2020年1月30日掲載
保全研究室の富田直樹 研究員と佐藤文男 研究員(現・フェロー)は、北海道大学大学院の先崎理之 助教や綿貫豊 教授らと共同で、日本で繁殖する海鳥10種類の過去36年間の個体数変化を解析し、ウミガラスやエトピリカといった絶滅危惧種だけでなく、ウミネコやオオセグロカモメといった国内に広く分布し個体数が多いと思われていた種類も長期的に減少していることを明らかにしました。
海鳥の個体数は世界で長期的に減少し続けており、日本で繁殖している海鳥40種についても半数以上の22種類が環境省レッドリストの絶滅危惧種に指定されています。しかし、日本産の海鳥類の個体数が長期的にどのように変化してきたかは詳しく分かっていませんでした。
佐藤研究員(現・フェロー)、富田研究員らは環境省の「モニタリングサイト1000」の一環として島嶼(とうしょ)の海鳥繁殖地で繁殖数などの長期観測(モニタリング)を行っており、日本全国の海鳥の繁殖記録を集約した環境省の「日本海鳥コロニーデータベース」の充実にも寄与してきました。
研究では、このデータベースと、生物の個体数変化を記述する統計モデル(状態空間モデル)を利用して、日本で繁殖する主要海鳥10種類の過去30 年間の個体群増加率を調べました。その結果、6種(アホウドリ、コシジロウミツバメ、ヒ メウ、ウミウ、ケイマフリ、ウトウ)の個体数は横ばいか増加していた一方、2種の絶滅危惧種(ウミガラス、エトピリカ)と2種の広域分布種(ウミネコ、オオセグロカモメ)の個体数は、それぞれ65%から97%も減少したと推定されました。分布域が広く個体数が多い種は、生態系の機能や安定性に与える影響が大きいと考えられています。そのため、これらの結果は、絶滅危惧種だけでなく、広域分布種の保全の在り方を議論する必要性があることを示しています。
この成果は、Senzaki, M. et al. (2019) Long-term declines in common breeding seabirds in Japan. として、Bird Conservation International に2019年8月28日付でオンライン公開されました。