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文科省特定奨励費研究成果発表会報告/山階武彦助成金レポート/周はじめ・吉田元の業績をたどる ほか「山階鳥研NEWS」5月号

山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」2021年5月号(No.295)が発行されました。

巻頭は、1月にオンラインで開催した、文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)研究成果発表会の報告を。昨年度は平成30年度から3年計画で行われた研究事業の最終年度で、その成果報告と、整備資料を活用した事例報告などを行いました。

山階鳥研が実施している山階武彦助成事業は、野生鳥獣の保護に関する学術の振興に資する国際会議等に出席する研究者に対し、渡航費用を助成しています。一昨年度助成金を受けた方の中から、アザラシの研究者、水野米利子さんに、スペインで開催された国際会議に出席し、ポスター発表をされた際のレポートをお願いしました。

続いてエッセイを1本。2018年と2020年に開催された、野鳥生態写真家下村兼史の写真展。ここに至るひとつのきっかけを作ったのが、周はじめ(後に吉田元※と改名)という、ご自身も野鳥生態写真家として知られた方でした。氏の示唆を受けて、山階鳥研で下村兼史資料の整理保存と写真展開催に尽力された塚本洋三さんに、周はじめ氏について書いていただきました。
※ 吉田の吉の部首は上が士ではなく、土の「つちよし」を使います。このページではブログのデータベースの関係で、便宜上、吉の字を使わせていただきました。

山階鳥研の地元、我孫子市で毎年開催される鳥と環境保全のお祭り、ジャパンバードフェスティバル(JBF、実行委員長:奥野卓司 山階鳥研所長)が第25回ふるさとイベント大賞(主催:(一財)地域活性化センター)の大賞(内閣総理大臣賞)を受賞しました。表彰式はオンラインで開催され、その模様をレポートしました。

巻末の「鳥のモニュメント」は、「身近な飼い鳥を供養 小鳥供養塔」(東京都墨田区)です。また、令和3年度の事業計画と収支予算や、イベント報告と告知などもお届けしました。

「山階鳥研NEWS」2021年5月号(第295号) 目次
1面
表紙写真(ヒヨドリ) 賛助会員 野元彰
2面 文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)研究成果発表会を開催
3面 山階武彦助成金活動レポート 水野 米利子
4面 周はじめ・吉田元※の業績をたどる 塚本洋三
5面 ジャパンバードフェスティバル 内閣総理大臣賞受賞/所員の著書
6面 オガサワラカワラヒワの保全計画作りWSと講演会に所員が参加/「希少ガン類のシンポジウム」で所員が講演
7面 京都市動物園の講演会で所員が講演/令和3年度事業計画と収支予算
8面 テーマトーク/あびベジからご寄附/事務局から(山階武彦助成事業対象者・賛助会員・ご寄附)/鳥のモニュメント/編集後記

「山階鳥研NEWS」は、山階鳥研の活動や、鳥学研究や鳥の話題をやさしく紹介するニュースレターです。賛助会員に入会いただきますと、隔月でお送りいたします。
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「山階鳥類研究所のこれまでと今後」が「私たちの自然」に掲載されました

(公財)日本鳥類保護連盟の機関誌「私たちの自然」3・4月号に尾崎清明・山階鳥研副所長が「山階鳥類研究所のこれまでと今後」という見開き2ページの記事を寄稿しています。

「私たちの自然」では、2021年が、1971年に環境庁(現在の環境省)が発足してから50年の節目の年であることから、本年1・2月号では「50年を振り返りこの先50年を考える」という特集を、さらに3・4月号で「日本の自然を支えてきた仲間たち」という特集を組んでおり、尾崎副所長の記事は後者の特集のために依頼があったものです。

尾崎副所長は記事の中で、創立者山階芳麿博士の「山階家鳥類標本館」を出発点とする沿革から説き起こし、1960年に東京で開催された国際会議、国際鳥類保護会議で、アジアでの鳥類標識調査の開始が勧告されたことを受けて、日本でも太平洋戦争によって中断されていた鳥類標識調査が1964年から再開され、成果が上がり、貴重な基礎データとして役立っていることを述べています。さらに、山階鳥研は、トキ、コウノトリ、アホウドリの保全、ヤンバルクイナの発見と保全といった希少鳥類の保全に関わり、重要な役割を果たしてきたことが紹介されています。創立当初から収集されてきた鳥類標本については、新たな技術によって、さまざまな研究の可能性があると述べ、最後に、さまざまな資料と長期間の野外調査データ、保全の経験などに立脚して、国際的連携を深めつつ、地球温暖化、生物多様性の喪失、新興感染症問題等への対応や、鳥類学の人材育成、情報公開にも貢献することが求められると結んでいます。

それぞれの特集は、下記のような記事からなっています。

特集「50年を振り返りこの先50年を考える」(「私たちの自然」1・2月号)
「鳥獣行政の50年を振り返って」(遠矢俊一郎)
「50年で変わった野鳥たち」(松田道生)
「鼎談 日本鳥類保護連盟の50年」(柳沢紀夫・名執芳博・藤井幹)

特集「日本の自然を支えてきた仲間たち」(「私たちの自然」3・4月号)
「日本野鳥の会の過去50年の歩みとこれから」(遠藤孝一)
「日本鳥学会の50年、そして未来へ」(上田恵介)
「日本自然保護協会の50年を振り返り、向こう50年を見通す」(亀山章)
「世界の自然環境の50年とこれからの未来に向けて」(東梅貞義)
「山階鳥類研究所のこれまでと今後」(尾崎清明)

「私たちの自然」は日本鳥類保護連盟の会員になると読むことができます(日本鳥類保護連盟のウェブサイトはこちらです)。

小鳥類の渡り生態解明の新たな方法/コアホウドリがメキシコの島から飛来/アホウドリに2種が含まれることが判明 ほか「山階鳥研NEWS」3月号

山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」2021年3月号(No.294)が発行されました。

巻頭は、足環による標識調査やジオロケータなどの調査手法と、近年行われるようになった市民科学の手法を突き合わせて、東アジアの小鳥類の渡り生態の解明を試みる研究について、実際に共同研究者として加わった尾崎副所長が紹介します。

昨年3月に茨城県の海岸で死体拾得されたコアホウドリにはなんとメキシコの足環がつけられていました。この個体が放鳥されたメキシコで本種の研究と保全活動に従事している研究者に、現地のコアホウドリの現状について寄稿してもらいました。(さらに日本に飛来したコアホウドリのニュース記事は6ページに掲載しました)

続いてエッセイを1本。東京芸大大学院の小山晋平さんは、美術解剖学の研究をしながら、山階鳥研でアルバイトとして標本製作に携わっています。小山さんに、美術解剖学と山階鳥研での仕事について書いていただきました。

アホウドリが2種に分けられるという研究は、北海道大学と山階鳥研の研究グループによって昨年11月に発表され、注目を集めました。この研究についての解説記事を5ページに掲載しています。

その他、モーリシャス沿岸で昨年7月に起きた油流出事故の緊急援助隊に、保全研究室の水田室長が参加した話題などを掲載しました。

巻末の「鳥のモニュメント」は、「かもめの水兵さんの歌碑」(神奈川県横浜市)です。また、イベント情報などもお届けしました。(賛助会員で、広報誌を購読してくださっている方々には令和2年度会員名簿もお送りしました。)

「山階鳥研NEWS」2021年3月号(第294号) 目次
1面
表紙写真(ニシオジロビタキ)賛助会員 西村眞一
2面 小鳥類の渡り生態を解明する新たな方法 副所長 上席研究員 尾崎清明
3面 メキシコのグアダルーペ島生物圏保護区におけるコアホウドリの現状 J. C. エルナンデス・モントーヤ 他
4面 美術と解剖 標本製作アルバイトに従事して/所員の著書番外編 東京芸術大学大学院 非常勤講師 小山晋平
5面 アホウドリに2種が含まれることが判明 伊豆諸島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」別種としての保全が必要に
6面 コアホウドリがメキシコから飛来/モーリシャスの緊急援助隊に参加
7面 2020年我孫子市鳥の博物館開館30周年/ジャパンバードフェスティバル2020オンライン開催/山階鳥類学雑誌目次
8面 テーマトーク/事務局から(賛助会員・ご寄附)/訃報/鳥のモニュメント/編集後記

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山階鳥類学雑誌(第52巻第2号)をご紹介します。

山階鳥類研究所の学術雑誌「山階鳥類学雑誌」は年に2冊の発行です。2020年12月15日付けで発行された、2020(令和2)年度の第2号についてご紹介します。

● 原著論文
Whitworth, D.L.・ Carter, H.R.・中村 豊・武石全慈・大槻都子: 宮崎県枇榔島におけるカンムリウミスズメ Synthliboramphus wumizusume の孵化成功率と捕食(英文) pp.63‒82
江崎保男・田悟和巳: 吉野川のミサゴ ~繁殖と採餌生態~ pp.83-97

● 短報
大槻都子・Whitworth, D.L.・Parker, M.W.・箕輪義隆・中村 豊・吉本竹宏:宮崎県小枇榔におけるカンムリウミスズメの繁殖の確認(英文) pp.99-104
福田道雄: 大正時代の浅草花屋敷に来たペンギン pp.105-112
黒木知美・鶴見みや古・長堀正行: 日本産,朝鮮半島産,および中国陜西省からの提供個体を始祖とする日本産トキに共生するウモウダニ種構成の比較 pp.113-123

● 報告
山本美枝: 長崎県福江島におけるカンムリオウチュウの記録 pp.124-128
正富欣之・森竹 祐: 北海道における野生タンチョウの鳴き合い行動の開始年齢に関する観察記録 pp.129-132
倉沢康大・安部亮佑・西沢文吾: 北海道近海におけるアシナガウミツバメ Oceanites oceanicus の記録 pp.133-137
山崎剛史・亀谷辰朗: 鳥類の目と科の新しい和名(2)鳴禽類 pp.138-143
中原 亨・江頭幸士郎: 男女群島におけるヤイロチョウの初記録 pp.144-146

● 回想録 pp.147-151
● 誌碑 pp.152-156
● 投稿論文査読者一覧 p.157
● 投稿される方へ pp.158-162
● 投稿される方へ(英文)pp.163-167

<編集長 綿貫豊北海道大学水産科学研究院教授の編集後記から>
原著2編短報3編報告5編とそれぞれに充実した号となりました。内容も海鳥と陸鳥、生態と寄生虫、飼育の歴史、観察記録なとバラエテイーがあります。山階鳥類学雑誌はこうした多様な原稿を歓迎します。様々なタイプの「報告」を投稿しやすくなるようなスタイルを検討しております。さて、今年から、受理された論文のうち毎年1~2編特筆すべきものを編集長が選び紹介することとしました。このEditor’s Choice論文には出版後直ちに自由にダウンロードできるようになるという特典があります。今年は 江崎・田悟両氏によります、「占野川のミサゴ」です。下流域全ての個体の繁殖と餌や採食場所を、直接観察により丁寧に調べたもので、堤の下流や河口が主たる狩場となっていること、それが営巣場所にも関係していそうなことを明らかにしています。

*「山階鳥類学雑誌」は、鳥類の研究論文を掲載する学術雑誌です。1952年に「山階鳥類研究所研究報告」のタイトルで創刊され、2003年に現在の誌名に改めました。山階鳥研の研究論文を掲載するとともに、所外の研究者の研究発表の場としても貢献しています。
賛助会員に入会され、「山階鳥類学雑誌」を購読するコースを希望された方にお送りしています(そのほかに広報紙「山階鳥研NEWS」を購読するコースもあります)。
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オンライン山階芳麿賞記念講演会/白瀬のペンギン/鳥の長寿記録ほか「山階鳥研NEWS」11月号

山階鳥研NEWS11月号表紙

山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」2020年11月号(No.292)が発行されました。

10月4日(日)にオンラインで開催された山階芳麿賞記念講演「絵を見るハト、音楽を聴くブンチョウ」の模様を速報で、巻頭に掲載しました。

続いてエッセイを1本。東京大学総合研究博物館の松原始さんに、山階鳥研からインターメディアテク(千代田区丸の内)に寄託しているペンギンの標本についてご寄稿いただきました。明治時代の探検家、白瀬矗(しらせ・のぶ)が南極より持ち帰ったペンギンについてのお話。

また、鳥類標識調査の成果として山階鳥研の吉安フェローらが発表した、日本の野鳥の長寿記録のまとめを解説しました。

巻末の「鳥のモニュメント」は、無粋な自分にもわかるあわれ「鴫立澤(しぎたつさわ)標石」(神奈川県大磯町)です。その他、イベント情報などもお届けしました。

「山階鳥研NEWS」2020年11月号(第292号) 目次
1面
表紙写真(アオゲラ) 賛助会員 内田英一さん
2面 山階芳麿賞記念講演会をオンラインで開催/バンディング展が終了
3面 白瀬のペンギン(東京大学総合研究博物館 松原 始さん)
4面 鳥類標識調査 日本の野鳥の最長生存期間まとめ
5面 山階鳥学セミナー捕獲技術入門編/NEWS表紙写真募集/陸前高田市立博物館被災標本返却
6面 関西地区賛助会員の集い報告/下村兼史写真展終了
7面 鳥学講座・見にレクチャー告知/バンディングかわら版/訃報
8面 テーマトーク/所員の著書/事務局から(賛助会員/ご寄附)/鳥のモニュメント/編集後記

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山階芳麿賞贈呈式/新型コロナウイルスと生物多様性/環境大臣賞を受賞して/ツンドラの大地に憧れて/聟島のアホウドリ近況ほか「山階鳥研NEWS」9月号

山階鳥研NEWS 9月号

山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」2020年9月号(No.291)が発行されました。

渡辺茂慶應義塾大学名誉教授に第21回山階芳麿賞をお贈りしました。7月に行われた贈呈式のもようと、10月にオンラインで開催される記念講演会のお知らせを巻頭に掲載しています。

続いてエッセイを3本。水田保全室長には新型ウイルス感染症時代における研究の意義について、6月に着任した澤保全研究室研究員には自己紹介を兼ねてエッセイを書いてもらいました。また、5月に「野生生物保護功労者表彰 環境大臣賞」を受賞された協力調査員の市橋直規さんには鳥類標識調査の活動について紹介していただきました。

巻末の「鳥のモニュメント」は、集団で繁殖する猛禽「飛翔」(長野県中野市)です。その他、聟島のアホウドリ最新情報やイベント情報などもお届けしました。

「山階鳥研NEWS」2020年9月号(第291号) 目次
1面
表紙写真(オグロシギ・ヒバリシギ) 賛助会員 孝橋貞樹さん
2面 渡辺茂名誉教授に山階芳麿賞を贈呈/記念講演会のお知らせ
3面 新型コロナウイルスと生物多様性保全(保全研究室長 水田 拓)
4面 ツンドラの大地に憧れて(保全研究室研究員 澤 祐介)
5面 バンディングで環境大臣賞を受賞して(協力調査員 市橋直規さん)
6面 聟島のアホウドリ近況
7面 平成31年度決算報告/協力調査員・関係者が表彰されました/世界アルバトロスデー バナーチャレンジに参加/JBF・鳥学講座オンライン開催決定/手賀沼流域フォーラムイベントのお知らせ
8面 テーマトーク/所員の著書/事務局から(賛助会員/ご寄附)/編集後記/鳥のモニュメント

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小笠原諸島のオガサワラカワラヒワを独立種とすることを提唱する研究成果を論文発表しました

山階鳥研の齋藤武馬研究員は、森林総合研究所、国立科学博物館の研究者ほかとの共同研究で、カワラヒワの亜種とされてきたオガサワラカワラヒワが独立種と考えるべきことを発見し、論文発表を行いました。

カワラヒワは日本のほか、中国、朝鮮半島、極東ロシア、サハリン、カムチャツカ半島にわたるユーラシア大陸の東端に分布する、一見スズメに良く似た、アトリ科という仲間に属する小鳥です。全体にオリーブ緑色で、翼と尾に鮮やかな黄色い斑があり、太くてピンク色の嘴をしており、日本国内の多くの場所で、名前のように河原や荒れ地、農耕地や林縁などの環境でありふれた鳥ですので、バードウォッチングされる方にもおなじみと思います。

このカワラヒワは、地理的に8つの亜種(同じ種の中の、地理的に区別されるグループ)に分けられていますが、全部の亜種を対象として遺伝的な違いや形態的な違いを調べた研究はありませんでした。

齋藤研究員らはこの研究に取り組み、ミトコンドリアDNAの塩基配列から、亜種オガサワラカワラヒワのグループとその他の亜種のグループに分かれること、この2つのグループがわかれたのが約106万年前まで遡ることを発見しました。この分岐年代は、カワラヒワの近縁種のキバラカワラヒワとズグロカワラヒワの分岐年代の約1.8倍も古いものです。形態の上でもオガサワラカワラヒワはカワラヒワの亜種の中でいちばん小さな体にいちばん大きな嘴を持っていることがわかりました。これらの結果の検討から、オガサワラカワラヒワは他の亜種に比較して進化的に独自の特徴を持つと考えられ、独立種オガサワラカワラヒワ(英名 Ogasawara Greenfinch、学名Chloris kittlitzi)とすることを提唱したものです。

オガサワラカワラヒワは小笠原諸島の母島の属島と火山列島の森林でしか繁殖しておらず、環境省のレッドリストでももっとも絶滅の危険性が高い絶滅危惧IA類に指定されています。近年この鳥は激減して絶滅のリスクが非常に高まっており、その原因はネズミ類などの外来種による捕食と考えられています。この鳥を絶滅の瀬戸際から救い出すために早急な保護対策の実施が不可欠です。

この研究について、5月27日にプレスリリースを行いました。下記リンクの一番目から資料がご覧いただけます。また二番目のリンクは論文へのリンクです(5月28日朝の時点では論文の要旨がご覧いただけます)。

プレスリリース(山階鳥類研究所)はこちら

論文はこちら(Saitoh, T. et al. Cryptic Speciation of the Oriental Greenfinch Chloris sinica on Oceanic Islands. Zoological Science, 37(3):1-15 (2020). )

山階鳥類学雑誌(第50巻2号)のご紹介

山階鳥類研究所の学術雑誌「山階鳥類学雑誌」は年に2冊の発行です。2019年2月28日付けで発行された、2018(平成30)年度の第2号についてご紹介します。

● 原著論文
久井貴世:江戸時代におけるツルとコウノトリの識別の実態:博物誌史料による検証 pp.89-123.

● 短報
赤谷加奈・高木昌興:飼育下におけるオスのリュウキュウコノハズクの繁殖行動の開始時期(英文) pp.125-128
林 暁央:キジの高鳴きの地理的変異(英文) pp. 129-137

● 報告
Vladimir Dinets: ヒガシシナアジサシ Thalasseus bernsteini の日本初記録(英文) pp.138-140
山崎剛史・亀谷辰朗:鳥類の目と科の新しい和名 (1) 非スズメ目・イワサザイ類・亜鳴禽類 pp.141-151

● 誌碑 pp.152-154
● 書評 p.155
● 投稿論文査読者一覧 p.156
● 投稿される方へ pp.157-161
● 投稿される方へ(英文)pp.162-166

<編集長 綿貫豊北海道大学水産科学研究院教授の編集後記から>
50巻2号では、原著論文1報、短報2報、報告2報を掲載しています。原著論文は博物史料などを用いて江戸時代にツルとコウノトリがどのように記載されていたのかを分析した論文で、その認知度や史料中での識別限界を科学的に明らかにすることによって、鳥類の分布や生態の歴史的変化の研究が可能になることが期待できます。こうした史料を用いた、人文科学的な研究成果も山階鳥類学雑誌は大いに歓迎します。ぜひ論文や報告として投稿してください。編集委員会では、より広い範囲の分野の多くの方からご投稿いただけるよう、投稿規定の改定やアピール方法を検討しております。今後ともよろしくお願いいたします。

「山階鳥類学雑誌」は、鳥類の研究論文を掲載する学術雑誌です。1952年に「山階鳥類研究所研究報告」のタイトルで創刊され、2003年に現在の誌名に改めました。山階鳥研の研究論文を掲載するとともに、所外の研究者の研究発表の場としても貢献しています。
賛助会員に入会され、「山階鳥類学雑誌」を購読するコースを希望された方にお送りしています(そのほかに広報紙「山階鳥研NEWS」を購読するコースもあります)。
※ 山階鳥類学雑誌の解説はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌の目次(1992年以降)はこちらです。
※ 山階鳥類学雑誌掲載論文(刊行後2年を経過したもの)のPDFはこちらです。
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アホウドリ新たな保全へ/山階武彦助成金レポート/華開く皇室文化展開催によせてほか「山階鳥研NEWS」3月号

山階鳥研NEWS 2019年3月号山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」3月号の内容をご紹介します。

巻頭に佐藤文男保全研究室常勤嘱託研究員による「アホウドリ新たな保全へ」を見開き2ページで。3月より東京で開催される「華開く皇室文化」展のご紹介を展示の企画運営を担当された学習院大学史料館の長佐古さんにお願いしました。
巻末の「鳥のモニュメント」第6回目は、名古屋コーチン発祥の地 小牧「全国に名を馳せた鶏」(愛知県小牧市)です。その他、山階武彦助成金レポート、ナベヅルの渡りの話題やイベント情報などもお届けしました。(賛助会員の方々には平成30年度会員名簿をお送りしました。)

「山階鳥研NEWS」2019年3月号(第282号) 目次
1面 
表紙写真(アオシギ) 賛助会員 矢田新平
2-3面 アホウドリ新たな保全へ
4面 山階武彦助成金活動レポート
5面 「華開く皇室文化」展によせて
6面 ジャパンバードフェスティバル2018・全日本バードカービングコンクール山階鳥研所長賞報告
7面 ナベヅル黒竜江省から四国への渡りを確認/テーマトーク
8面 訂正/事務局から(賛助会員/ご寄附)/編集後記/鳥のモニュメント

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山階芳麿賞記念シンポジウム報告/京都市動物園と連携協定締結ほか「山階鳥研NEWS」1月号

山階鳥類研究所の広報紙「山階鳥研NEWS」1月号の内容をご紹介します。

巻頭に理事長の壬生基博より新年のご挨拶、また、6ページを割き昨年9月に開催した山階芳麿賞記念シンポジウムの詳報を。昨年11月に締結した京都市動物園との連携協定についても掲載しました。連携記念の講演会が1月20日に開催決定、ご興味のある方は山階鳥研ウェブサイトのイベント情報ページ(下記)でご確認ください。
巻末の「鳥のモニュメント」第5回目はお客様をお出迎え「国道58号線のヤンバルクイナ像」(沖縄県国頭村)です。その他、イベント情報などもお届けしました。

「山階鳥研NEWS」2019年1月号(第281号) 目次
1面 
表紙写真(アトリ) 賛助会員 松田幸保
2面 年頭のご挨拶/山階武彦助成事業募集/中国・四国地区賛助会員の集い
3-8面 第20回山階芳麿賞記念シンポジウム
9-10面 京都市動物園と連携協定締結/NEWS表紙写真募集/所員の著書「げんきくん物語」/訂正/事務局から(人事異動/賛助会員/ご寄附)/テーマトーク/訃報/鳥のモニュメント

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