4月17日から19日までの日程で、鳥類標識調査の従事者(バンダー)になるための講習会を実施しています。鳥類標識調査は、鳥類の移動や寿命などを番号つきの足環を使って調べる調査で、山階鳥研が環境省の委託を受けて実施しています。
今回参加したのは、北海道、関東、中部、近畿、中国、九州からの合計9名です。参加者は、資格のあるバンダーのもとで一定のトレーニングを積んだ上で、山階鳥研の職員の野外調査に同行して実技の講習を受けて今回の講習会に臨んだもので、標識調査の概要や鳥の分類、関連法規などの講義を受けています。
現在、全国で約450名が調査に従事しており、今回受講している9名も審査に合格すれば、8月からバンダーとして調査に参加する予定です。
標識調査のあらまし(「渡り鳥と足環」)はこちらをご覧ください。
月別アーカイブ: 2013年4月
4月のテーマトークは「ヤキトリの鳥類学」(4月13日(土))です
山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館で出前トークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」、4月は下記の要領で今週末です。
老若男女に愛されているヤキトリは、ニワトリという鳥のパーツです。ご存知のようにニワトリはほとんど飛ぶことができませんが、祖先である東南アジアの野鳥セキショクヤケイは飛ぶことができ、子孫であるニワトリも飛ぶための体の基本構造をしっかりと引き継いでいます。砂肝はなぜコリコリしているかなど、ヤキトリについて学ぶことで、鳥はどのような体の仕組みで飛ぶことができるのかについての洞察を得たいと思います。自然誌研究室専門員の平岡考がお話しします。
第24回「ヤキトリの鳥類学」
【講師】平岡考 山階鳥研自然誌研究室専門員
【日付】4月13日(土)
【時間】13時15分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)
山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。
「山階鳥類学雑誌」(第44巻2号)が発行されました
山階鳥類研究所の学術雑誌「山階鳥類学雑誌」は年に2冊の発行ですが、2012(平成24)年度の第2号が3月30日付けで発行されました。
「今回は蔭山麻里子さんから、『東日本放射能汚染地域より採集された動物標本・試料の取り扱いと保管についての技術的助言』と題して、投稿いただきました。山階鳥類研究所では、日頃から鳥類標本を取り扱っている関係から、研究所のほうから執筆を依頼したものです。特別寄稿として掲載させていただくことができましたこと、心からお礼申し上げます。また、今回は、白井さんのアオサギ、新田・早川さんのオシドリといった長年にわたる野外調査に基づいた貴重な研究についても掲載することができました。」(編集長の中村浩志信州大学名誉教授の編集後記から)
山階鳥類学雑誌 第44巻2号(No. 128)
● 特別寄稿
蔭山麻里子:東日本放射能汚染地域より採集された動物標本・試料の取り扱いと保管についての技術的助言 p.49
● 原著論文
三上 修,高橋雅雄:湿性草原の環境変化に対する鳥類の応答:仏沼干拓地における1998年と2010年の比較 p.67
白井 剛:個体識別したアオサギの繁殖コロニーへの執着性と長期的な繁殖履歴(英文) p.79
● 報告
福田道雄:飼育下のウミネコの年齢による尾羽模様の変化 p.93
岡 奈理子,渡辺ユキ,佐藤文男:伊豆諸島鳥島のクロアシアホウドリPhoebastria nigripes亜成鳥2羽の死因 p.97
新田啓子,早川いくこ:オシドリ雌の行動パターンから営巣木を発見する方法と巣立ち日予測に関して p.102
塚本洋三,鶴見みや古:トキの胃内容物(佐渡1933年採取)の写真撮影者の特定および関連する二・三の知見 p.107
● 書評 p.113
● 投稿論文校閲者一覧 p.115
● 投稿される方へ p.116
● 投稿される方へ(英文) p.121
「山階鳥類学雑誌」は、鳥類の研究論文を掲載する学術雑誌です。1952年に「山階鳥類研究所研究報告」のタイトルで創刊され、2003年に現在の誌名に改めました。山階鳥研の研究論文を掲載するとともに、所外の研究者の研究発表の場としても貢献しています。
賛助会員に入会され、「山階鳥類学雑誌」を購読するコースを希望された方にお送りしています(そのほかに広報紙「山階鳥研NEWS」を購読するコースもあります)。
※ 山階鳥類学雑誌の解説はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌の目次(1992年以降)はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌掲載論文(刊行後2年を経過したもの)のPDFはこちらです。
※ 賛助会員のご案内はこちらです。
桜咲きフクロウ鳴く春の我孫子
初夏のように暖かだったり、花冷えという言葉がぴったりの寒さだったり気温がまちまちで毎日何を着てでかけようか困りますね。
さて、先週金曜日の20時半すぎごろ、山階鳥類研究所の近所でフクロウが鳴いていました。
【音声】フクロウの声(風で木立がそよぐ音が入っています)(2013年3月29日 我孫子市内、1分15秒)
フクロウは日本全国で周年生息するいわゆる「留鳥」です。「ホウホウ、ゴロスケホウホウ」という声は、「五郎助ほうほう」だったり、「ぼろ着て奉公」「糊付け干せ」など、いろいろな「聞きなし」が全国にあり、農村地帯では昔からとても身近な存在だったのでしょう。
「ゴロスケホウホウ」と鳴くのは雄で、繁殖期が始まった1〜2月には鳴き始めます。フクロウがこうやって繁殖するのは餌のノネズミ類(人家のネズミとは別の種類です)や小鳥類が多く、営巣環境である大木のある、一言で言えば豊かな里山が保全されているしるしです。我孫子周辺でも、山階鳥研が移転してきてまもない20年ほど前には何カ所かフクロウの声の聞こえる場所がありましたが、近年だいぶ減ってしまいました。夜の木立から聞こえてくる威厳のある太い声を聞くと、日本人がいろいろな聞きなしをして親しんできたこの声を、次の世代のこどもたちも普通に聞いて育つことができる環境が守られることを願わずにはいられません。