鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2012年4月2日掲載

サギ類のカラーマーキング

足環などを用いて移動や寿命をを調べる標識調査のうち、首環や色足環、足に装着するカラーフラッグ(プラスチックの旗)などを用いるものをカラーマーキングと呼びます。カラーマーキングによって再捕獲なしに野外観察によって移動を調べることができます。

ここでは2006年から2008年にかけて行ったサギ類のカラーマーキング調査の結果をご紹介します。

『山階鳥研ニュース』 2010年3月号を一部修正)

2006年から3年度にわたり、全国の集団繁殖地で巣内ヒナに番号つきのカラーリング(色足環)と金属足環を装着しました。

捕獲を行った集団繁殖地は北は宮城県から南は鹿児島県まで合計13県の25カ所で、足環を装着したのは、ゴイサギ、アマサギ、ダイサギ、チュウサギ、コサギ、アオサギの合計6種1,796個体でした。

カラーリングC10を装着したチュウサギ
(2006年9月2日 岩手県盛岡市 撮影:四ツ家孝司氏)
同年6月25日〜26日に千葉県白井市で標識された個体。

これらのサギ類について、野外での観察・撮影や、回収(再捕獲または死体で発見)の報告を日本国内および海外からお寄せいただいており、2009年3月末までのデータを取りまとめた結果、合計で43例になりました。移動が確認されたのは、ダイサギ、チュウサギ、コサギの3種で、このうち回収は5例、観察は38例でした。回収と観察の例数を比較すると、カラーリング装着の効果は十分にあったと言えます。

長距離の移動例としては、岐阜県で2006年6月に標識されて翌年の2月にフィリピンのルソン島で回収されたチュウサギ、宮城県で2007年6月に標識されて同年10月に沖縄県国頭村(くにがみそん)で観察されたダイサギ、同じくダイサギで2007年6月に山口県で標識されて翌年11月に台湾台南県で観察された例などがありました(下図参照)。チュウサギは1960〜70年代にサギ類の調査が集中して行われた時にもフィリピンへの移動例があり、今回の結果はそれを再確認した形です。また、2006年6月に千葉県で標識されて同年9月に岩手県盛岡市で観察されたチュウサギ(トップ写真の個体)など数例で、繁殖地からいったん北上する興味深い事例が確認されました。

調査により判明したサギ類の長距離移動例

調査の取りまとめを行った佐藤文男研究員は「全国の皆様から観察報告によってサギ類の移動に関する貴重なデータが得られた。サギ類は田園の環境指標として重要な生物なので、今回のデータを解析するとともに、調査を継続してゆきたい。カラーリング付きの個体はまだ多数野外で見られるはずなので引き続き報告を寄せていただきたい」と述べています。

▲ このページのトップへ