2014年12月24日掲載
ハワイ諸島で足環を付けられたコアホウドリが三浦半島沖で日本船に保護され、乗組員らの介護を受けて、船の目的地の沖縄まで運ばれ、無事回復して放鳥されるという事例がありました。足環の記録から、本種の移動についてあらたな実例が加わることになりました。山階鳥類研究所は、番号つきの足環によって、鳥の移動や寿命その他のデータを得る、鳥類標識調査(バンディング)を環境省の委託により行っており、日本でのセンターとなっています。
2010年12月20日に三浦半島剣崎(三浦市)の南の沖合約10キロメートルの海上を沖縄県那覇港に向けて航行中の多目的作業船「新世丸」の船首マストを固定しているワイヤーに、強風にあおられたコアホウドリが接触し、甲板上に落下しました。この鳥は乗組員に保護され、足環が装着されていたため、山階鳥類研究所に連絡が入りました。コアホウドリは乗組員の介護を受けながら、新世丸は12月23日夜に那覇港に入港しました。山階鳥研から連絡を受けた環境省那覇自然環境事務所の手配によって、コアホウドリは那覇獣医科病院の高良淳司獣医師の診察・治療を受け、12月30日に沖縄島南部の瀬長島(豊見城市)から放鳥されました。
鳥は黄色の色足環(KF55)と金属足環(017-08755)を装着しており、記号からアメリカ合衆国で使用されている足環とわかったので、合衆国のバンディングセンターである、パタクセント野生動物調査センターに連絡を取った結果、このほど、標識調査のデータが送られてきました。それによると、2010年6月26日にハワイ州ターン島で、ヒナのときに足環を装着されたことがわかりました。経過期間5ヶ月(177日)、移動距離 5,320キロメートルです。太平洋のハワイ諸島やミッドウェー諸島で足環を装着されたコアホウドリが日本近海で発見、保護されるなどして足環が確認される回収例はこれまでにもありましたが、保護された個体が無事に回復して放鳥されることは多くありません。関係者の保護の連繋が実った好例といえるでしょう。
(『山階鳥研ニュース』 2014年3月号より)