鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2012年4月2日掲載

シギ・チドリ類のカラーマーキング

足環などを用いて移動や寿命をを調べる標識調査のうち、首環や色足環、足に装着するカラーフラッグ(プラスチックの旗)などを用いるものをカラーマーキングと呼びます。カラーマーキングによって再捕獲なしに野外観察によって移動を調べることができます。

ここでは継続して行っているシギ・チドリ類のカラーフラッグ調査から2008年度分の結果をご紹介します。

山階鳥研ニュース 2010年3月号より)

主に干潟などの水辺に生活し、国境を越えて長距離の渡りをする種の多いシギ・チドリ類では、カラーフラッグによる渡り調査が国際的な協力体制で行われています。

山階鳥研のウェブサイトでは、カラーフラッグ付きのシギ・チドリ類の観察報告で日本に関係するものを掲載しています。( >> カラーフラッグ付きシギ・チドリ類の観察記録

日本では、北海道根室市春国岱、北海道紋別市コムケ湖、千葉県習志野市谷津干潟、千葉県木更津市小櫃川河口、熊本県荒尾市荒尾海岸の5カ所で、シギ・チドリ類にフラッグを装着しています。これらが国内および海外で確認された例と、海外でフラッグを装着し国内で確認された例を合計して、2008年には21種186例ありました。

このうち国内の移動はキアシシギ、トウネン、メダイチドリなど12種56例、国内で標識し国外で確認された例がキアシシギ、トウネン、キョウジョシギなど10種31例、海外で標識し国内で確認された例がオオソリハシシギ、ハマシギ、ミユビシギなど16種99例ありました。これら99例は、オーストラリア、ニュージーランド、中国、台湾、およびアメリカのアラスカ州の合計11カ所でフラッグを装着されたものです。このうちもっとも多くの観察例が得られた放鳥地(標識を装着した場所)は、オーストラリアのヴィクトリア州南部で、7種25例が北は北海道十勝郡浦幌町(トウネン)から南は佐賀県(オオソリハシシギほか)まで確認されました。また中国の揚子江河口崇明島で標識された8種10例が、北は福島県(オオメダイチドリ)から南は沖縄県(ヒバリシギほか)で確認されました。近年、中国、韓国などで標識調査やバードウォッチングが盛んになってきており、今後とも新たな移動例の確認が期待できます。

アラスカ本土と日本との初めての移動例として、アラスカ州南西部のノームで2008年6月21日に標識されたムナグロ(雄・成鳥)が広島県東広島市で2008年9月6日から12日まで確認されました(図・写真)。ムナグロのアラスカ州からの移動例として、これまでは1965年にプリビロフ諸島セントジョージ島で標識されたムナグロが北海道に移動した例があるだけでした。

アラスカで標識され東広島市で撮影されたムナグロ
(2008年9月6日 撮影:佐伯昌彦氏)

調査により判明したムナグロの移動(写真の個体)

茂田良光研究員は、「多くの皆さんのおかげで観察例が集まっており、新しい知見も増えてきている。今後も多くの方から情報提供をいただければうれしい」と述べています。

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