2019年11月14日掲載
山崎剛史自然誌研究室長が加わった、北海道大学総合博物館の江田真毅准教授らの研究グループは、ナスカの地上絵に描かれた鳥を鳥類学の観点から同定し、ナスカ周辺に生息しない鳥が描かれていることなどを発見し、論文発表しました。
ナスカの地上絵はペルー南部の海岸から内陸に50キロメートルの砂漠台地の地上に描かれた巨大な絵で、直線、幾何学図形、動植物の図像が2,000点以上あります。制作目的やモチーフについてはよくわかっていません。これらは、「ナスカとパルパの地上絵」としてユネスコの世界遺産(文産)に登録されています。
地上絵の動植物のうちもっとも多いのは鳥類で、16点が知られており、主に約2400~1300年前(パラカス期後期からナスカ期)に描かれたとされています。
これらの鳥類の地上絵はこれまで、図像の全体的な印象や、ごく少数の形態的な特徴を根拠に同定されてきましたが、研究チームは各図像の形態的特徴を可能なかぎり抽出し、現在ペルーに生息する鳥の形態的特徴と比較して、いっそう厳密に同定しました。その結果、16点の中から、ペリカン類2点と、カギハシハチドリ類1点が確認されました。これらの鳥たちはともにナスカ台地周辺には分布していないグループです。一方、従来「コンドル」や「フラミンゴ」と呼ばれてきた著名な地上はともに形態的特徴から名指しされた分類群とは見なせないことが明らかになりました。
ナスカ台地に生息するアンデスコンドルなどの鳥ではなく、外来の鳥が描かれた背景には、地上絵の描かれた目的が密接に関わっていると研究グループは考えています。研究グループは今後、同じ時代の土器に描かれた図像や、遺跡から出土する鳥類遺体などを調査して、その結果を比較・統合することで、制作の目的などの謎に迫ることができると期待しています。
この研究は、Eda, M., et al. 2019. Identifying the bird figures of the Nasca pampas: An ornithological perspective. Journal of Archaeological Science: Reports, https://doi.org/10.1016/j.jasrep.2019.101875 として論文発表されました。