鳥類標識調査

仕事の実際と近年の成果

2025年3月3日掲載

発信器・ロガーによる追跡研究
ー効率的・効果的な追跡研究を目指してー

科学技術の進展とともに、鳥に発信器やデータロガーを装着する研究が増え、鳥の生態に関する理解が飛躍的に進んできました。これらの機器類は、観察だけでは見ることができなかった、空の上や水中での鳥の生活の一端を明らかにする強力なツールです。まさに夢のような機器で、多岐にわたる研究が行われています。

一方で、鳥は空を飛ぶため、水中にもぐるために体の構造を特化させてきました。これらの鳥類に機器を装着すると、使い方を誤れば鳥に大きな負担を課してしまうことになります。それではどんなことに注意して、研究を進めればよいのでしょうか?

一般的に、「装着する機器類は鳥類の体重の○%以下のものを使用する」といった機器の重量に関する制限がよく研究では使われます。鳥に負担が少ない軽い機器を使用するのは当然必要なことですが、それ以外にも、機器類の装着方法や、装着にかかる時間、装着者の習熟度など様々な要因が、その後の追跡成功率に影響します。さらに、それの影響の程度は、種によって異なることがわかっています。

発信器・ロガーは高価なものが多く、少ない台数からできるだけ多くのデータを入手することは、予算的にも倫理的にも重要です。本ページでは、より質の高い追跡研究を促進するため、そのヒントとなる情報を掲載していきます。

※2024年度より山階鳥類研究所で実施している、発信器・ロガー装着セミナーの一部を動画として整備し、公開しています。本ページは、文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)による研究活動として整備されました。

首輪型の発信器を装着したカリガネ

首輪型の発信器を装着したカリガネ

ロガー追跡の成果やデータ共有について

東京大学大気海洋研究所佐藤克文教授(2024年11月収録)

発信器やロガー追跡を行うことによって、どんなことを明らかにすることができるのでしょうか?近年は様々な追跡機器や解析方法が開発され、位置情報だけでなく、気温、水温、高度、心拍数、加速度などを記録するセンサーが搭載され、魚類や海生哺乳類・爬虫類、鳥類など様々な分類群で研究が進められています。これらの研究は、バイオロギング(Bio-logging)という学問手法として高められてきました。ここでは、海鳥の追跡研究の事例をもとに、そこからわかる様々な成果を東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授に講演いただきました。

また、バイオロギングデータを共有し、様々な用途に有効活用するための無料オンラインデータベース Biologging intelligent Platform(BiP) (https://www.bip-earth.com/ja)についても紹介されています。

発信器・ロガーの装着方法とその影響

澤祐介研究員(2024年11月収録)

一般的な研究で用いられている鳥類への機器類の装着方法と機器類装着が鳥類へ与える影響について概説しています。さらに、澤研究員が独自で行っているコクガンの発信器追跡研究の結果から、あきらかになった影響について、実際のデータや記録をもとに解説しています。

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