御蔵島の生態系の保全/飛べないクイナ「ウェカ」/アホウドリ小笠原再導入で移送個体の繁殖を初確認/平成27年度事業計画〜「山階鳥研NEWS」5月号

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山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」5月号の内容をご案内します。

1月号でもご紹介した話題ですが、今号では、オオミズナギドリの世界最大の繁殖地、御蔵島で、ノネコの持ち出しプロジェクトを行っている岡奈理子主任研究員が、今年2月に行った活動について報告しました。また、ヤンバルクイナの保全のための情報収集を目的として、尾崎清明副所長とともにニュージーランドの飛べないクイナ「ウェカ」(ニュージーランドクイナ)の野生復帰状況を視察した渡久地豊さんに視察のようすをレポートしてもらいました。

さらに、アホウドリの小笠原再導入プロジェクトの大きな一歩、移送個体が初めて媒島(なこうどじま)で繁殖したニュースを掲載しました。

鳥にまつわる言葉を紹介する小コラム「とりのことば」、今号は「白鳥の歌」です。

「山階鳥研NEWS」2015年5月号 目次
1面 表紙写真(アカガシラサギ) 賛助会員 吉田正明
2面 オオミズナギドリと島の生態系の保全活動  上席研究員 岡奈理子
3面 飛べないクイナ「ウェカ」を訪ねて 標識調査協力調査員 渡久地豊
4面 アホウドリ小笠原再導入 移送個体の繁殖を初確認
5面 道北オホーツク海沿岸で観察されたアホウドリ/四国地区賛助会員報告
6面 平成27年度事業計画と収支予算
7面 イベント告知(関西地区賛助会員の集い/テーマトーク/バードウィーク手賀沼探鳥会/鳥の博物館25周年記念講演会/オープンフォレストin松戸)/山階鳥類学雑誌46(2)目次
8面 事務局から/とりのことば

「山階鳥研NEWS」は、山階鳥研の活動や、鳥学研究や鳥の話題をやさしく紹介するニュースレターです。賛助会員に入会いただきますと、隔月でお送りいたします。

※賛助会員のご入会は「ご支援のお願い」をご覧ください。
山階鳥研NEWSのこれまでの号の目次はこちらです。

「山階鳥類学雑誌」(第46巻2号)のご案内

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山階鳥類研究所の学術雑誌「山階鳥類学雑誌」は年に2冊の発行です。2015年3月20日付けで発行された、2014(平成26)年度の第2号についてご紹介します。

山階鳥類学雑誌 第46巻2号 (No. 132)
● 原著論文
山本誉士,河野裕美,水谷 晃,依田 憲: 仲ノ神島におけるオオミズナギドリの巣穴構造と繁殖個体数推定 pp.67-81

● 短報
黒沢令子,堀本富宏: 北海道胆振地方におけるカササギの分布の変遷 pp.83-88
栄村奈緒子,古谷 亘,安藤温子,出口智広: 小笠原諸島聟島の鳥類相のモニタリング ―自然再生事業による影響評価(英文) pp.89-100
出口翔大,千葉 晃,中田 誠: 海岸クロマツ林における繁殖期のアオジの植生構造に関連した生息場所選択 pp.101-107
河野裕美,水谷 晃: 日本におけるシロガシラカツオドリSula leucogaster brewsteri の初繁殖行動(英文) pp.108-118
川路則友,川路仁子: 北海道西部におけるツツドリCuculus optatus によるアオジEmberiza spodocephala 巣への赤褐色卵托卵例 pp.119-126

● 報告
姉崎 悟: 大東諸島北大東島で2013年7月に確認した鳥類 pp.127-140
新田啓子: オシドリ雄の雌への付き添い行動 pp.141-145

● 誌碑 pp.146-147
● 投稿論文校閲者一覧p.148
● 正誤表 p.149
● 投稿規定 pp.150-154
● 投稿規定(英文)pp.155-159

投稿規定の改訂<編集長の中村浩志信州大学名誉教授の編集後記から>)
「山階鳥類学雑誌の投稿規定が、この3月から改訂されることになりました。主な改正点は、原著論文と短報の扱いです。これまで両者は、はじめに、方法、結果、論議等の見出しを付けるか付けないかによって違いが分かるようにしてきましたが、考察や論議にあたるものは付けない報告とそれをつける短報との区別が極めて曖昧で、混乱が生じていました。そのため、短報にも原著論文と同様に論議等の見出しを付けることにしました。その上で、原著論文と短報の区別は、主に論文の長さによることにし、短報は印刷ページ数が10ページ以内を目安とすることにしました。
今後は、この新たな基準に従って原著論文、短報、報告のどのカテゴリーの論文かを明記して投稿していただくことになります。今回の号に掲載した一部の短報については、この新たな投稿規定に沿って論議等の見出しをつけましたので、参考にしていただけたらと思います。
これからも皆様からの投稿をお待ちしております。(中村浩志)」

「山階鳥類学雑誌」は、鳥類の研究論文を掲載する学術雑誌です。1952年に「山階鳥類研究所研究報告」のタイトルで創刊され、2003年に現在の誌名に改めました。山階鳥研の研究論文を掲載するとともに、所外の研究者の研究発表の場としても貢献しています。
賛助会員に入会され、「山階鳥類学雑誌」を購読するコースを希望された方にお送りしています(そのほかに広報紙「山階鳥研NEWS」を購読するコースもあります)。
※ 山階鳥類学雑誌の解説はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌の目次(1992年以降)はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌掲載論文(刊行後2年を経過したもの)のPDFはこちらです。
※ 賛助会員のご案内はこちらです。

リトアニア大使の訪問を受けました

ambassador_lithuania4月21日、エギディユス・メイルーナス駐日リトアニア特命全権大使が山階鳥研を訪れました。

大使が我孫子を訪れたのは、星野順一郎・我孫子市長を表敬訪問するためで、これは、リトアニアの大学との交流を進めている(公財)日本鳥類保護連盟を経由して、大使が、我孫子市で毎年開催されている「ジャパンバードフェスティバル(JBF)」に関心を持たれたことがきっかけで実現したものです。大使は表敬訪問のあと、我孫子市鳥の博物館と山階鳥類研究所を訪れました。

山階鳥研には約1時間滞在して、尾崎清明副所長ほかの案内で、標本収集やDNAを用いた研究、アホウドリの保護活動などについて説明を受けました。見学を終えた大使は、「山階鳥研を見学して、重要な活動を行っていることを知り感銘を受けた。本国の関係者にも伝えたい」と述べました。

※ 画像は尾崎清明・副所長(左手前)、鶴見みや古・自然誌研究室長(左奥)ほかから歓待を受けるメイル−ナス大使(右から2人め)。その隣(右から3人目)は室伏友三・日本鳥類保護連盟専務理事、右手前は北條政利・山階鳥研事務局長。

皇室番組から取材を受けました。4月12日(日)夜7時オンエアです。

koshitunomado_shootingBSジャパンの皇室番組「皇室の窓スペシャル」が、「~天皇ご一家のご入学物語~」という特集を組むということで打診があり、取材を受けました。

皇室の窓 スペシャル~天皇ご一家のご入学物語~
2015年4月12日(日)夜7時00分~夜8時54分
BSジャパン

2時間番組で、上記リンク先の箇条書きにあるとおり、内容は多岐にわたっていますが、山階鳥類研究所関係では、研究所の概略と、総裁の秋篠宮殿下のお仕事、黒田清子さん(紀宮殿下)のご研究について紹介される予定です。

上記の日程で放送になりますので、ぜひご覧ください。

※ 写真は取材をうける林良博所長のようすです。

4月のテーマトークは「飛べないクイナ類の保全状況-ヤンバル・ロードハウ・ニュージーランドクイナ-」(4月11日(土))です

weka_s関東地方はサクラの見頃を迎えていますが、皆さんのお近くはいかがでしょうか。

山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館でトークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」、4月は今週末、4月11日の開催です。尾崎清明 副所長・保全研究室長に飛べないクイナ類について話してもらいます。

沖縄島北部のやんばる地方に、ヤンバルクイナという飛べないクイナが棲息しており、絶滅の危機に瀕していることは多くの方がご存じでしょう。じつは、世界じゅうのあちこちの離島に、その島固有の飛べないクイナが棲息しています。これらの飛べないクイナはすでに13種が絶滅し、現存する20種もほとんどが絶滅の危機にあります。これは生息地の島に人間が持ち込んだ哺乳類等の捕食者の影響です。

ヤンバルクイナを絶滅の危機から救うために、世界のクイナの保全の事例を調査している尾崎副所長が、このヤンバルクイナと、近縁でやはり絶滅の危機にある飛べないクイナであるロードハウクイナ、ニュージーランドクイナ(ウェカ)について生態と最新の保全状況を紹介します。

第46 回「飛べないクイナ類の保全状況 —ヤンバル・ロードハウ・ニュージーランドクイナ—」
【講師】尾崎清明 山階鳥研副所長・保全研究室長
【日付】4月11日(土)
【時間】 13時30分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール
→ 交通案内
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】各回とも先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)

※ 山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。
※ 山階鳥研ウェブページ「ヤンバルクイナ その命名・生態・危機」はこちらです。
※ 画像は、生態調査のためにカラーリング(色足環)をつけたニュージーランドクイナです。

鳥島から移送したアホウドリの小笠原での初繁殖が確認されました

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<写真>媒島で確認されたアホウドリのヒナ(2014年5月撮影、東京都提供)

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<写真>上の写真のヒナの親であることが示されたつがい。Y11と刻印のある赤い色脚環を装着した左の個体が、2009年に鳥島から運ばれて人工飼育によって聟島から巣立った個体(2015年2月媒島で撮影、東京都提供)

山階鳥類研究所で伊豆諸島鳥島から小笠原に移送して人工飼育し、巣立ったアホウドリが、繁殖年齢に達して小笠原に戻り、繁殖が成功していたことが確認されました。

小笠原諸島媒島(なこうどじま)は、山階鳥研がアホウドリの再導入のプロジェクトの飼育地としていた聟島(むこじま)からおおむね5kmほど離れた島ですが、昨年5月にアホウドリと思われる巣立ち前のヒナ1羽が観察されていました。今年になって、同じ場所でヒナの親鳥と思われるつがいが観察され、その片方は色足環から山階鳥類研究所で2009年に聟島(むこじま)に移送して人工飼育し、巣立った個体であることが確かめられました。このたびヒナならびに親鳥のDNAを分析した結果、ヒナは、確かにこの移送個体の子であることがわかりました。小笠原へのアホウドリ再導入のプロジェクトによる最初の繁殖確認例となります。

昨日、環境省、東京都と同時で報道発表を行いました。

プレスリリース(3月26日付け)

再導入のプロジェクトは、過去にアホウドリの繁殖地があった小笠原諸島にふたたび繁殖地を作ることを目標にして行ってきたものですが、このための大きな一歩を進めることができました。ご支援いただいた皆様に感謝申し上げます。引き続きこのプロジェクトにご関心をお寄せいただき、ご支援いただけますようお願いいたします。

※ 山階鳥類研究所「アホウドリ復活への展望」(アホウドリ最新ニュース)はこちらです。

津波で被災した文化財・標本レスキューの報告書に所員が執筆しました

大津波被災文化財保存修復技術連繋プロジェクト_安定化処理s

明日で東日本大震災から4年が経つことになりますが、震災による津波によって被災した文化財・標本の修復活動についてまとめた報告書が昨年暮れに刊行になりましたのでご紹介します。

『大津波被災文化財保存修復技術連繋プロジェクト 安定化処理』
被災した保存修復技術の構築と専門機関の連携に関するプロジェクト実行委員会
赤沼英男・鈴木まほろ(編)
同実行委員会・(公財)日本博物館協会・ICOM日本委員会(発行)
2014年12月26日発行. 255pp. 210×299mm.
価格:1,500円(税込み)

この報告書では自然史標本も文化財と位置づけられ、さまざまな標本の修復技術についてまとめて紹介されています。このような書籍の刊行は国内では初めてと思われます。この中で、山階鳥研から岩見恭子研究員が、陸前高田市立博物館の鳥類標本の修復について報告しました(166-169ページ)。この修復活動は、三井物産環境基金2011年度東日本大震災復興助成を得ておこなったものです。

本書『大津波被災文化財保存修復技術連繋プロジェクト 安定化処理』は東京国立博物館のミュージアムショップでお求めになれます。

さらに、津波によって被災した標本や文化財の救出および修復活動についての展示が東京国立博物館で、3月15日(日)まで開催されており、上記の活動についてもパネルで紹介されています。

特別展「3.11大津波と文化財の再生」 
東京国立博物館 本館 特別2室・特別4室   開催中~ 2015年3月15日(日)

3月のテーマトークは「明治・大正期の鳥類標本—帝室博物館コレクション—」(3月14日(土))です

リュウキュウカラスバト改c啓蟄もすぎて、ここ我孫子の周辺でも少しずつ春の気配が感じられるようになってきましたが皆様いかがお過ごしでしょうか。

山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館でトークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」、3月は今週末、3月14日の開催です。小林さやか・専門員に帝室博物館の鳥類標本コレクションについて話してもらいます。

「東京帝室博物館」といっても何のことかわからないかもしれません。現在、上野公園の正面、科学博物館を脇に従えるようにしてにある、仏像や古い絵画を展示している東京国立博物館の前身です。「帝室」の言葉どおりこの博物館は、当時の宮内省の管轄する、天皇家の博物館でした。そして、東京帝室博物館は、今の東京国立博物館と違い、自然史標本も収集・所蔵する博物館だったのです。山階鳥研には明治・大正期に収集されたこの帝室博物館旧蔵の貴重な鳥類標本が保管されています。なかには絶滅した鳥類の標本が含まれています。当日は小林専門員がこれらの標本や歴史について紹介します。

第45 回「明治・大正期の鳥類標本 —帝室博物館コレクション—」

【講師】小林さやか 山階鳥研自然誌研究室専門員
【日付】3月14日(土)
【時間】各回とも 13時30分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール
→ 交通案内
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)

※ 山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。
※ 画像は東京帝室博物館旧蔵で、現在は山階鳥研所蔵の絶滅鳥リュウキュウカラスバトのタイプ標本(種の命名のさいに使った標本)です。

ムナグロの渡り/長時間の「保定」の影響/小笠原へのアホウドリ再導入/ウィーン自然史博物館と標本交換/JBF2014報告〜「山階鳥研NEWS」3月号

news_1503s山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」3月号が発行になりましたので、内容をご案内します。

鳥好きの方はそろそろ渡り鳥の春の渡りに思いを馳せていらっしゃるでしょう。暖かになって水を張った春の水田にはムナグロというチドリの仲間がたくさん翼をやすめて、栄養補給するともっと北の繁殖地に旅立ってゆきます。このムナグロ、逆に秋に南下するときにはあまり観察されません。どうなっているのでしょうか?最近の知見を紹介します。

鳥類を保全する目的のために近年ますます使用されるようになった発信器での調査、発信器装着のためにある程度の時間の保定が欠かせません。アホウドリのヒナで長時間の保定の影響について調べた結果をご報告します。

鳥にまつわる言葉を紹介する小コラム「とりのことば」、今号は「北帰行」です。

「山階鳥研NEWS」2015年3月号 目次
1面 
表紙写真(ミコアイサ、キンクロハジロ) 賛助会員 岡田政子
2面    明らかになってきたムナグロの渡り 広居忠量
3面    長時間の「保定」はどのくらい鳥の体に影響があるか  出口智広
4面 小笠原へのアホウドリ再導入/ウィーン自然史博物館と標本の交換
5面 「山階コレクション展」盛況裏に終了/橘川尚子さんに山階賞メダル贈呈
6面 JBF2014報告/全日本バードカービングコンクール鳥研所長賞報告/テーマトークご案内
7面 科学研究費補助金(特定奨励費)研究成果発表会開催/絵画コンテストで賞贈呈/事務局から(人事/賛助会員/ご寄附)
8面 事務局から(訃報)/とりのことば/編集後記

「山階鳥研NEWS」は、山階鳥研の活動や、鳥学研究や鳥の話題をやさしく紹介するニュースレターです。賛助会員に入会いただきますと、隔月でお送りいたします。
※賛助会員のご入会は「ご支援のお願い」をご覧ください。
山階鳥研NEWSのこれまでの号の目次はこちらです。