2013年5月2日更新
標本については第1フェーズ後半から資料整備を、遺伝子資料についても、主に希少鳥類を対象に資料収集とその分析を行ってきた。第2フェーズでは、対象をすべての種に広げ、資料の整備と収集を進める。最終的には資料情報をデータベース化し、インターネット上で公開することで、所内外での研究に活用されることを目指している。
山階鳥類研究所は国内最大の鳥類標本コレクションを所蔵しており、その中心は6万点近い剥製標本である。これらは、山階芳麿初代理事長・所長を核とする、複数の著名な研究者による収集品からなっているため、所蔵標本を一元管理するために必要な統一標本番号がつけられていなかった。そこで、1) 各標本に1対1対応する統一標本番号を与える、2) 従来の標本ラベルのデジタル画像としての保存、3) 標本情報のコンピュータ入力、を継続して進める。標本ラベルには、その標本に関するさまざまな学術的情報が記されており、その内容が標本の価値を左右する。ところが、水鳥類などでは、剥製にした後も少しずつ油脂がにじみ出てラベルの文字が読みとれなくなることがある(写真)。
ラベルをデジタル画像として保存しておけば、ラベルの劣化が今以上に進んでもラベル記載情報が確認できる。また、ラベル情報を読みとるために標本をいちいち持ち出さなくとも、デジタル画像を見ながら確認できるので、標本への負荷を最小限にとどめながら、ラベル情報のコンピュータ入力を効率よく進められる。
遺伝子資料として収集しているのは、筋肉、肝臓や血液といった、鳥の組織の一部で、これらの組織からDNAを取り出して分析することを目的としている。第1フェーズに引き続き、希少鳥類を対象にミトコンドリアDNAの全塩基配列を明らかにするほか、広範な地域から資料を得られた種については、遺伝的多様性の評価についても分析を進める。また、いわゆる「普通種」についても、遺伝子資料の収集・管理を進めていく。
遺伝子資料は、同じ個体から異なる組織が得られるうえ、分析に使えば、その分、資料が減ってしまうといった特性があるため、管理が複雑になる。資料の効率的な管理が、研究面での活用を促すうえで大切になる。
標本、遺伝子とも、資料の整備と活用を図るにはデータベース化とその公開が重要となる。そのために、管理および検索システムの開発を外部の専門業者に委託することを検討している。
(山階鳥類研究所 副所長 柿澤亮三)
~山階鳥研NEWS 2006年2月1日号より~