鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2019年8月1日掲載

オオハクチョウ 日本での最長寿記録更新 約26年半

2019年の年明けに北海道の野付半島付近で越冬していたオオハクチョウが、装着された足環の番号から、日本産のオオハクチョウの最長寿記録を更新したことがわかりました。

山階鳥研ニュース」2019年7月号より

この個体は、2019年1月19日に中標津(なかしべつ)町の藤井薫さんによって別海(べっかい)町尾岱沼(おだいとう)春別川(しゅんべつがわ)河口で撮影され、足環番号から、1993年2月28日に野付(のつけ)郡別海町尾岱沼春別川河口でメスの幼鳥として足環をつけられた個体と判明し、この時点で本種の足環装着個体の長期経過の記録を更新していました。その後、2月22日に春別川河口から約2キロ北の尾岱沼でオランダのLeo Schilperoord さんによって撮影され、記録は25年11ヶ月24日に再度更新されました。

この個体は1993年2月の足環装着の時点で幼鳥だったことから、孵化したのは前年の1992年の繁殖期であることがわかり、寿命としては約26年半の最長寿記録となりました。

足環(環境省150ー0423)を装着したオオハクチョウ
(2019年1月19日、別海町尾岱沼春別川河口、藤井薫氏撮影)

これまでの日本でのオオハクチョウの 長期経過後の足環の再確認の記録は23年1ヶ月でした。ヨーロッパでの本種の長期経過の記録は、ユーリング(EURING、ヨーロッパの国ごとの鳥類標識調査の相互協力を推進することを目的とする国際機構)のウェブサイトによると、デンマークで26年6ヶ月、イギリスで25年9ヶ月というものがあります。

野鳥の足に番号付きの足環を装着して 調査する鳥類標識調査の目的は、渡り経路の解明などいくつかありますが、鳥の寿命を知ることも大きな目的の一つです。寿命は、生態学的な性質を知るための重要な情報のひとつですが、鳥は、植物の年輪のように、年々増加する年齢の指標は知られていないため、標識調査は野鳥の寿命を知るためのもっとも有効な方法です。山階鳥研では環境省の委託を受けて日本の鳥類標識調査のセンターとして活動しています。

このページのトップへ