2024年1月9日掲載
謹んで新年のご祝辞を申し上げます。
皆様におかれましてはよき新春をお迎えのことと存じます。
平素は山階鳥類研究所の活動に対して多くのお力添えをいただき誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。
2023年は、世界中で過去に例を見ないような異常気象に見舞われた年でした。日本では、夏の平均気温が過去125年間で最高を記録しました。東京都心でも11月としての過去最高気温を100年ぶりに更新したとのことです。異常気象による災害では、全国各地で大雨による被害が相次ぎました。鳥の話題では、昨シーズンの高病原性鳥インフルエンザの流行は、野鳥が242例、家禽が84例と過去最多であったとのことです。今年はこのような事態が起こらないように祈るばかりです。
さて、今年、鳥類標識調査が100周年を迎えます。日本ではこの調査は1924年に農商務省によって初めて行われました。中断期間があった後、農林省が1961年から山階鳥類研究所に調査を委託して再開、現在は環境省から委託を受けて調査を継続しております。この調査では1961年から2019年までの59年間の累計で610万8千529羽(499種)が標識放鳥され、4万607羽(262種)が回収されています(水田ら, 2022, 山階鳥類学雑誌)。鳥類標識調査によって、鳥の渡り、年齢や寿命、形態や分類、地域の鳥類相、個体群や生息環境の変化など、野鳥に関する様々なことがわかってきました。これらの知見は学術的に貴重であるとともに、鳥獣保護や希少種の保護、外来種対策に関する基礎資料、環境アセスメントの基礎資料として、国や地方自治体の自然環境保護施策や様々な開発事業の環境影響評価の基礎資料として活用されています。また、渡り鳥の飛来状況や飛来経路がわかることで、高病原性鳥インフルエンザの発生抑制や被害軽減への貢献が期待されます。
山階鳥類研究所は、自然環境の保護・保全や環境問題の解決に貢献するため、鳥類に関する様々な調査・研究に取り組んでまいります。本年も皆様の温かいご支援をお願い申し上げます。
公益財団法人山階鳥類研究所 所長 小川博