月別アーカイブ: 2013年9月

鷹ひとつ見つけてうれしこうの山

sashiba_choken暑さ寒さも彼岸まで、異常な暑さだった夏もやっと過ぎていったようですが皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、秋は鳥が南へ渡る季節。タカの渡りも9月中下旬には各地で観察され、多くのバードウォッチャーが観察スポットに集まったことと思います。
そんな南へ渡るタカの代表格であるサシバが今日、山階鳥研に1羽現れました。裏山の木のてっぺんにとまっているのを、所員が見つけたものです。
イベント記録用の、焦点距離のたいして長くないズームレンズで、半逆光の角度から撮影したので大変見づらくお恥ずかしいかぎりですが、拡大して見ていただくと、胸がべったりと赤褐色で、腹にかけては横斑があり、頭部はやや灰色っぽく、喉に太い縦斑が一本あり、蝋膜(嘴のつけねの裸出部)と目が黄色っぽいといったサシバの特徴がなんとかわかるかと思います。
サシバはハシボソガラスぐらいの大きさのタカで、おもな餌は、ヘビやカエル、昆虫類などです。春から夏に日本ではおもに本州、四国、九州の里山や低山で繁殖し、南西諸島や東南アジアまで渡って越冬します。冬に南に渡るのは、九州以北で冬にこういった餌を得るのは難しいためと考えられます。この個体も南へ渡る途中でひととき翼をやすめたものでしょう。これからどこまで飛んでゆくのでしょうか。来年も無事に帰ってくることを祈りたいと思います。
※ 表題は、松尾芭蕉「笈の小文」所収の「鷹一つ見付てうれしいらご崎」のもじり、「高野山(こうのやま)」は山階鳥研のある場所の地名です。

聟島でアホウドリの人工飼育個体とつがいになって産卵したメスは尖閣諸島生まれである可能性が高いことがわかりました

albatross_nhkすでにメディアで報道されており、ご存じの方も多いと思いますが、聟島で回収されたアホウドリの卵の分析結果についてご報告します。
山階鳥類研究所では、絶滅危惧種アホウドリのいっそう確実な復活のため、伊 豆諸島鳥島のアホウドリのヒナを小笠原諸島聟島に移送し、新しい繁殖地を形成 する事業に取り組んでおります。
人工飼育により巣立った個体(オス)と野生個体 (メス)との間に 2012 年 11 月 14 日に初めて産卵があったことや、抱卵されていた卵の発生が進んでいなかったことはすでにご報告していますが、その卵を回収して採取したミトコンドリアDNAを分析した結果、卵を産んだメスが尖閣諸島で生まれた個体の可能性が高いことが示唆されました。
報道発表資料はこちらです(9月12日)
この研究は、北海道大学理学部の泉洋江氏、同大学総合博物館の江田真毅氏との共同研究として、2013年9月14日に日本鳥学会2013年度大会で発表しました。この事業は、環境省、東京都、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金ほかの支援をえて山階鳥研が実施しています。
※画像は手前がオス親(Y01)、奥がメス親。オス親の足もとにあるのが1月に回収して今回分析結果が出た初産卵の卵です。
山階鳥類研究所のアホウドリのウェブページ「アホウドリ 復活への展望」はこちらをご覧ください。

日本鳥学会大会2013年度大会が開催されます

ozaki_osj2012日本で最大の鳥類研究者団体である、日本鳥学会の2013年度大会が、9月13日〜16日の日程で、名城大学(名古屋市天白区)で開催されます。
【会期】2013年9月13日(金)~16日(月・祝日)
【会場】名城大学天白キャンパス 共通講義棟南
山階鳥研の職員はこちらの一覧表のとおり、口頭発表9件、ポスター発表9件、シンポジウムでの発表1件、1件の自由集会の主催とその中の話題提供などに参加します。
日本鳥学会2013年度大会の概要はこちらをご覧ください。会員以外の方でも、参加費を支払えば発表を聞くことが可能です。シンポジウム「鳥類がもたらす生態系サービス」は公開で行われ、シンポジウムのみの参加に参加費は不要です。ご関心のある方はぜひふるってご参加ください。
※ 画像は、昨年の大会での尾崎清明副所長の発表のようすです。

【開催日注意!】9月のテーマトークは「日本に生息するミソサザイに地理的な違いはあるか?」(9月21日(土))です

misosazai_02s関東ではやっと朝晩が涼しくなりましたがいかがお過ごしでしょうか。
山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館で出前トークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」ですが、今月は都合により、第3土曜日、9月21日に開催します。ご注意ください。
皆さんは「亜種」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ある鳥の種が、広い分布の中で地理的に少しずつ違いがあるとき、種の下のカテゴリとして亜種というものにわけることが行われます。今回はミソサザイの亜種のお話です。日本で繁殖するミソサザイは、現在3つの亜種に分けられていますが、以前はもっと細かく分けられていました。どのような分け方が妥当なのか、DNA塩基配列を調べてみた結果を浅井芝樹研究員がお話しします。
第29回 日本に生息するミソサザイに地理的な違いはあるか?
【講師】浅井芝樹 山階鳥研自然誌研究室研究員
【日付】9月21日(土)
【時間】13時15分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール → 交通案内
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)
山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。

発展途上国で生物多様性保全にかかわる行政担当者が研修しました

jica9月6日、国際協力機構(JICA)の「生物多様性情報システム」研修で8月上旬から約1ヶ月の日程で来日中の発展途上国の行政官が、山階鳥研を訪れ研修を行いました。
この研修は、重要で希少な種の主な生息地となっている発展途上国の、生物多様性保全に係る計画の企画・立案を担当する行政官に、生物多様性情報の収集・管理や、インターネット等を通じた普及について学んでもらい、この分野の人材育成に資する目的で実施されているものです。
研修したのは、アルゼンチン、コンゴ民主共和国、マレーシア、タイ、東ティモールから訪れた9名で、山階鳥研の概要と、標本や図書、DNA情報の収集管理、鳥類標識調査の概略とそれぞれから得られたデータのデータベースでの公開などにについてレクチャーを受け、標本と図書の管理状況を見学しました。

昨年度の質問対応から/キヤノン株式会社よりアホウドリ調査用撮影機材一式の寄贈/GBIFを介した国際情報発信〜山階鳥研NEWS 9月号

news_1309s03_3山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」9月号が発行になりました。
山階鳥研では昨年度1年間に、広報担当だけで626件の質問をいただきました。ほかに各部署の業務に関連した内容などは各部署に直接連絡をいただきます。またそれぞれの所員あてに直接質問をいただくこともあります。こういった広報担当以外への質問については統計がありませんが、これらを含めると所内全体での対応件数は年間800件以上にのぼるでしょう。今回は、広報担当によせられる質問への対応状況をご紹介しました。またキヤノン株式会社より撮影機材のご寄贈をいただいた件をご報告したほか、また、標本データの国際的情報発信としてGBIF(ジービフ)を経由した情報共有の取り組みも紹介しました。
鳥にまつわる言葉を紹介する小コラム「とりのことば」、今号は「ツイッター」です。
「山階鳥研NEWS」2013年9月号 目次
1面   表紙写真(ジョウビタキ) 賛助会員 宮 健夫
2-3面  昨年度の質問対応から
4面  キヤノン株式会社よりアホウドリ調査用機材一式を寄贈/GBIFを介した国際情報発信/ テーマトークご案内
5面  鳥学講座ご案内/見にレクチャー5ご案内
6面  関西地区賛助会員の集い開催しました/尾崎副所長が大仙市で講演
7面  鳥の骨展開催中/小笠原でアホウドリのパンフレット配布
8面  林所長が国立科博館長に就任/事務局から(賛助会員/ご寄附)/とりのことば/編集後記
「山階鳥研NEWS」は、山階鳥研の活動や、鳥学研究や鳥の話題をやさしく紹介するニュースレターです。賛助会員に入会いただきますと、隔月でお送りいたします。
※賛助会員のご入会は「ご支援のお願い」をご覧ください。
山階鳥研NEWSのこれまでの号の目次はこちらです。

アメリカの大学で研究している日本人研究者がセミナーを行いました

seminar_suzuki_yasuko今日来所したのは、オレゴン州立大学魚類・野生生物学科で博士研究員として仕事をされている、鈴木康子さんです。
セミナーは「米国コロンビア川における魚食性鳥類のサケ稚魚への食害と対策」というタイトルで、鈴木さんは、地元の漁業や釣りの重要な対象種であるサケ科の魚類にたいする、オニアジサシとミミヒメウによる食害について、科学的な方法で食害の状況を明らかにし、それぞれの種の生態に応じた対策を研究している状況を紹介しました。