系統・分類」カテゴリーアーカイブ

齋藤研究員が分担執筆した『新種発見! 見つけて、調べて、名付ける方法』が出版されます。

所員の著書をご紹介します。

研究者等による19の新種発見に関するエピソードを集めた、一般向けの分類学の啓発本です。扱う分類群は昆虫、鳥類、魚類、植物、菌類、アンモナイトなど、多岐にわたりますが、発見者が新種を発見した時の喜びや興奮がいきいきと伝わり、とても楽しく分かり易い本となっています。
齋藤武馬研究員が、分担執筆者として、自身が携わった、メボソムシクイの分類を見直して1種を3種に分けた研究のエピソードを執筆しました。

2022.12.17発売です。是非書店でお求めください。各販売サイトでもご購入いただけます。

<書籍情報>
書名: 新種発見! 見つけて、調べて、名付ける方法
編著:馬場 友希 福田 宏
発行:山と渓谷社 版元サイト
判型/頁:四六判/224頁
発行日:2023年1月5日

*山階鳥研ウェブサイト「所員の著書」ページもあわせてご覧ください。 → こちら

特別天然記念物・アホウドリに 2種が含まれることを解明し、論文発表しました

北海道大学総合博物館の江田真毅(えだ・まさき)准教授らと山階鳥研の研究グループは,伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島に由来する国の特別天然記念物・アホウドリの形態を比較し、鳥島タイプの鳥は尖閣タイプの鳥 よりほとんどの計測値で大きい一方,尖閣タイプの鳥のくちばしは相対的に長いことを解明しました。本研究で明らかになった形態的な違いと,これまでに知られていた遺伝的・生態的な違いから, 両タイプの鳥は別種とするべきと結論しました。このことを述べた論文が、このたび、国際的学術誌 Endangered Species Research 誌に2020 年 11 月 19 日(木)にオンライン公開の形で掲載され、北海道大学と山階鳥研では報道発表を行いました。

報道発表資料PDF『特別天然記念物・アホウドリに 2 種が含まれることを解明~伊豆諸島鳥島の「アホウドリ」と尖閣諸島の「センカクアホウドリ」は別種としての保全が必要~』(2020年11月20日)はこちらです。

論文PDF Eda et al. 2020. Cryptic species in a Vulnerable seabird: short-tailed albatross consists of two species. Endangered Species Research, 43: 375-386. はこちらです。

この研究によって、両地域の「アホウドリ」は約 60 万年もの間、 異なる歴史を歩んできた別種であることがわかりました。かつては多数の島々で繁殖していたと考えら れる両種ですが、現在の繁殖地はそれぞれ鳥島と尖閣諸島に限られてしまっています。これまで考えら れていた以上に、希少な鳥であることは明らかです。今後、それぞれの独自性を保つことを念頭に置い た保全政策の実施が必要と考えられます。

小笠原諸島のオガサワラカワラヒワを独立種とすることを提唱する研究成果を論文発表しました

山階鳥研の齋藤武馬研究員は、森林総合研究所、国立科学博物館の研究者ほかとの共同研究で、カワラヒワの亜種とされてきたオガサワラカワラヒワが独立種と考えるべきことを発見し、論文発表を行いました。

カワラヒワは日本のほか、中国、朝鮮半島、極東ロシア、サハリン、カムチャツカ半島にわたるユーラシア大陸の東端に分布する、一見スズメに良く似た、アトリ科という仲間に属する小鳥です。全体にオリーブ緑色で、翼と尾に鮮やかな黄色い斑があり、太くてピンク色の嘴をしており、日本国内の多くの場所で、名前のように河原や荒れ地、農耕地や林縁などの環境でありふれた鳥ですので、バードウォッチングされる方にもおなじみと思います。

このカワラヒワは、地理的に8つの亜種(同じ種の中の、地理的に区別されるグループ)に分けられていますが、全部の亜種を対象として遺伝的な違いや形態的な違いを調べた研究はありませんでした。

齋藤研究員らはこの研究に取り組み、ミトコンドリアDNAの塩基配列から、亜種オガサワラカワラヒワのグループとその他の亜種のグループに分かれること、この2つのグループがわかれたのが約106万年前まで遡ることを発見しました。この分岐年代は、カワラヒワの近縁種のキバラカワラヒワとズグロカワラヒワの分岐年代の約1.8倍も古いものです。形態の上でもオガサワラカワラヒワはカワラヒワの亜種の中でいちばん小さな体にいちばん大きな嘴を持っていることがわかりました。これらの結果の検討から、オガサワラカワラヒワは他の亜種に比較して進化的に独自の特徴を持つと考えられ、独立種オガサワラカワラヒワ(英名 Ogasawara Greenfinch、学名Chloris kittlitzi)とすることを提唱したものです。

オガサワラカワラヒワは小笠原諸島の母島の属島と火山列島の森林でしか繁殖しておらず、環境省のレッドリストでももっとも絶滅の危険性が高い絶滅危惧IA類に指定されています。近年この鳥は激減して絶滅のリスクが非常に高まっており、その原因はネズミ類などの外来種による捕食と考えられています。この鳥を絶滅の瀬戸際から救い出すために早急な保護対策の実施が不可欠です。

この研究について、5月27日にプレスリリースを行いました。下記リンクの一番目から資料がご覧いただけます。また二番目のリンクは論文へのリンクです(5月28日朝の時点では論文の要旨がご覧いただけます)。

プレスリリース(山階鳥類研究所)はこちら

論文はこちら(Saitoh, T. et al. Cryptic Speciation of the Oriental Greenfinch Chloris sinica on Oceanic Islands. Zoological Science, 37(3):1-15 (2020). )

1月のテーマトークは「絶滅寸前?オガサワラカワラヒワの特徴とその保全」(1/18(土))です

写真:オガサワラカワラヒワ雄成鳥

我孫子市鳥の博物館で開催する、第3土曜日恒例の「テーマトーク」、今月は1月18日(土)に、齋藤武馬山階鳥研自然誌研究室研究員が、小笠原諸島に生息するオガサワラカワラヒワについてお話しします。

同じ種なのだけれど、場所によって少しずつ特徴が違うときに、分類学者が検討して、区別して名前をつけたものを亜種と呼びます。カワラヒワの亜種、オガサワラカワラヒワは小笠原諸島固有の亜種ですが、近年個体数が減少し絶滅の危険性が高まっています。今回は齋藤研究員が、オガサワラカワラヒワはどんな鳥なのか、遺伝的、形態的特徴から紹介します。さらに、減少している個体数の現状や原因についても保全の立場から報告します。

多くの皆様のご来場をお待ちしています。

第91回「絶滅寸前?オガサワラカワラヒワの特徴とその保全」
【講師】齋藤武馬(山階鳥研自然誌研究室研究員)
    → この人
【日程】1月18日(土)
【時間】13時30分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール
    → 交通案内(外部サイト)
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名 
【主催・問い合わせ先】山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)

※ テーマトークでのこれまでの講演実績はこちらです
※ 山階鳥研のイベント情報はこちらです

6月のテーマトークは「万国共通な学名が図鑑によって違うわけ 〜キジやコウノトリはどうなってる? 」(6/15(土))です

山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館でトークをする、第3土曜日恒例の「テーマトーク」、今月は6月15日(土)に、平岡考自然誌研究室専門員が、学名のお話をします。

和名にあわせて図鑑に必ず書いてある学名はラテン語で、万国共通なのだと説明されます。でも、学名ってときどき図鑑によって違いますよね。たとえば、キジやコウノトリでそういう例を見たことがある方もいらっしゃるでしょう。専門家でも少し面倒な学名の仕組みのあらましを身近な例からお話しします。

第84回「万国共通な学名が図鑑によって違うわけ〜キジやコウノトリはどうなってる?

【講師】平岡考(自然誌研究室専門員/広報コミュニケーションディレクター)
→ この人 
【日程】6月15日(土)
【時間】13時30分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール → 交通案内(外部サイト)
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)

※ 写真は、台湾産のキジです。
 テーマトークでのこれまでの講演実績はこちらです
※ 山階鳥研のイベント情報はこちらです

2月のテーマトークは「南西諸島の鳥類の不思議をDNAから探る」(2/10(土))です

山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館でトークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」、今月は2月10日(土)に、齋藤武馬・自然誌研究室研究員が、南西諸島の鳥類をDNAで調べるお話をします。

日本の南に位置する南西諸島は南北約1200kmに連なる島々ですが、そこにしか棲息していない珍しい鳥達も沢山います。それらの種の島間における分布の境界や、DNA分析で明らかになってきた最近の研究例についてご紹介します。

ぜひ多くの皆さんのご来場をお待ちしております。

第72回「南西諸島の鳥類の不思議をDNAから探る」
【講師】齋藤武馬 山階鳥研 自然誌研究室 研究員
【日程】2月10日(土)
【時間】13時30分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール
交通案内(外部サイト)
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)

※ 写真は、トカラ列島中之島で捕獲されたイイジマムシクイです
※ テーマトークでのこれまでの講演実績はこちらです
※ 山階鳥研のイベント情報はこちらです

10月のテーマトークは「ハヤブサはワルぶったインコなのか」(10/14(土))です

山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館でトークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」は今月は10月14日(土)に、山崎剛史・自然誌研究室長が、鳥類の類縁関係の新知見から興味深い話題を紹介します。

鳥類学者は古くから鳥たちの類縁関係について考えてきました。最近、DNAの配列を読み取る技術が目覚しく進歩しましたが、このブレイクスルーにおかげで、鳥たちの類縁関係について、意外な事実が次々と明らかになってきています。ハヤブサはタカではなく、インコやスズメに近い。カワセミはあの鳥やあの鳥の仲間だ-そんな面白いトピックスを紹介してもらいます。

ぜひ多くの皆さんのご来場をお待ちしております。

第69回「鳥の系統学の今 〜ハヤブサはワルぶったインコなのか」
【講師】山崎剛史 山階鳥研自然誌研究室長
【日程】10月14日(土)
【時間】13時30分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール → 交通案内(外部サイト)
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)

会場の我孫子市鳥の博物館では、山階鳥研と同博物館共催の企画展「鳥・酉・鶏・とり〜酉年はトリで楽しむ〜」を開催中です。あわせてお楽しみください。

※ テーマトークのこれまでの開催実績(PDF)はこちらです。
※   山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。

※ 画像はハヤブサです(写真:我孫子市鳥の博物館)。

アカヒゲとコマドリの学名はなぜ入れ替わってる?その原因になった本が今だけ見られます!

我孫子市鳥の博物館で開催中の「鳥・酉・鶏・とり 〜酉年はトリで楽しむ〜」(共催:山階鳥類研究所・我孫子市鳥の博物館)、会期がすでに半分を過ぎましたが、皆様ご覧になっていただけましたでしょうか。

今回写真をご紹介するのは、18〜19世紀のオランダの動物学者、オランダ自然史博物館の初代館長コンラート・ヤーコプ・テミンクの著作「新編彩色鳥類図譜」(山階鳥研所蔵)です。

作品保護のため、5日ごとにページをめくって違うページをお見せしていますが、10月8日(日)の夕方までは日本の南西諸島産のアカヒゲのページが開かれています。鳥好きの方はご存じのトリビア、よく似た日本産の小鳥、アカヒゲとコマドリの学名がいれかわっていて、アカヒゲの種小名はkomadori、コマドリの種小名はakahigeであるのは、テミンクがこれらの小鳥に学名を与えたこの「新編彩色鳥類図譜」の間違いに起因しているのです。アカヒゲのあと、10月9日(月)から10月15日(日)までの5日間こんどはコマドリのページが開かれますのでこちらもぜひご覧になってください。


日本の江戸時代に海を越えてヨーロッパに世界中から鳥の標本がもたらされ、学名が与えられ、分類されて徐々に体系だてて整理されてゆきます。今、私たちが使っている図鑑もその頃から営々と続けられてきた生物学者たちの営みの結果としてあることが、この「新編彩色鳥類図譜」を見ても思いおこされますが、今回の企画展ではそのほかにも、鳥と人の関係をさぐるさまざまな展示をお見せしています。ぜひご来場ください。

我孫子市鳥の博物館第78回企画展「鳥・酉・鶏・とり 〜酉年はトリで楽しむ〜」
【会期】 2017年7月15日(土)〜11月26日(日)
【場所】 我孫子市鳥の博物館 千葉県我孫子市高野山234-3 Tel. 04-7185-2212
【休館日】毎週月曜日(祝日の場合は開館し、その直後の平日が休館日となります)
【時間】9:30 〜16:30
【料金】通常の入館料でご覧になれます。(一般300円、高校・大学生200円、中学生以下・70歳以上の方・障がい者の方 無料)
【詳細・公式サイト】我孫子市鳥の博物館企画展ページ
【主催】我孫子市鳥の博物館・(公財)山階鳥類研究所

第78回企画展「鳥・酉・鶏・とり展」チラシPDF

※ 「新編彩色鳥類図譜」の展示は10月28日(日)までで、10月31日(火)からは、セルビィの「英国鳥類学図譜」を展示します。
※ 山階鳥研のイベント情報はこちらです。

8月のテーマトークは「ミソサザイってどんな鳥?こんな鳥」(8月13日(土))です

ミソサザイ囀り夏まっ盛りですが皆さんいかがお過ごしでしょうか?

山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館でトークをする、第2土曜日恒例の「テーマトーク」、今月は、8月13日(土)の開催です。齋藤武馬・自然誌研究室研究員に、ミソサザイについて話してもらいます。

ミソサザイは日本最小クラスの鳥のひとつで、体重はスズメの半分以下しかない鳥です。夏にはよくしげった山の渓流ぞいですばらしい囀りを聞くことができますし、冬にはやや低い山の暗い林床などで出会うことができますが、意外とその生態は知られていません。今回のテーマトークでは、齋藤研究員が、その分類や繁殖生態、最近の分布の変化等について紹介し、この渓流の小さな歌い手の生態や魅力についてお話しします。

第60回「ミソサザイってどんな鳥?こんな鳥」
【講師】齋藤武馬 山階鳥研自然誌研究室研究員
【日程】8月13日(土)

【時間】13時30分~ ※30分のテーマトーク終了後、質疑応答の時間あり
【場所】我孫子市鳥の博物館 2階多目的ホール → 交通案内(外部サイト)
【参加費】無料(入館料が必要です)
【定員】先着50名
【主催・問い合わせ先】
山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥の博物館(TEL. 04-7185-2212)

※ 山階鳥類研究所のイベント情報はこちらです。
※ テーマトークは8月13日(土)のあと、9月はお休みして、次は10月8日(土)の開催です。

ロシアから研究者が研究の打ち合わせに来所しました

Kryukov_san

12月10日、ロシアの動物学研究者アレクセイ・クリュコフ(Dr. Alexey Kryukov)さんが、共同研究の打ち合わせのため来所しました。

クリュコフさんは、ウラジオストックにあるロシア科学アカデミー極東支所生物学土壌学研究所の進化動物学遺伝学研究室長で、これまでも山階鳥研の研究者と共同研究してきましたが、今回、ユーラシアから日本に分布する鳥類の系統研究の打ち合わせのため、来所したものです。当日は山崎剛史、齋藤武馬両研究員と打ち合わせをおこない、また標本室などを見学しました。

※ 写真は奄美諸島特産のルリカケスの研究用剥製標本を手に、山崎研究員から説明を受けるクリュコフさんです。