていた種類も長期的に減少していることが明らかになりました。

佐藤研究員(現・フェロー)、富田研究員らは環境省の「モニタリングサイト1000」の一環として島嶼の海鳥の繁殖地の調査を行ってきており、結果は環境省の日本海鳥コロニーデータベースに反映されています。今回の分析はこのデータベースのデータに基づいて実施されました。

研究論文は、Senzaki, M. et al. (2019) Long-term declines in common breeding seabirds in Japan. Bird Conservation International, pp. 1-13.  として2019年8月29日に発表されました。

※ 画像は、今回の分析で長期的な減少が認められた4種(ウミガラス(左上)、エトピリカ(右上)、ウミネコ(左下)、オオセグロカモメ(右下))です。

不思議の国のアリスでも有名、モーリシャスドードーの模型の展示は名古屋市科学館で残すところあと4日です!

9月8日(日)まで名古屋市科学館で開催されている特別展「絶滅動物研究所」に山階鳥研は協力しています。

同展では、山階鳥研の所蔵品から、有名な絶滅鳥モーリシャスドードーの模型のほか、山階鳥研が行ってきた絶滅危惧種アホウドリの保護活動で使われた、アホウドリのデコイ(アホウドリをおびき寄せるために作った実物大の模型)と音声、アホウドリのヒナを移送する運搬箱が展示されています。

この特別展は、絶滅動物や絶滅危惧種の保全の取り組みを紹介するもので、上記のほかにもニホンオオカミやニホンカワウソの剥製標本などさまざまな動物の標本が見られるほか、種の保存の取り組みについても学ぶことができます。

「絶滅動物研究所」
【日時】2019年7月6日(土)〜9月8日(日)
【休館日】毎週月曜日(7月15日(月)、8月12日(月)は開館)、 7月16日(火)、7月19日(金)、9月3日(火)、9月4日(水)
【場所】名古屋市科学館
【主催】名古屋市科学館、中京テレビ放送
【協力】山階鳥類研究所ほか
【詳細】イベント公式サイトはこちらです。