台風15号で被災された皆様、停電が続いている地域の皆様にお見舞い申し上げます。「千葉が大変だそうだが、我孫子は大丈夫なのか」とのご連絡もいただいていますが、千葉県北西部は停電しておらず、山階鳥研も平常業務を行っています。9月13〜16日には比較的近い、東京の北千住にある帝京科学大学で日本鳥学会大会が行われ、所員が多数参加しました。
さて、今日9月18日には山階鳥研にちょっと珍しいお客様が来所しました。タカの仲間のサシバです。写真は山階鳥研の通用口のすぐ外側の道路の電柱にとまったようすです。
サシバは、ハシボソガラスほどの大きさで、世界的にはユーラシア大陸の東部で繁殖する種です。日本では東北から九州で繁殖します。日本のサシバは近年大幅に数を減らしていることが報告されていて、現状の把握や原因究明が必要なのですが、それでもまだ、日本で繁殖するタカの仲間ではもっとも身近な種のひとつと言ってよいでしょう。
サシバは渡りをするタカで、南西諸島、中国南部、東南アジアで越冬します。秋の渡りの時期には国内で、多数のサシバが越冬地に向けて飛ぶのを観察できる場所が何カ所か知られており、バードウォッチャーが多数集まります。
じつはサシバがとまっているのが山階鳥研の敷地から観察されたことは、2013年9月27日にもありました。この時もブログで、同じ「鷹ひとつ見つけてうれしこうの山」というタイトルでご紹介しました。これは、松尾芭蕉「笈の小文」所収の俳句「鷹一つ見付てうれしいらご崎」のもじりです。「高野山(こうのやま)」は山階鳥研のある場所の地名ですが、芭蕉の句にある「いらご崎」(愛知県・伊良湖崎)は現代のバードウォッチャーもタカの渡り観察に集まる名所のひとつです。
こうやって山階鳥研でも9月にサシバが観察できるのはやはり、秋の渡りのために移動しているのだと思います。折からの雨でこのサシバも今日は停滞を決め込んだのかもしれませんが、明日は天候が回復するようですので、越冬地にむけて旅を再開することでしょう。
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新緑の中を移動してゆくセンダイムシクイ
山階鳥研のある我孫子ではツバメが去年の巣場所に戻って、巣の前の電線などでさかんに囀っています。皆様のお住まいの近くはいかがでしょうか?
一昨日4月17日と昨日4月18日、山階鳥研に接した林で、センダイムシクイのさえずりが聞かれました。
センダイムシクイは、スズメよりやや小さい、ウグイスによく似た黄緑色の鳥で、極東ロシアや中国東北地方、朝鮮半島、日本などで春から初夏に繁殖し、冬は東南アジアに渡って過ごします。日本では北海道から九州までの低山の落葉広葉樹林などで繁殖するいわゆる夏鳥です。我孫子の林でさえずりが聞かれるのは、越冬地から繁殖地への移動の途中に立ち寄ったものです。我孫子を通過するものがどこで繁殖するのかを知るのは難しいですが、これから日本の山地にある繁殖地に渡るのかもしれません。繁殖地にたどり着いたら雄は早速雌にアピールするためにさえずるのですが、そのためかどうか、すでに移動の途中からさえずっているのです。
鳥の鳴き声が、意味のある人の言葉を言っているように聞くのを「聞きなし」と言います。センダイムシクイのさえずりは、片仮名で書くと「チヨチヨビ〜ィ」と書くことができますが、聞きなしとして、「焼酎一杯ぐ〜い」という有名なものがあります。録音してみたので、そんなふうに聞こえるか聞いてみてください。1つめの録音では全部で5声聞こえます。1声めと2声め、3声めと4声めが互いに接するように聞こえるのは、おそらく2個体の雄がいてそれぞれ囀っているのだと思います。ほかにメジロのさえずり、大型ツグミ類の地鳴き、キジバトの鳴き声などが聞こえます。1つめの録音は他の鳥の声がいろいろ聞こえますので、2つめの録音はセンダイムシクイのさえずりだけが聞こえる部分を切り出しました。
【音声】センダイムシクイのさえずり(メジロ、大型ツグミ類、キジバトなどと一緒に。2017年4月17日、約30秒)
【音声】センダイムシクイのさえずり(2017年4月17日、約13秒)
これから、ゴールデンウィーク明けぐらいまで、さまざまな小鳥類などが、東南アジアなどの越冬地から繁殖地へ向かう途中で、平野部や都市部の思いがけない小さな緑地などに立ち寄ってほんの1日だったり数日だけさえずりを聞かせてくれます。この春はほかにどんな鳥たちが通過してゆくのか楽しみにしています。
【参考】「新緑の我孫子 エゾムシクイのさえずり」は、2013年5月にやはり山階鳥研でさえずりが聞かれた,センダイムシクイに近縁の同じく夏鳥、エゾムシクイの鳴き声に関する記事です。
※ 写真にはセンダイムシクイは写っていません。
またの名をトケン類、カッコウの仲間が、越冬地への旅立ち前に無言のまま我孫子を通過してゆきます
山階鳥研のすぐ目の前に広がる手賀沼沿いにある遊歩道の桜並木に、ふだんは見慣れない鳥がとまっています。
この鳥はツツドリといって、日本には夏鳥として、つまり初夏に繁殖のために渡ってくる鳥です。日本の山地の森林での繁殖を終えて、東南アジアなどの越冬地への旅立ち前に、平野部を通過してゆくのです。
山登りをする方は、5月から6月のころ、緑の深い森のなかから、ポポ、ポポ、・・・というこの鳥の声がするのを聞かれたことがあるでしょう。この鳥はカッコウ科という、カッコウやホトトギスの仲間で、カッコウやホトトギスと同様、自分では巣を作らず、他の種の鳥の巣に卵を産みこんで育てさせる「托卵」という習性を持っています。
カッコウの仲間の鳥たちはガの幼虫(毛虫)が好物です。このツツドリがとまっているサクラの木も、毛虫のせいで、丸坊主になってしまっているのが写真でおわかりと思います。
毛虫がたくさんいて、彼らにはご馳走なのでしょう、遊歩道にはあちらこちらと何羽もツツドリがいるようです。地元の熱心な鳥好きの方たちによるとホトトギスも観察されたとのこと。この仲間は姿が互いにそっくりで、識別に役立つ声も今は出すことがなく、見分けが非常に難しいのですが、そこがまたたまらない、という鳥好きもいそうです。
これから南の越冬地へ旅立つカッコウ類たちの毛虫パーティはひとときのこととは思いますが、いつごろまで見られるでしょうか。個体が入れ替わっているのか、同じ個体が長くいるのかなども興味深いところです。
※ 「トケン(杜鵑)」とはホトトギスのことで、杜鵑類とは、現在はカッコウ科と言われているこの仲間の古い呼び方です。
年に一度のめぐりあい、今年も我孫子をアオバズクが通ってゆきます
2012年5月23日、2014年5月14日に通勤途上の千葉県我孫子市内でアオバズクが鳴いているのに会ったことをこのブログでご紹介していますが、また今年も残業帰りの帰宅途中にアオバズクの鳴き声を聞くことができました。
場所は3年前、昨年と同じ付近です。今年の個体は、昨年の個体のように落ち着いておらず、いつもの緑地と、すぐ近くを走る街道沿いのマンションの屋上など、ときにより場所を移りながら鳴いていました。
マンションの回りは緑や土が少なくて人工物に囲まれていますが、屋上のアンテナで鳴くと、人工物に囲まれている分、人間の耳には響きがよく感じられることもあり、鳴いているアオバズク自身もあんがい気持ちよいのかもしれません(本人(本鳥?)に聞いてみないとわかりませんが・・)。ただ街道沿いですので車の騒音がうるさいのが難点です。
こちらの録音は街道から少し外れた緑地でのものです。
【音声】アオバズクの声(2015年5月7日21時半ごろ 我孫子市内、59秒)
我孫子市内でもまだ繁殖している場所はあるかもしれませんが、この付近に限っていえば、今はアオバズクは繁殖していません。それでもこうして毎年のようにアオバズクに出会えるのはうれしいものです。
フクロウのヒナは飛べるようになっても餌ねだり
ちょっと日数が経ってしまいましたが、画像は我孫子市内の巣箱で巣立ったフクロウのヒナ、7月8日の姿です。
翼の羽毛は真羽(しんう)といって、大人の羽毛が生えそろっていますが、頭や胸はまだ綿羽(めんう)というぽやぽやの羽毛で、まだこれから真羽が生えてくるところです。
巣立ってからすでに6週間あまり、翼の羽毛が生えそろったヒナたちはもう飛ぶことができますが、実は親鳥の採ってきた餌をもらって育ててもらっているようです。
7月10日の晩のヒナたちの声を聞いてみてください。真っ暗な中での録音です(43秒)。
1箇所にとまって鳴き続けているだけなので、とても自分で餌は採っていなさそうです。おなか減ったよ〜と、餌を持ってきてくれるのを待っているのでしょうね。
この声で何羽いるでしょうか。3羽巣立ったわけですが、少なくともここに2羽はいるようですね。
ヒナたちはいつごろまで親がかりなのでしょうか?いつごろから自分たちで狩りをするのでしょうか?そういった疑問もわいてくるヒナたちの声でした。
※ フクロウの巣箱のようす(「5月の里山、生命が息づいています」)はこちらです。
※ フクロウの親鳥の声(「桜咲きフクロウ鳴く春の我孫子」)はこちらです。
【訂正】当初「巣立ってから2 週間あまり」としていたのは、「巣立ってから6週間あまり」の誤りでした。お詫びして訂正いたします。
今年もアオバズクに会うことができました
2年前の2012年5月25日に、我孫子市内で、青葉の頃に渡ってくるフクロウの仲間、アオバズクの声を聞いたことをブログ記事にしましたが、今年もまた、アオバズクに会うことができました。
5月14日、残業帰りに我孫子駅への道を急いでいると、前と同じにかすかに、ホウ、ホウ、・・という声が聞こえてきます。場所も聞こえ方も前と同じ感じです。これは前のあの場所ではと思いながら声の聞こえるほうに急ぐと、案の定、2年前と同じ、住宅に囲まれた小さな緑地でアオバズクが鳴いていました。
【音声】アオバズクの声(2014年5月14日 我孫子市内、1分49秒)
前もそうでしたが、繁殖にこれから入ろうというタイミングのせいか、本当に力いっぱい鳴いています。前回どうよう、おそらくこのまま通過して行ってしまうのでしょうが、この力の入れ方は、ここで相手が出てくればここに居着いて繁殖しようということなのかもしれません。
今回はよく見ると、茂った大木の途中に葉がない場所があって、窓状に向こうの空が見えるところに枝にとまったアオバズクがシルエットで見えます。上の画像の画面中央、枝が縦になって少し不自然に太くなったような箇所が見えるでしょうか。
この晩は相当長時間、鳴きつづけに鳴いていましたが、ためしに翌日の晩も行ってみたところ、案の定、鳴き声はいっさいしませんでした。東南アジアの越冬地からたどり着いて、これからもっと北上して繁殖するということなのかも知れません。
2年前の5月の記事(「目には青葉、アオバズク渡る我孫子」)はこちらです。
我孫子でもう1種鳴き声が聞かれるフクロウ科の鳥、フクロウの鳴き声(「桜咲きフクロウ鳴く春の我孫子」)はこちらです。
5月の里山、生命が息づいています
ついこの間まで寒いの大雪だのと言っていた気がしますが、冬越しをしていた鳥たちは徐々に旅立ち、里山の木々は芽吹き、林の地上では春の花たちがそっと咲いています。
こちらは我孫子の雑木林に咲いたギンラン。
こういった花たちを見下ろすように、雑木林にはフクロウの巣箱がかけられています。山階鳥研と我孫子市鳥の博物館の協力で架設されているものです。
下から見てもその中で小さな生命がはぐくまれているとはまったく気づきませんが、中では3羽の雛が親鳥の世話を受けて成長しているようすが、我孫子市鳥の博物館のウェブサイト(下記のリンク)からご覧になれます。
ふくろう巣箱カメラ(我孫子市鳥の博物館)<5月2日のアニメーション(時間を短縮しています)>
フクロウ巣箱カメラ トップ(我孫子市鳥の博物館)(カメラ設置の意義と注意点について説明しています)
木々の芽吹きとともに、南の国で冬越ししていた鳥たちが続々到着し、これから相手を見つけて繁殖しようとしているわけですが、フクロウのように、一年中この場所に住んでいる鳥たちはもう子育てに入っているのですね。季節がどんどん進んでいることを感じます。
フクロウ成鳥の鳴き声(「桜咲きフクロウ鳴く我孫子」)はこちらです。
昨年のフクロウのヒナのようす(「おんもへ出たいと待っている〜♪ 巣立ち間近のフクロウのヒナ」)はこちらです。
キジの来訪
鷹ひとつ見つけてうれしこうの山
暑さ寒さも彼岸まで、異常な暑さだった夏もやっと過ぎていったようですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、秋は鳥が南へ渡る季節。タカの渡りも9月中下旬には各地で観察され、多くのバードウォッチャーが観察スポットに集まったことと思います。
そんな南へ渡るタカの代表格であるサシバが今日、山階鳥研に1羽現れました。裏山の木のてっぺんにとまっているのを、所員が見つけたものです。
イベント記録用の、焦点距離のたいして長くないズームレンズで、半逆光の角度から撮影したので大変見づらくお恥ずかしいかぎりですが、拡大して見ていただくと、胸がべったりと赤褐色で、腹にかけては横斑があり、頭部はやや灰色っぽく、喉に太い縦斑が一本あり、蝋膜(嘴のつけねの裸出部)と目が黄色っぽいといったサシバの特徴がなんとかわかるかと思います。
サシバはハシボソガラスぐらいの大きさのタカで、おもな餌は、ヘビやカエル、昆虫類などです。春から夏に日本ではおもに本州、四国、九州の里山や低山で繁殖し、南西諸島や東南アジアまで渡って越冬します。冬に南に渡るのは、九州以北で冬にこういった餌を得るのは難しいためと考えられます。この個体も南へ渡る途中でひととき翼をやすめたものでしょう。これからどこまで飛んでゆくのでしょうか。来年も無事に帰ってくることを祈りたいと思います。
※ 表題は、松尾芭蕉「笈の小文」所収の「鷹一つ見付てうれしいらご崎」のもじり、「高野山(こうのやま)」は山階鳥研のある場所の地名です。
おんもへ出たいと待っている〜♪ 巣立ち間近のフクロウのヒナ 我孫子市内
山階鳥研の地元、我孫子市内に設置された巣箱で、今年もフクロウが子育てしました。先週末からいちばん大きなヒナが入り口から顔を出して、ときに愛らしい動作を見せています。
フクロウは、関東地方南部ですと、ゴールデンウィーク明け頃には巣立ちを迎える巣もあるようですが、よそでいろいろ聞く事例にくらべて、この巣箱の巣は例年かなり遅いようです。そのことに何かこの場所の環境などに関係した生態的な要因があるのか、ここの親鳥の個性なのかはわかりません。
フクロウの繁殖には餌が豊富な田園地帯や森林と、巣をつくるための樹洞のある大木が欠かせません。このうち、餌生物のいる環境はあるけれども繁殖できる大木がない場所では、巣箱をかけて巣の場所を提供してやることで、フクロウが増えることが可能になります。もちろんその大前提は巣箱で安心してフクロウが繁殖を成功させられることです。フクロウに限りませんが、みなさんも、営巣中の野鳥を見つけたら、鳥をびっくりさせて繁殖が途中でだめになってしまったりすることのないよう、そっとしておいてあげてください。
フクロウ成鳥の鳴き声(「桜咲きフクロウ鳴く我孫子」)はこちらです。
関東南部でもう一種類声が聞かれるフクロウの仲間、アオバズクの話題はこちらです。