小笠原諸島のオガサワラカワラヒワを独立種とすることを提唱する研究成果を論文発表しました

山階鳥研の齋藤武馬研究員は、森林総合研究所、国立科学博物館の研究者ほかとの共同研究で、カワラヒワの亜種とされてきたオガサワラカワラヒワが独立種と考えるべきことを発見し、論文発表を行いました。

カワラヒワは日本のほか、中国、朝鮮半島、極東ロシア、サハリン、カムチャツカ半島にわたるユーラシア大陸の東端に分布する、一見スズメに良く似た、アトリ科という仲間に属する小鳥です。全体にオリーブ緑色で、翼と尾に鮮やかな黄色い斑があり、太くてピンク色の嘴をしており、日本国内の多くの場所で、名前のように河原や荒れ地、農耕地や林縁などの環境でありふれた鳥ですので、バードウォッチングされる方にもおなじみと思います。

このカワラヒワは、地理的に8つの亜種(同じ種の中の、地理的に区別されるグループ)に分けられていますが、全部の亜種を対象として遺伝的な違いや形態的な違いを調べた研究はありませんでした。

齋藤研究員らはこの研究に取り組み、ミトコンドリアDNAの塩基配列から、亜種オガサワラカワラヒワのグループとその他の亜種のグループに分かれること、この2つのグループがわかれたのが約106万年前まで遡ることを発見しました。この分岐年代は、カワラヒワの近縁種のキバラカワラヒワとズグロカワラヒワの分岐年代の約1.8倍も古いものです。形態の上でもオガサワラカワラヒワはカワラヒワの亜種の中でいちばん小さな体にいちばん大きな嘴を持っていることがわかりました。これらの結果の検討から、オガサワラカワラヒワは他の亜種に比較して進化的に独自の特徴を持つと考えられ、独立種オガサワラカワラヒワ(英名 Ogasawara Greenfinch、学名Chloris kittlitzi)とすることを提唱したものです。

オガサワラカワラヒワは小笠原諸島の母島の属島と火山列島の森林でしか繁殖しておらず、環境省のレッドリストでももっとも絶滅の危険性が高い絶滅危惧IA類に指定されています。近年この鳥は激減して絶滅のリスクが非常に高まっており、その原因はネズミ類などの外来種による捕食と考えられています。この鳥を絶滅の瀬戸際から救い出すために早急な保護対策の実施が不可欠です。

この研究について、5月27日にプレスリリースを行いました。下記リンクの一番目から資料がご覧いただけます。また二番目のリンクは論文へのリンクです(5月28日朝の時点では論文の要旨がご覧いただけます)。

プレスリリース(山階鳥類研究所)はこちら

論文はこちら(Saitoh, T. et al. Cryptic Speciation of the Oriental Greenfinch Chloris sinica on Oceanic Islands. Zoological Science, 37(3):1-15 (2020). )