2019年3月13日掲載
学習院大学史料館学芸員 長佐古美奈子
明治期の宮廷文化にスポットを当て、全国を巡回した展覧会が、3月より東京の2会場で開催され、山階鳥研所蔵(学習院大学史料館寄託)の品も展示されます。この展覧会のあらましと見所について、展示の企画運営を担当された学習院大学史料館の長佐古美奈子さんにご紹介いただきました。
明治150年を迎えた昨年春より「明治150年記念 華ひらく皇室文化 ― 明治宮廷を彩る技と美 ―」展は全国巡回し、いよいよ平成最後の春、東京での開催となります。東京では泉屋博古館(せんおくはくこかん)分館と学習院大学史料館の2会場で開催します。
明治維新は、政治体制の転換にとどまらず、文化・社会の面でも大きな変革をもたらしました。皇室も例外ではなく、その生活は大きな変革を余儀なくされました。欧米諸国との融和をはかるため、美を凝らした明治宮殿において、各国の使節をもてなすとともに、日本独自の芸術品を調度品や下賜品として、広く海外に紹介しました。こうした動きは日本の国際的地位を高める一方で、江戸時代から続く美術・工芸の保護育成にも大きな役割を果たしました。このような文化面での皇室の果たした役割をゆかりの作品を通じてご紹介するのがこの展覧会です。
ゆかりの作品には、山階鳥類研究所を創立した山階芳麿博士所蔵品もあります。大正9(1920)年、山階宮芳麿王が成人を迎え、侯爵(こうしゃく)山階芳麿となった際に、大正天皇より下賜された文台硯箱(ぶんだいすずりばこ)(写真A)です。近代京都漆芸界の重鎮・戸嶌光孚(とじまこうふ)により制作されたこの御紋入りの御道具には、それまで1200年以上にわたり日本で培われてきた、様々な蒔絵(まきえ)の技術が駆使されています。
皇室や華族家の慶事の際に配られる小さな菓子器・ボンボニエール(写真B〜E)にも日本の伝統的な意匠が多く取り入れられ、明治維新によって職を失った刀剣金工師達がその製作を担いました。
新しい時代を迎えるこの春、明治皇室が守り伝えようとした日本の技と美をご覧いただきたいと思います。
(文・写真 ながさこ・みなこ)