2013年5月29日掲載
モンゴルで野外識別用のカラーフラッグを装着されたタゲリが、石川県で観察撮影されました。タゲリで海外の生息地との間の移動が確認されたのは初めてです。
(山階鳥研ニュース 2011年9月号より)
タゲリはチドリ科に属する水辺の鳥で、日本にはおもに冬鳥としてユーラシア大陸から渡来しますが、日本に渡来するタゲリがユーラシアのどこで繁殖しているかの情報はこれまでありませんでした。
この個体は、2011年3月27日に石川県加賀市干拓町(柴山潟干拓地)の耕地で同種の群中にいるところを、加賀市在住の寺谷泰彦さんにより観察撮影され、右脚のカラーフラッグが、青ー緑の組み合わせであることのほか、左脚に装着された金属製の足環の番号が「M0002」であることもデジタル画像から読み取られました。この情報は小松市在住の中西正太郎さんを経由して山階鳥類研究所に伝えられ、問い合わせの結果、ニューヨークに本部のある自然保護団体「野生生物保護協会」(Wildlife Conservation Society)が2008年7月31日にモンゴル中部のオギイ湖畔で標識を装着したものであることがわかりました。
カラーフラッグは、鳥に負担にならない範囲で、人間が野外で観察したときに目立つように設計されており、研究機関などの国際的な協力体制によって、調査場所別に装着位置や色、形が決められています。観察するだけでその鳥がどこで足環をつけられたのかが分かる仕組みです。
今回撮影されたタゲリがモンゴルで標識を付けられた時期から、この付近で繁殖したことが推測され、日本に渡来するタゲリの繁殖地に関する情報が初めて得られました。尾崎清明・保全研究室長は「標識された鳥の観察や撮影結果が、貴重な記録になります。ぜひ報告してください」と話しています。