2018年2月28日掲載
皇居の鳥類調査は1965年から毎月、山階鳥研が中心になって行ってきました。このたび最近5年間の調査結果がまとまり、『山階鳥類学雑誌』の最新号に掲載されましたので、調査ならびに取りまとめに参加した浅井研究員にあらましを紹介してもらいました。
自然誌研究室 研究員 浅井芝樹
皇居は江戸時代からの植栽と自生した多くの植物により、東京の真ん中に巨大な緑地を提供しています。皇居では、山階鳥類研究所が中心になって1965年から毎月、どのような鳥が生息しているか調査が行われてきました。1990年代からは国立科学博物館が中心となって進められた時期もありましたが、一貫して今日まで続いています。
このたび2013年7月から2017年5月までの調査結果をまとめ、『山階鳥類学雑誌』で報告しました。調査は月に1回行われ、特定のルートを同じ時間に歩き、観察された鳥の種と数を記録します。この調査の結果、調査期間全体(59ヶ月)で16.493羽67種の鳥が観察されました。
最も多く観察されたのはヒヨドリで、1回の調査あたり平均96.6羽観察されました。以降、ハシブトガラス皇居の鳥 最近5年の調査から57.8羽、メジロ41.8羽、スズメ25.9羽、シジュウカラ21.2羽と続きます。この5種についてはその前の5年間(2009年6月から2013年6月)に観察された上位5種と同じでした。前の5年間と比べてシメ、ツグミ、カルガモ、ムクドリなどが減り、エナガとツバメが増えました。ただし、これらの結果は調査ルートの選び方によるかもしれません。調査結果ではムクドリやドバトなどは少ない方ですが、皇居を一歩出ればこれらの鳥をたくさん見ることができます。
前の5年間の調査では、ウグイスは5〜10月には観察されず、エナガも7〜9月には観察されませんでしたが、この5年間は毎月観察されるようになりました(ただしウグイスは9月に記録がない)。その結果、留鳥とみなせる鳥は、カイツブリ、キジバト、アオサギ、オオタカ、カワセミ、コゲラ、ハシブトガラス、ヤマガラ、シジュウカラ、ヒヨドリ、ウグイス、エナガ、メジロ、スズメ、ハクセキレイとなりました。一方、オオタカとフクロウが繁殖したことは私たちの調査とは別に確認されています。今回の報告は単純に観察された数をまとめたものなので、繁殖しているかどうかを調べたわけではありません。
月ごとの観察種数は前の5年間と特に差はなく、1〜4月に25〜30種、5月に20種足らずまで減少して8月の15種以下まで減少し続けました。10月に20種前後まで回復し、11〜12月は25〜30種となりました。
今後詳細な分析を行って皇居が鳥の生息地としてどのような価値があるのかを明らかにするのが課題です。
(文 あさい・しげき)
※ ここでご紹介した結果は次の論文で発表されました。
黒田清子・小林さやか・齋藤武馬・岩見恭子・浅井芝樹.(2017) 2013年7月から2017年5月までの皇居の鳥類相. 山階鳥類学雑誌.49(1): 8-30.