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標識調査について知っていただくための冊子「渡り鳥の不思議を調べてみよう!鳥類標識調査の世界」が発行されました

鳥類標識調査は、野鳥に番号付きの足環などを装着して放すことで、渡り経路や寿命など野鳥のさまざまな生態についての情報を得ることのできる調査です。

このたび、標識調査とその成果をより広く知っていただくために、「渡り鳥の不思議を調べてみよう!鳥類標識調査の世界」(A5版20ページ)の冊子を作成しました。渡り鳥飛来地や足環のついた鳥が観察される自然観察施設などを中心にお役立ていただければと思います。

紙媒体の冊子をご希望の自然観察施設は、bmrc☆yamashina.or.jpまでご連絡お願いします(メール送信の際は☆を小文字の@に変更してください)。PDFは下記リンクからダウンロードしてください。

この冊子は、トヨタ自動車株式会社の「トヨタ環境活動助成プログラム」 の助成を受けて作成しました。

  >> 「渡り鳥の不思議を調べてみよう!鳥類標識調査の世界」(PDF)ダウンロード
  こちらも合わせてお読みください。
  >> 山階鳥研サイト「鳥類標識調査 仕事の実際と近年の成果」

<書籍情報>
書名: 渡り鳥の不思議を調べてみよう!鳥類標識調査の世界
編著・発行:公益財団法人山階鳥類研究所
判型/頁:A5判/20頁
発行日:2023年1月1日

小笠原諸島聟島で、伊豆諸島鳥島から移送して飼育して巣立たせた個体の孫に当たる世代の1羽の孵化が初めて確認されました

聟島で確認されたアホウドリの親(左:足環なし、右:Y75)とヒナ(第 3 世代、矢印)

小笠原諸島聟島で、伊豆諸島鳥島から移送して飼育して巣立たせた個体の孫に当たる世代の1羽の孵化が初めて確認されました。また、別に、移送個体の子の世代のヒナも1羽孵化し、初めて聟島で1シーズンに2羽が孵化しました。

新繁殖地である聟島で複数のヒナが誕生したのは初めてのことです。アホウドリは通常、巣立ち後 3〜5 年で出生地に戻り、つがいを作り、集団で営巣する習性があります。聟島で複数のヒナが誕生したことは、第3世代の誕生に合わせ、安定した新繁殖地の形成に向けて大きな進展となりました。

このことについて、2022年2月1日、東京都ならびに環境省と同時発表の形でリリースを行いました。

http://www.yamashina.or.jp/hp/p_release/p_release.html#20220201  

今日、7月5日は山階芳麿博士の誕生日です

※ 東海・関東地方の大雨による災害で亡くなられた皆様にお悔やみ申し上げますとともに、行方不明の皆様が一刻も早く救出されることをお祈り致します。また被災された皆様にお見舞い申し上げます。引き続いて降雨が予想されております。ご無事をお祈りいたします。どうぞお気をつけてお過ごしください。

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山階鳥研の創立者、山階芳麿は、121年前の今日、1900年7月5日に当時の東京市麹町で生まれ、鳥類の研究と保護に一生を捧げました。

戦前にはアジア・太平洋地域の鳥類の分類学に多大な貢献をした山階芳麿でしたが、戦後は鳥類保護に力点を移し、日本の鳥類保護のリーダーとして日本およびアジアの鳥の保全のために尽力しました。その中で、研究、保護を含め、海外の研究者や保護関係者との交流や情報交換も行いました。

写真は、1958年1月に、前年末にバンコクであった国際会議の帰途、日本に立ち寄った、アメリカ合衆国の鳥類研究者ロバート・クシュマン・マーフィ夫妻との東京での記念撮影の1コマです。マーフィ氏は、アメリカ自然史博物館に所属する海鳥研究の大家で、鳥類保護にも熱心に取り組んだ研究者です。アメリカ鳥学会(American Ornithologists’ Union)やナショナル・オーデュボン協会の会長を歴任しました。

山階芳麿は、この時のマーフィ夫妻の来日について書いた記事の中で、氏が海鳥研究の大家である一方で、「アメリカ第一流のコンサベーショニストである」と紹介しています。これに続けて、コンサベーショニストというと「保存する人」といった意味に取れるが、近年はアメリカ合衆国や欧米各国でひとつの特別な意味を持たせるようになってきた、すなわちコンサベーションは、「自然物を大切にし、これを利用する場合には自然のバランスを破壊しないように巧みに永続的にこれを利用する」という意味で、コンサベーショニストはこの実践の普及に努力する人であると解説しています(「野鳥」23巻2号p. 32., 1958)。

こういった海外の研究者や「コンサベーショニスト」との情報交換は、環境破壊や鳥類の減少を目の当たりにして、鳥類保護に取り組んだ山階芳麿自身の活動にも非常に大きな意味があったものと思われます。

※写真は、前列左から、黒田長禮(ながみち)、ロバート・クシュマン・マーフィ、グレース・マーフィ(夫人)。後列左から、鷹司信輔、徳見泰、中西悟堂、コーン中佐、黒田長久、山階芳麿が写っています。

※山階鳥研では、この写真も含め、従来、整理の手が回っていなかった、古い書類、書簡、写真などの資料類の整理に着手しています。

今日6/19は世界アルバトロスデーです

「世界アルバトロスデー」は、アホウドリ類・ミズナギドリ類の繁殖地を擁する13カ国が加盟した「アホウドリ類とミズナギドリ類の保全に関する協定(ACAP; Agreement on the Conservation of Albatrosses and Petrels; エイキャップ。未加盟の日本からは研究者や保護団体関係者がオブザーバーとして参加しています)が、同協定が2001年に初めて調印された日付である6月19日と定めて 2020 年から開始したもので、世界の海洋を生息地とするアホウドリ類が、漁業による混獲や海洋 汚染などの人間活動由来の原因によって危機にさらされていることから、国際的な協力を必要とするこの仲間の保全について普及啓発することを目的としています。

初めての世界アルバトロスデーだった昨年のテーマは「有害外来生物の根絶」でしたが、今年のテーマは「アホウドリにやさしい漁業の確立」です。そもそも、漁業の混獲(漁業で目的とする以外の生物が捕獲されること)で多数のアホウドリ類やミズナギドリ類などが命を落とすことへの対策の必要性の認識が、20年前にACAPが協定された主要な動機でした。このことは現在でも引き続きこの協定の主要な課題です。



世界アルバトロスデーは日本でも実行委員会が組織されており、山階鳥研も実行委員として参加しています。日本の実行委員会として、本日、記念イベントの開催を予定していましたが、新型コロナウイルス感染症拡大のため、会場イベントは中止となり、オンラインの特別講演会が開催されます。本日、長谷川博東邦大学名誉教授・NPO法人OWS会長、油田照秋山階鳥研保全研究室研究員ほかによる6題の講演が行われます。多数の皆様のお申し込みをいただき、申込は締め切りとなりました。大変ありがとうございました。

ヤンバルクイナ、ヘビから卵やヒナを守った!


写真を見てください。ヤンバルクイナが、沖縄の在来ヘビで、鳥も捕食するアカマタに脚を乗せています。間隔を空けて撮影する自動カメラの映像ですので、詳細が不明ですが、このあと、3羽のヒナが巣の外で無事な写真が撮影され、まさに孵化の途中だったヒナを捕食しようと巣に侵入してきたアカマタに対して、親鳥がなんらかの行動を取って捕食を回避したものと思われます。

この親鳥は、「再導入」(保全のために、いなくなってしまった場所に飼育下で増やした個体を放すこと)の技術確立のために、2019年9月に放鳥し、行動を追跡している個体です。関係者も、親鳥はこんな行動をするのかとびっくりしています。

ヤンバルクイナがこういった行動をするのは知られていないことから、山階鳥研では5月12日、この件について報道発表を行いました。

報道発表資料についてはこちらをご覧ください。

「山階鳥類研究所のこれまでと今後」が「私たちの自然」に掲載されました

(公財)日本鳥類保護連盟の機関誌「私たちの自然」3・4月号に尾崎清明・山階鳥研副所長が「山階鳥類研究所のこれまでと今後」という見開き2ページの記事を寄稿しています。

「私たちの自然」では、2021年が、1971年に環境庁(現在の環境省)が発足してから50年の節目の年であることから、本年1・2月号では「50年を振り返りこの先50年を考える」という特集を、さらに3・4月号で「日本の自然を支えてきた仲間たち」という特集を組んでおり、尾崎副所長の記事は後者の特集のために依頼があったものです。

尾崎副所長は記事の中で、創立者山階芳麿博士の「山階家鳥類標本館」を出発点とする沿革から説き起こし、1960年に東京で開催された国際会議、国際鳥類保護会議で、アジアでの鳥類標識調査の開始が勧告されたことを受けて、日本でも太平洋戦争によって中断されていた鳥類標識調査が1964年から再開され、成果が上がり、貴重な基礎データとして役立っていることを述べています。さらに、山階鳥研は、トキ、コウノトリ、アホウドリの保全、ヤンバルクイナの発見と保全といった希少鳥類の保全に関わり、重要な役割を果たしてきたことが紹介されています。創立当初から収集されてきた鳥類標本については、新たな技術によって、さまざまな研究の可能性があると述べ、最後に、さまざまな資料と長期間の野外調査データ、保全の経験などに立脚して、国際的連携を深めつつ、地球温暖化、生物多様性の喪失、新興感染症問題等への対応や、鳥類学の人材育成、情報公開にも貢献することが求められると結んでいます。

それぞれの特集は、下記のような記事からなっています。

特集「50年を振り返りこの先50年を考える」(「私たちの自然」1・2月号)
「鳥獣行政の50年を振り返って」(遠矢俊一郎)
「50年で変わった野鳥たち」(松田道生)
「鼎談 日本鳥類保護連盟の50年」(柳沢紀夫・名執芳博・藤井幹)

特集「日本の自然を支えてきた仲間たち」(「私たちの自然」3・4月号)
「日本野鳥の会の過去50年の歩みとこれから」(遠藤孝一)
「日本鳥学会の50年、そして未来へ」(上田恵介)
「日本自然保護協会の50年を振り返り、向こう50年を見通す」(亀山章)
「世界の自然環境の50年とこれからの未来に向けて」(東梅貞義)
「山階鳥類研究所のこれまでと今後」(尾崎清明)

「私たちの自然」は日本鳥類保護連盟の会員になると読むことができます(日本鳥類保護連盟のウェブサイトはこちらです)。

祝・我孫子市鳥の博物館開館30周年(2)

開館式のテープカット(1990年5月20日)

2020年もすっかり押し詰まってしまいましたが、今年は我孫子市鳥の博物館の開館30周年の記念の年でした。ここでは山階鳥研広報担当で保管している画像から、鳥の博物館開館前後の画像をご紹介します。

我孫子市鳥の博物館は、1984年に山階鳥研が東京都渋谷区から移転してきたことをきっかけに建設されたものです。もともとは山階鳥研の標本を展示する施設として構想されていましたが、後に独立した市の博物館の形に構想が変わりました。山階鳥研ではその構想策定や建設にあたって広範な協力をし、初代館長は所長の黒田長久が兼務しています。

都内からの移転先を探していた山階鳥研を誘致した我孫子市には、当時、市内の手賀沼が水質汚濁の全国の湖沼ワースト一位の記録を1974年から更新し続けていたという背景がありました。山階鳥研の誘致によって市民の環境意識を高めたいという意図があったことが当時の資料に書かれています。そして、山階鳥研の誘致をうけて、普及的な施設として鳥の博物館が建設されたのです。鳥の博物館と山階鳥研はそれ以来、現在に至るまで、各種の共催行事をはじめとして、相互に協力関係を保ちながら活動しています。

写真上は、1990年5月20日に行われた開館式のテープカットのようすです。向かって右から、黒田長久山階鳥研所長、浅野長愛山階鳥研理事長、沼田武千葉県知事(代理)、保利耕輔文部大臣(代理)、大井一雄我孫子市長、佐々木豊治我孫子市議会議長、足立俊領我孫子市教育委員長(いずれも肩書きは当時)という人たちがテープカットに臨んでいるのがご覧いただけます。

写真下は、鳥の博物館の建設現場のようすです(1989年頃)。

建設中の我孫子市鳥の博物館(1989年頃)

現在、開館30周年特別展示「日本の鳥」が開催されています。1月31日(日)までの開催ですが、年末年始は休館日がありますので、我孫子市鳥の博物館のウェブサイトでご確認の上お出かけください。

オオミズナギドリの大規模繁殖地の御蔵島において、ノネコが本種を数多く捕食している実態を明らかにしました

森林総合研究所、東京大学大学院農学生命科学研究科、山階鳥研の研究グループは、東アジア特産の海鳥オオミズナギドリの大規模繁殖地の御蔵島において、ノネコが本種を数多く捕食している実態を明らかにしました。論文が公開されましたので、昨日、プレスリリースを行いました。

御蔵島では1970年代後半には175万~350万羽のオオミズナギドリが繁殖していると推定されていましたが、近年では10万羽程度と急激に減少しています。その一因として、島に多数生息するノネコによる捕食が考えられていましたが、その実態はよくわかっていませんでした。

本研究の結果、オオミズナギドリの繁殖期には、ノネコの糞の約8割から本種の羽毛や骨などが検出され、ノネコ1匹あたり平均で年間313羽のオオミズナギドリを捕食していると推定されました。

これまでのオオミズナギドリの減少傾向と本研究で示されたノネコの捕食の実態から、御蔵島のオオミズナギドリ繁殖地がノネコの捕食圧で危機に直面していると考えられます。

プレスリリースはこちらをご覧ください(12/8付け)

論文PDFはこちらです。
Azumi, S., Y. Watari, N. Oka, and T. Miyashita, 2020. Seasonal and spatial shifts in feral cat predation on native seabirds vs. non-native rats on Mikura Island, Japan. Mammal Research. 


特別天然記念物・アホウドリに 2種が含まれることを解明し、論文発表しました

北海道大学総合博物館の江田真毅(えだ・まさき)准教授らと山階鳥研の研究グループは,伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島に由来する国の特別天然記念物・アホウドリの形態を比較し、鳥島タイプの鳥は尖閣タイプの鳥 よりほとんどの計測値で大きい一方,尖閣タイプの鳥のくちばしは相対的に長いことを解明しました。本研究で明らかになった形態的な違いと,これまでに知られていた遺伝的・生態的な違いから, 両タイプの鳥は別種とするべきと結論しました。このことを述べた論文が、このたび、国際的学術誌 Endangered Species Research 誌に2020 年 11 月 19 日(木)にオンライン公開の形で掲載され、北海道大学と山階鳥研では報道発表を行いました。

報道発表資料PDF『特別天然記念物・アホウドリに 2 種が含まれることを解明~伊豆諸島鳥島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」は別種としての保全が必要~』(2020年11月20日)はこちらです。

論文PDF Eda et al. 2020. Cryptic species in a Vulnerable seabird: short-tailed albatross consists of two species. Endangered Species Research, 43: 375-386. はこちらです。

この研究によって、両地域の「アホウドリ」は約 60 万年もの間、 異なる歴史を歩んできた別種であることがわかりました。かつては多数の島々で繁殖していたと考えら れる両種ですが、現在の繁殖地はそれぞれ鳥島と尖閣諸島に限られてしまっています。これまで考えら れていた以上に、希少な鳥であることは明らかです。今後、それぞれの独自性を保つことを念頭に置い た保全政策の実施が必要と考えられます。

今日、7月5日は山階芳麿博士の誕生日です

※ 九州地方の水害で亡くなられた皆様にお悔やみ申し上げますとともに、被災された皆様にお見舞い申し上げます。引き続き豪雨が予想されております。ご無事をお祈りいたします。どうぞお気をつけてお過ごしください。

今日は山階鳥研の創立者、山階芳麿の120回目の誕生日です。山階芳麿は、1900年7月5日に当時の東京市麹町で生まれ、鳥類の研究と保護に一生を捧げました。

戦前にはアジア・太平洋地域の鳥類の分類学に多大な貢献をした山階芳麿でしたが、戦後は鳥類保護に力点を移し、日本の鳥類保護のリーダーとして日本およびアジアの鳥の保全のために尽力しました。 

当時、日本ではトキなどの絶滅を回避するために、野外での保護と並行して、飼育下での人工増殖を行うという考えは一般的ではありませんでした。山階芳麿は、鳥類研究や保護の国際会議などの機会に、人工増殖を積極的に行っている海外の実情を視察し、その考えや実際の技術を日本で紹介することに努めました。

写真は、1977年に視察のために訪れたアメリカ合衆国ウィスコンシン州の国際ツル財団での一コマです。

※ 山階芳麿が人工増殖について海外の事情を視察したいきさつを述べた、「私の履歴書」第26回「人工増殖の必要性痛感 世界の学者からトキを憂う声」 はこちらをご覧ください。

※ 山階芳麿の生涯についてはこちらをご覧ください。