2019年3月14日掲載
環境省レッドリスト(2018)の絶滅危惧第II類(VU)に位置づけられているナベヅルが、中国黒竜江省から、高知県、徳島県、鹿児島県に順次移動したことが色足環の証拠で初めて確認されました。
ナベヅルは東シベリア南部とロシア極東南部で繁殖し、約8〜9割が鹿児島県出水市で越冬します。
2018年11月5日に高知県四万十市森沢において、さらに、11月12日に徳島県阿南市中林町において、11月16〜23日には再度、四万十市森沢において、「354」の数字を刻印した赤の色足環を左脚の脛に装着した本種の成鳥1羽が観察、撮影されました。この個体は、中国黒竜江(ヘイロンジャン)省大慶(ダーチン)市林甸(リンディエン)県で2012年4月10日に性別不明の成鳥として、足環を装着されて放鳥された個体であることがわかりました。
この個体は、すでに2012〜13年の越冬期から鹿児島県出水市で観察され、その後も毎年、出水市に渡来していました。しかし、今季は11月25日になって初めて同地で観察され、12月3日には3羽家族で確認されました。
ナベヅルの大陸と出水市の間の移動は色足環その他の証拠によって従来から確認されていましたが、今回の記録ならびに近年の色足環の観察事例によって、ナベヅルの、九州と四国の複数の越冬地間に個体の移動があって、関連していることが明確になりました。本種の保全上、越冬個体群の、鹿児島県出水市への過度の一極集中の緩和が必要とされており、今後の保全のためにもこれらの知見は有意義なものと考えられます。
※本件について山階鳥研では2019年1月17日に報道発表をしました。
>>プレスリリース「中国黒龍江省から四国への絶滅危惧種ナベヅルの渡りが確認」