研究・調査

資料整備6 図書・標本の収集と整理(第5班)

2013年5月2日更新

山階鳥類研究所は1930年代から鳥類関係図書および学術標本を収集し、現在、約4万点の鳥類図書資料と約6万点の東洋屈指の学術標本を保有する。図書では、19世紀の鳥類図譜類や、絵巻物、鳥学ジャーナルの1世紀以上のバックナンバーが揃い、鳥類標本の収蔵数では山階鳥研につぐ多くの鳥類標本を所蔵する兵庫県立人と自然の博物館の約1万5千点をはるかに凌ぐ。山階の持つ標本は収蔵数の多さだけでなく、

  • (1) 現在の分類基準に従うと、現生鳥類の45%にあたる4,140種を保有する点
  • (2) 創設理事長の故山階芳麿博士が収集した中国東北部、南洋諸島の標本資料が充実する点
  • (3) 種の記載の元になったタイプ標本を数多く持つ点
  • (4) 往年は普通種であったが、近年の自然環境の改変などに伴い、急速に個体数を減らした鳥類も数多く含む点

などに特色がある。それらの中には、現在、希少で国家的に保護増殖を行っているアホウドリなどの標本も含まれる。

第1フェーズでは、希少鳥類に関する国内外の文献図書と、希少鳥類標本を重点的に収集し、これらをデータベース化し、標本では剥製の作成やDNAバンク用に試料を採取し、ゲノム解読に供した。第2フェーズでは、収集資料を体系的に管理することを目的に、希少鳥類を含む日本産鳥類資料の収集と、剥製標本類の作製、収集資料のデータベース化に取り組んでいる。

現在の標本の収集方法は、積極的な採取によらない収集、つまり拾得され、場所や年月日などの情報が明確な斃死体を、一般の方々や保護・飼育施設などから一定の手続きを経て受入れている。これらの斃死体の受入れ数は年平均550点を数える。この中から基準を定めて収蔵標本として保存するものを選び出し、齢、雌雄の判定、計測などの後に、研究用剥製、組織、骨、翼、液浸などの標本を作成している。

第1班で行っている集積した収蔵標本約6万点のデータベース化作業が進展し、種、産地、収集年月日、雌雄、齢などの情報が即座に取り出せるようになれば、狙いを定めた収集計画を組むことが可能になると期待される。文献図書では、年次受入れ資料のデータベース化とともに、多くの寄贈資料の中から、まとまった寄贈コレクションを選び、第3班で集中的な整理を行っている。

黒田長礼博士が記載した台湾特産亜種ウチダウソのタイプ標本

(山階鳥類研究所 資料室長 岡奈理子)
~山階鳥研NEWS 2006年3月1日号より~


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