鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2016年4月5日掲載

アメリカコアジサシの日本初記録

北アメリカの水辺に生息するアメリカコアジサシが鳥類標識調査によって日本で初めて、茨城県神栖市で確認されました。

アメリカコアジサシ

神栖市で捕獲されたアメリカコアジサシ。
(上)アメリカ合衆国ノース・ダコタ州で足環装着された個体(足環番号: 2451 - 20272 )。
(下)新たに環境省鳥類標識調査の足環3E-08694を装着して放鳥した個体。

山階鳥研の茂田研究員らは2014年7月18日に、茨城県神栖市須田浜海岸でコアジサシの標識調査を実施中、アメリカコアジサシ2羽を捕獲しました。1羽には日本以外の国の標識調査の金属足環 とカラーリングが装着されており、調査の結果、この個体は合衆国ノース・ダコタ州マクリーン郡で雛のときに捕獲され足環をつけて放鳥されたものであることがわかりました。

アメリカコアジサシは、北アメリカと西インド諸島の砂浜海岸や内陸の河川で繁殖する魚食性の水鳥です。従来、日本にも分布するコアジサシ(ヨーロッパと北アフリカ、東〜東南アジアに分布)と同種とされていましたが、近年では両者は別種として扱われるようになりました。

アメリカ合衆国の足環を装着していたアメリカコアジサシの翼(上)と尾(下)。腰と尾はコアジサシでは純白だが本種では灰色がかる。コアジサシとの違いとしてはほかに、鳴き声が非常に異なることが挙げられる。

アメリカコアジサシの記録は日本ばかりでなく、東アジア全体で初めてです。茂田良光研究員は「捕獲当初、海外の足環があったおかげで気づくことができ、検討して形態の特徴も確かめることができました。野外観察で本種の渡来に気づくことは難しいと考えられ、鳥類標識調査の有効性が示されました。本種は稀に渡来していることも考えられ、今後も調査を継続して渡来状況を確認したい」と話しています。

茂田研究員らは、今回の発見について、兵庫県神戸市で2015年9月に開催された日本鳥学会2015年度大会で、「日本からのアメリカコアジサシSternula antillarumの初記録」として口頭発表しました。

鳥類標識調査は、野鳥に個体識別用の足環を装着することで、鳥類の渡りや寿命などの様々な生態を明らかにしようとするもので、日本では現在、環境省の委託事業として山階鳥類研究所が実施しています。

「山階鳥研NEWS 2016年3月号」より

山階鳥研では、この事例につき2016年3月1日付けで報道発表を行いました。
>> プレスリリースのページで報道資料(PDF)を見る

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