2013年5月2日更新
山階鳥研の図書資料は鳥類の自然科学関係書を主体とし、創立者の山階芳麿博士の収集した図書を中心に、何人かの鳥類学者や機関等からの寄贈のほか、購入、交換等による収集を続けて現在に至っている。これらの図書資料は、従来から所内・所外の研究者をはじめ、鳥類や自然愛好家の利用に供されてきた。
しかしながら、特にまとまって寄贈を受けた資料の中には、過去の厳しい財政事情などのために未整理のまま保存されていて、即座には利用できないものもある。
本研究は、これらの中で特に、日本の近代鳥類学の確立に重要な役割を果たした研究者に関する未整理資料を整理し、利用可能にすることを目的としている。具体的には、小川三紀、高野鷹蔵、下村兼史の三人に関する資料を整備する。
小川三紀(おがわ・みのり:1876-1908)は、明治時代のもっとも初期の鳥類学者の一人である。早世したために一般の知名度は低いが、日本の初期の鳥類学の発展に大きな貢献をし、「オガワコマドリ」の和名にその名を残している。山階鳥研では、2002年に東京大学から小川関係の鳥類学資料の寄贈を受けた。
高野鷹蔵 (たかの・たかぞう:1964年没)は、カナリア飼育の専門家で、飼い鳥の趣味的要素と学術の一体化を目指して1920(大正9)年に作られた「鳥の会」の中心人物である。山階鳥研では、氏の没後、1964年に遺族からご本人の蔵書ならびに「鳥の会」の蔵書の寄贈を受けた。
下村兼史(しもむら・けんじ:1903-1967)は、日本の鳥類生態写真の草分けで、写真や記録映画などの映像記録によって鳥類野外生態の研究発展に貢献した。氏の没後、ネガフィルム、ガラス乾板、プリントを含む資料が遺族から寄贈された。
本研究では、これら3人の資料について、状態を確かめながら保存対策を講じ、取り出し易い形で保存するとともに、一点ごとに番号を振った目録を準備する。目録については、印刷物の形を取るか、インターネットで公開するデータベースの形をとるかを検討したい。また下村兼史の写真作品については、最低でも重要作品についてデジタル化するのが望ましいと考えている。このデジタル画像について、どのような公開方法を取るかも本研究の中で検討してゆきたい。
これらの資料を整備することにより、日本の鳥類学成立過程に関する研究が促進され、鳥類学史、科学史研究に貢献ができるものと考えている。
(山階鳥類研究所 副所長 柿澤亮三)
~山階鳥研NEWS 2006年3月1日号より~