研究・調査

鳥の学問に関する資料・知識・技術を
次世代に伝えるための研究事業

2024年4月15日掲載

山階鳥研では、文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)を受けて、令和6(2024)年度から「鳥の学問に関する資料・知識・技術を次世代に伝えるための研究事業」を行います(注1)。そのあらましについてご紹介します。

この研究事業では、収集・管理・公開されてきた山階鳥類研究所の貴重な資料群について、これまでの事業で確立された手順に基づき、収集・管理・公開を継続します。また、資料群の存在や意義の認知度をさらに高め、活用を促すとともに、学術的に資料群を取り扱うことができる人材を育成するため、当研究所のもつ知識や技術を動画等で記録し、講習会や実習などにフィードバックしてこれまでの事業内容を次世代に伝える基盤の整備も行います。

資料の収集管理

野外採集、寄贈受け入れ、交換、購入等により、標本、組織サンプル、図書および鳥学資料を収集します。組織サンプルや標本などから、種同定を行うためのDNAバーコードデータや、その鳥の食性の指標となる安定同位体比データを収集します。

これらの資料の情報をデジタル化したり、資料の保管に必要な管理業務を行い、利用を希望する研究者をサポートします。

資料の公開

所蔵する標本の基礎的なデータや、CT画像、走査電子顕微鏡画像を標本データベース(https://decochan.net)を通じて公開します。

組織サンプル、図書や鳥学資料、DNAバーコードデータ、安定同位体比データの収蔵状況はウェブページや各種データベースを通して公開します。学術雑誌『山階鳥類学雑誌』を年2回刊行します。これらの資料の紹介やデータベースの利用に向けて、山階鳥研のウェブサイトを改良します。世界の鳥類の和名について、最新の分類体系に合わせて改訂作業を行い、提唱します。

人材育成

野外で野鳥を安全に捕獲し取り扱う技術や、解剖、剥製作製の技術を映像記録として収集するとともに、実習や講習会を開いて基礎知識の提供の場とします。捕獲現場の作業や実習も映像資料として記録し、別の講義などでも利用できるように編集します。

以上の計画は、文部科学省に認められ、令和6(2024)年度から令和8(2026)年度までそれぞれの年度5千6百万円で執行されます。

この研究の自己評価を行う総括班の班長を小川博(山階鳥類研究所所長)が、事務担当を髙橋敏之(所員)が務め、その他の総括班メンバーを遠藤秀紀(東京大学教授)、尾崎清明(山階鳥類研究所副所長)、高木昌興(北海道大学教授)、長谷川雅美(東邦大学名誉教授)、林良博(元国立科学博物館館長、現顧問)、真鍋真(国立科学博物館副館長)、美濃導彦(理化学研究所情報統合本部本部長)、綿貫豊(北海道大学教授)の各氏にお願いしています。

(注1)文部科学省科学研究費補助金(特定奨励費)による研究活動として、これまで、「希少鳥類の生存と回復に関する研究」(平成13年度〜平成16年度)、「日本産鳥類資料の整備と活用に関する研究」(平成17年度〜平成20年度)、「山階鳥類研究所データベースシステムの構築と公開」(平成21年度~23年度)、「山階鳥類研究所データベースシステムの構築と公開-18世紀末から現在に至る鳥類相の変化をもとにその未来を予測する」(平成24年度〜平成26年度)、「日本最大の鳥学関連資料群の維持管理・拡充・公開に関する研究事業」(平成27年度〜平成29年度)、「日本最大の鳥学関連資料の維持管理・拡充・公開に関する研究事業」(平成30年度〜令和2年度)、「鳥の学問を発展させる資料の拡充・管理・公開に関する研究事業」(令和3年度〜令和5年度)を行ってきました。


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