2020年3月30日掲載
2019年秋に千葉県と三重県で、刻印付きのカラーフラッグを装着したミヤコドリが観察・撮影され、いずれも2019年7月にカムチャツカ半島西部で孵化した個体であることがわかりました。日本に渡来するミヤコドリの繁殖地や渡りのルートはこれまで不明であり、今回の観察によって、繁殖地の1カ所が明らかになりました。
2019年9月25日に、刻印付きのカラーフラッグ(注1)(左すねに黒・黄色のフラッグ、刻印T6)と金属足環(右すね)を装着したミヤコドリ(注2)が千葉県船橋市の三番瀬(さんばんぜ)干潟で1羽観察され、引き続き10〜2月にも観察されています。
これとは別に、2019年9月27日に、刻印付きのカラーフラッグ(左すねに黒・黄色のフラッグ、刻印T7)と金属足環(右すね)を装着したミヤコドリが伊勢湾西岸の三重県津市の安濃川(あのうがわ)河口で1羽観察され、この個体は9〜10月にかけて、同市内の雲出川(くもずがわ)河口でも観察されています。
カラーフラッグおよび金属足環の情報をもとに問い合わせた結果、これらの個体は、2019年7月15日に、ロシア連邦自然資源環境省全ロシア環境保全研究所のドミートリー・ドロフェーエフ (Dmitry Dorofeev) 主任研究員によって、カムチャツカ半島西岸のハイリュゾヴァ・ヴェロゴロバヤ河口でまだ飛べないヒナのときにカラーフラッグを装着された3羽のうちの2羽であることがわかりました。
鳥類標識調査は、鳥類に足環等を装着して放鳥し、再捕獲や観察によって情報を収集、解析することにより、鳥類の渡りの実態や生態を明らかにし、鳥類の保全施策やそのための国際協力の推進に役立てるもので、日本では、山階鳥研が環境省の委託を受けて実施しています。
(注1)カラーフラッグは、シギ・チドリ類などの脚に装着するプラスチック製の足環の一種で、写真のように「旗」状の構造がついています。場所ごとに色の組み合わせを変えて使われ、文字や数字が刻印される場合もあり、双眼鏡や望遠鏡による観察でどこから飛来したかを確認できます。鳥の体に負担にならない形状と重量に設計されています。
(注2)ミヤコドリ(チドリ目ミヤコドリ科)は海岸や河口に生息します。繁殖分布はユーラシア全体に不連続にあり、冬はアフリカ大陸から南アジア、中国南部などの沿岸に渡って過ごします。日本では旅鳥または冬鳥で、従来は稀でしたが、近年、東京湾と伊勢湾を中心に渡来数が増加しています。なお、伊勢物語などの文学に登場する「都鳥」 は、本種とは別の鳥であるユリカモメ(チドリ目カモメ科)とされています。